加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)がジャズ名盤の個人的感想など綴ってます。

「Herbie Hancock - Quartet (Columbia) 1981」ザ・トリオ VS ウイントン・マルサリス

1960年代にジャズ・トランペットの巨人、マイルス・ディヴィス(Miles Davis)のバンドで演奏。

その後もマイルスの代わりにフレディ・ハバードFreddie Hubbard)を加えたバンド「V. S. O. P.」を結成するなど、一緒に演奏する機会が多かったのが、ザ・トリオと呼ばれた3人。

 

その3人(ザ・トリオ)とは、ピアノのハービー・ハンコックHerbie Hancock)、ベースのロン・カーターRon Carter)、ドラムスのトニー・ウィリアムスTony Williams)でございます。

 

さて、1981年07月22日から26日まで日本で開催された「ライブ・アンダー・ザ・スカイ "81 (Live Under the Sky `81) 」がありまして。

 

そこで演奏したバンド「Herbie Hancock & Carlos Santana Band with Wynton Marsalis」が、ハービー・ハンコックHerbie Hancock)とカルロス・サンタナ(Carlos Santana)の双頭バンドに、ゲストでウイントン・マルサリス(Wynton Marsalis)が参加したものでして。

 

さて、お祭りイベント「ライブ・アンダー・ザ・スカイ "81 (Live Under the Sky `81) 」が終了した直後の07月28日、東京は信濃町にある「Sony CBS Studios」で録音されたのが、今回紹介する「Quartet (Columbia C2-38275)」です。

 

アナログ・レコード時代は、2枚組だったんですね。

CD化されてからは、コンパクトに1枚で収まってます。

 

「Herbie Hancock - Quartet (Columbia) 1981」ザ・トリオ VS ウイントン・マルサリス

 

タイトルは「ハービー・ハンコック・カルテット」となっておりますが、演奏を一聴してお分かりになるかと思われますが、(当時)ジャズ・トランペット界の新星であった、ウイントン・マルサリス(Wynton Marsalis)のカルテットと言って差し支えないほど、見事に3人(ザ・トリオ)の影、薄いです(笑)。

 

「Herbie Hancock - Quartet (Columbia) 1981」ザ・トリオ VS ウイントン・マルサリス

 

3人(ザ・トリオ)をバックに、ビビるどころか逆に煽りまくるウイントンですが、この度胸の良さは何処からくるのでしょうね?ハービー・ハンコックが、わざわざ自身のバンドに誘ったのも納得です。


特に面白いのは、ハービー・ハンコックの美しいイントロからウイントン・マルサリス(Wynton Marsalis)が、マイルスの如く渋いミュート・トランペットで入る「'Round Midnight」。例の「キメ」の部分でオープンに切り替え、トニー・ウィリアムスの煽りに負けじとヒット・マンの如く暴発するウイントンが物凄いです。

ソロは全編、親分格のハービー・ハンコックがとっておりますが、まあ瞬間的ではあるものの3人に喰ってかかるウイントンの度胸も大したものです。

 


あと、ウイントン・マルサリス独自のフレージングで吹きまくる「The Eye Of The Hurricane」も、面白いです。

 


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アート・ブレイキー(Art Blakey)率いるジャズ・メッセンジャーズの先輩トランペッターでもあるフレディ・ハバードFreddie Hubbard)に肉薄する、熱狂的かつ超絶技巧を駆使したソロを聴かせてくれます。

 

 

マイルス・デイヴィスのバンドや、ハービー自身のアルバムでも演奏される「The Sorcerer」も、3人(ザ・トリオ)の煽りを受けつつウイントン・マルサリスが熱狂的にブローしておりますね。

 


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ソロ二番手に登場するハービー・ハンコックHerbie Hancock)も、ちょっといつものペースとは違う、浮かれたようなソロを弾いている事から、ウイントンから相当刺激を受けているのが伺えます。

 

まあ、こんな感じで溌剌としたウイントンに煽られ、3人のオジサン達(笑)が「負けるものか!」とばかりに持てる力を出し切って対抗するという、素敵なアルバムです(笑)。

 

60年代には、若い3人(+ウェイン・ショーター)が、オジサンになったマイルス・デイビスMiles Davis)を煽って、「1965年のプラグド・ニッケルでのライブ盤」で聴かれるような殴り合い寸前の騒ぎを起こしていたのに・・・。

 

 

こうやってジャズの伝統が、次の世代に引き継がれて行く訳ですね。

 

 

Herbie Hancock - Quartet
Columbia C2-38275 / Sony Records SRCS-9343 [1997.10.22]

 

side 1 (A)
01. Well You Needn't (Thelonious Monk)  6:27
02. 'Round Midnight (Bernie Hanighen, Cootie Williams, Monk)  6:40
03. Clear Ways (Tony Williams)  5:00

side 2 (B)
04. A Quick Sketch (Ron Carter)  16:25

side 3 (C)
05. The Eye of the Hurricane (Herbie Hancock)  8:05
06. Parade (Ron Carter)  7:58

side 4 (D)
07. The Sorcerer (Herbie Hancock)  7:17
08. Pee Wee (Tony Williams)  4:33
09. I Fall In Love Too Easily (Jule Styne, Sammy Cahn)  5:54


Wynton Marsalis (tp) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds) 
July 28, 1981 at Sony CBS Studios, Shinanomachi, Tokyo, Japan.

 

 

 

「Barry Harris At The Jazz Workshop (Riverside) 1960」高揚感溢れるライブ盤

ビバップの伝道師として最晩年は教育活動に力を入れていたバリー・ハリス(Barry Harris)ですが、2021年12月08日に新型コロナウイルス感染に伴う合併症のため91歳で逝去されました。

 

さて、1960年05月15日、16日と二日間に渡り、サンフランシスコの「The Jazz Workshop」でライブ録音されたのが今回紹介する「Barry Harris At The Jazz Workshop (Riverside RLP 12-326)」です。

 

「Barry Harris At The Jazz Workshop (Riverside) 1960」高揚感溢れるライブ盤

 

ベースのサム・ジョーンズSam Jones)、ドラムのルイス・ヘイズ(Louis Hayes)がバックを務めている事でお分かりになるかと思われますが、確か、このライブ、キャノンボール・アダレイCannonball Adderley)のバンドでツアーをこなす合間に録音されたものだったと記憶しております。

 

このアルバムは一時期、週に1回は聴いていた程、大好きなアルバムであり、地味な印象があるバリー・ハリス(Barry Harris)が、ライブを聴いてる聴衆に煽られたのか、何時になく高揚気味の演奏を繰り広げております。

 

ライブ・アルバムなので演奏の印象とか、それほど差異がないので、何曲かピックアップしてご紹介するだけに留めます。

 


「Star Eyes」は、チャーリー・パーカーCharlie Parker)が演奏している事でも知られる曲ですが、バリー・ハリス(Barry Harris)はお得意のビバップ・フレーズを織り交ぜつつ、気品高い演奏を聴かせてくれます。

 


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ラテンタッチな曲調の「Lolita」はバリー・ハリス(Barry Harris)の自作曲。

 


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ソロ直前のピックアップ部分で高速フレーズを用いるなど、ノッてる事がわかる快調なソロを聴かせてくれます。

時々かすかに聴こえる会場内の音がライブならではの臨場感を高めております。

 

 

オリジナル・アルバムでは最後に配置された「Woody'n You」は、ビバップ・トランペットの開祖、ディジー・ガレスピーDizzy Gillespie)が作った名曲。

 


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ラテン調のテーマから、ピアノ・トリオの3人がそれぞれ高揚した演奏を聴かせてくれます。

 

 

Barry Harris At The Jazz Workshop +3 
Riverside RLP 12-326 / OJCCD-208-2 / Victor Entertainment VICJ-60484 [2000.03.23]


siede 1 (A)
01. Is You Is Or Is You Ain't My Baby? [Take 2] (Bill Austin, Louis Jordan)  5:39
02. Curtain Call (Barry Harris)  3:48
03. Star Eyes (Gene de Paul, Don Raye)  4:44
04. Moose The Mooche (Charlie Parker)  6:11

side 2 (B)
05. Lolita (Barry Harris)  4:03
06. Morning Coffee (Barry Harris)  4:54
07. Don't Blame Me [Take 2] (Jimmy McHugh, Dorothy Fields)  5:10
08. Woody'n You [Take 2] (Dizzy Gillespie)  4:51

CD Bonus Tracks
09. Is You Is Or Is You Ain't My Baby? [Take 1] (B. Austin, L. Jordan)  5:15
10. Don't Blame Me [Take 1] (J. McHugh, D. Fields) 7:33
11. Woody'n You [Take 1] (D. Gillespie)  4:29


Barry Harris (p) Sam Jones (b) Louis Hayes (ds) 
May 15 & 16, 1960 at The Jazz Workshop, San Francisco, CA.

 

 

 

ついでなんで、バリー・ハリス(Barry Harris)のアルバムを何枚か紹介しておきます。

 

 

 

 

 

 

「Barry Harris - Plays Tadd Dameron (Xanadu)」ビバップの伝道師によるタッド・ダメロン集

ビバップの伝道師、バリー・ハリス(Barry Harris)。残念ながら2021年12月08日、新型コロナウイルス感染に伴う合併症のため、91歳で逝去されました。

 

また最晩年まで教育者としてジャズの神髄を伝える活動に従事し、ワークショップを通じ多くのジャズミュージシャン達を指導していた事でも知られております。

 

さて、タッド・ダメロンTadd Dameron)という「ピアニスト」兼「編曲者」は、ジャズトランペットがお好きの方なら、早世した2人の天才トランペッター、ファッツ・ナバロ(Fats Navarro)や、クリフォード・ブラウンClifford Brown)のアルバムに参加している事でお耳にした事があるかと思われます。

 

Complete Blue Note & Capitol

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彼らのいくつかのアルバムでピアニスト、タッド・ダメロンTadd Dameron)の名前を見つけることが出来るでしょう。

 

またタッド・ダメロンTadd Dameron)は編曲者としてビバップ期に、いくつかのビック・バンドに編曲を提供しています。

 

あのマイルス・デイビスMiles Davis)とは名盤「クールの誕生」を録音した頃、早世したファッツ・ナバロ(Fats Navarro)の代わりとして共演しておりますね。

 

 

そんな玄人向けともいえるタッド・ダメロンTadd Dameron)の作品群を、バリー・ハリス(Barry Harris)が「Plays Tadd Dameron (Xanadu XANADU-113)」として録音しております。

 

「Barry Harris - Plays Tadd Dameron (Xanadu)」ビバップの伝道師によるタッド・ダメロン集

このアルバム「Barry Harris plays Tadd Dameron」は、「タッド・ダメロン作品集」と言うだけあり、曲をじっくりと聴かせることに重点を置いた構成で、ミディアム・テンポでの演奏が多いです。渋い!

 


そんな中、最後にアップ・テンポで演奏される「Our Delight」は、「At The Jazz Workshop 」を思い起させる快演で、お勧めです。

 


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バラッド「If You Could See Me Now」は、新潟のベテラン・ジャズ・ミュージシャンが時々、演奏していたりしますので、案外知られた曲なのかもしれません。

 


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「Casbah」は確か、タッド・ダメロンTadd Dameron)がマイルス・デイヴィスMiles Davis)を含むバンドで録音してた記憶があります。

 


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まあ、バリー・ハリス(Barry Harris)の「Plays Tadd Dameron (Xanadu XANADU-113)」は玄人好みな渋めのアルバムではありますが、ジャズ喫茶の大音量で聴いてみたいですね。新潟のジャズ喫茶で聴けるかな?

 

別ジャケットも存在するようなので、参考までに。

 

「Barry Harris - Plays Tadd Dameron (Xanadu)」ビバップの伝道師によるタッド・ダメロン集

 

Barry Harris - Plays Tadd Dameron
Xanadu Records XANADU-113 / Tokuma Japan Communications TKCB-71512 [1998.11.21]

side 1 (A)
01. Hot House (Tadd Dameron)  4:29
02. Soultrane (Tadd Dameron)  5:38
03. The Chase (Tadd Dameron)  4:58
04. Ladybird (Tadd Dameron)  5:03

side 2 (B)
05. Casbah (Tadd Dameron)  8:27
06. If You Could See Me Now (Tadd Dameron, Carl Sigman)  5:28
07. The Tadd Walk (Tadd Dameron)  3:35
08. Our Delight (Tadd Dameron)  4:15


Barry Harris (p) Gene Taylor (b) Leroy Williams (ds) 

June 4, 1975 at RCA Studios, NYC.

 

 

バリー・ハリスと言えば、ライブ・アルバム「Barry Harris At The Jazz Workshop [RLP 12-326]」が、お好きな方も多いと思われます(私も好き!)。

 

 

バリー・ハリス(Barry Harris)は、自身のリーダー録音の他、キャノンボール・アダレイCannonball Adderley)、デクスター・ゴードンDexter Gordon)、リー・モーガンLee Morgan)というそうそうたるジャズの巨人達と共演、数多くの名盤に参加
しております。

 

 

ボビー・ティモンズBobby Timmons)だけかと思ってたら、曲によりバリー・ハリス(Barry Harris)も参加してたようです。

ゼム・ダーティ・ブルース

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デクスター・ゴードンDexter Gordon)の渋めのアルバムですが、ビバップ・ピアニストとして手堅いバッキングが印象に残るアルバムです。

ゲッティン・アラウンド+2

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リー・モーガンLee Morgan)がリーダーの、ジャズ・ロックの古典。

このアルバムへの参加は、ハービー・ハンコックHerbie Hancock)の推薦だったらしいですが、参加要請を受けたとき「たまには大ヒット(するであろう)アルバムに参加してもいいいか【意訳】」とご本人が言ってたという話もあったりします。