加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)がジャズ名盤の個人的感想など綴ってます。

「Herbie Hancock - Maiden Voyage (Blue Note) 1965」テレビCMがきっかけとなったコンセプトアルバム

壮大なる海に初めて挑む様子を曲で表現した、ハービー・ハンコックHerbie Hancock)がブルーノート(Blue Note Records)に録音したコンセプトアルバム「処女航海(Maiden Voyage)」。

 

新主流派英語圏ではポスト・バップ(Post-Bop)と呼ばれる作品群の1枚であると共に、マイルス・デイヴィスMiles Davis)らが切り拓いた「モードジャズ」の傑作アルバムでもあります。

 

「Herbie Hancock - Maiden Voyage (Blue Note) 1965」テレビCMがきっかけとなったコンセプトアルバム

このアルバムについて、ハービー自身が語るところによると、海にまつわるコンセプトアルバムを作ろうとしたきっかけは、CM用に提供したまだ曲名もつけてなかった「処女航海(Maiden Voyage)」のメロディから。


2006年発売の「ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤100(小川隆夫著)」では、たまたまテレビに流れるそのCMを見たら、「(男性用オーデコロンの商品名)、処女航海の香り」というキャッチコピーが聴こえたので、「処女航海」というタイトルを命名したと書かれております。

 

ただ、2004年発売の「ブルーノートの真実(小川隆夫著)」では、ハービーの妹がこの曲を聴いて、「Voyage」のイメージが思い浮かぶ(意訳)と言ったので「処女航海」というタイトルにした、と書かれているんですが、前者の方が後の著作なので、そちらが正解なのかなあ・・・と。

 

話を「処女航海(Maiden Voyage)」に戻しますが、アルバム全体を通して感じる何ともゆったりとした雰囲気は、モードジャズ特有の浮遊感を最大限に利用した結果でしょうね。


船出の様子を描く処女航海「(Maiden Voyage)」から始まり、運悪く嵐に襲われ「The Eye Of The Hurricane」たり・・・。

 


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嵐の海域から脱出し「適者生存(Survival Of The Fittest)」すると、平穏な海原でイルカの群れに遭遇したり「Dolphin Dance」。

 


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小さな生物の神秘に驚かされたりする「Little One」といった、航海中の海での様子を、演奏の自由度が高いモードジャズで書かれております。

 

当時のブルーノート・レコードでは、(売れるために仕掛けとして)アルバム内に必ず「ジャズロック風の曲」を入れるとか、オーナーの意向で必ず「ブルース」を入れる、という風な暗黙のルールがあったそうですが。

「コンセプトアルバムを作るんで、既存ルールの適用は勘弁して!(意訳)」と、オーナーであるアルフレッド・ライオンを説得した様です(笑)。

 

テイキン・オフ+3

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まあ、デビューアルバムで「Watermelon Man」を大ヒットさせた実績があり、様々な実験的なアプローチで多彩なアルバムを作らせてもらっていた彼だからこそ、許されたんでしょうけど。

 

面白いのは、マイルス・デイヴィスMiles Davis)の弟分、フレディ・ハバードFreddie Hubbard)以外は、マイルス・デイヴィスの共演メンバーであるという点。

 

巡り巡って「V.S.O.P.」バンドに発展する事を考えると、さらに面白かったりします。

 

60年代マイルス・バンドを支え続けたリズム隊は「The Trio」として度々来日してましたね。

 

私も今は亡き野外ジャズイベント「マウント・フジ・ジャズ・フェスティバル」で、
豆粒みたいな3人を会場で眺めつつ演奏を楽しんだ記憶が蘇ります。

 

あの音源とか映像、そろそろ公式に発売してくれませんかねえ・・・FMエアチェック音源ならありますけど。

 

「V.S.O.P.」バンドで演奏された「The Eye Of The Hurricane」を筆頭に、後に再演される曲が多いのも、未だ売れ続ける要因なのかもしれません。

 

Herbie Hancock - Maiden Voyage (RVG)
Blue Note BST-84195 / 東芝EMI TOCJ-9006 [1998.07.23]

01. Maiden Voyage  7:55
02. The Eye Of The Hurricane  5:58
03. Little One  8:46

04. Survival Of The Fittest  10:03
05. Dolphin Dance  9:16

all composed Herbie Hancock


Freddie Hubbard (tp) George Coleman (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Anthony Williams (ds)
March 17, 1965 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

 

処女航海(SHM-CD)

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ついでなんで、横道にそれた話もしときますか。

 

アメリカのゴスペルがキリスト教と共に発展してきたように、音楽を演奏するミュージシャン達にも「宗教の影」がちらつく事がよくあります。

 

ハービーを最初に世に知らしめたトランペット奏者・ドナルド・バードDonald Byrd)の父は牧師だったりします。

 

その影響もあってかソウルフルなアルバム「Fuego (Blue Note)」や、ハービーも参加するゴスペル風コーラス隊を配した野心的なアルバム「New Perspective (Blue Note)」なんかを録音しております。


話は飛びますが。

 

悩み多き時代のハービー・ハンコックHerbie Hancock)は、バンド仲間でベースのバスター・ウィリアムス(Buster Williams)が紹介で、アメリカの「SGI(創価学会インターナショナル)」に入信したようです。

 

で、現在、ハービーは「SGI」の大幹部(芸術部長?)らしく・・・ハービーが1980年代から度々来日してる理由が、自分の中で解けたました(笑)。

 

ミュージシャンの動きに「謎」があれば、「信仰」という側面から辿る事で、容易に解明するんだなあ・・・と。

 

私は残念ながら未読ですが、池田大作氏との対談「ジャズと仏法、そして人生を語る」には、そんな「謎解き」が含まれているかもしれませんね。