「At The Five Spot Vol. 1 (New Jazz NJLP-8260)」は、マルチ・リード奏者のエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)とトランペッター、 ブッカー・リトル(Booker Little)との双頭バンドによる1961年07月、ニューヨークのライブスポット、ファイブ・スポット・カフェ(Five Spot Cafe)でのライブ録音盤です。
その他のメンバーは、ピアノにマル・ウォルドロン(Mal Waldron)、ベースがリチャード・デイヴィス(Richard Davis)、ドラムスはエド・ブラックウェル(Ed Blackwell)であります。
ライブ収録時、ファイブ・スポット・カフェに据え付けられたピアノの調律がズレていたとか、演奏する環境も万全ではなかった様ですが。
そんな事が些末に思えるほどの気合と、熱気溢れる演奏が繰り広げられております。
さて、この時の演奏は10曲(本テイク9曲、別テイク1曲)ほど残っているそうで。
本アルバムに3曲収録された他は、「At The Five Spot Vol. 2 (Prestige PRLP-7294)」、「Eric Dolphy & Booker Little Memorial Album (Prestige PR-7334)」、「Here And There (Prestige PR-7382)」などのオムニバス風のアルバムにそれぞれ、分散収録されております。
2011年に当日の演奏順に曲を並べた「At The Five Spot - Complete Edition (Essential Jazz Classics EJC-55537)」なる2枚組アルバムも発売されておりますが・・・。
双頭バンドによるファイブ・スポット・カフェ(Five Spot Cafe)での演奏は最初、この「At The Five Spot Vol. 1 (New Jazz NJLP-8260)」で、お聴きいただく事をお勧め致します。
まずは冒頭、ピアノで参加したマル・ウォルドロン(Mal Waldron)作曲の「Fire Waltz」を聴き、このアルバムの「是非を判断」していただきたく、存じ上げます。
ビバップとフリー・ジャズを混ぜ合わせたエリック・ドルフィーが吹く独特なアルト・サックス・ソロ、続く澄んだ音色が特徴のブッカー・リトルの熱気帯びたトランペット・ソロを聴いてみて下さいませ。
「Fire Waltz」を聴く事で「これは凄い!」派と、「これはあかん!」派に分断されると思われますが、「これは凄い!」と思える方は、(体調整えた上で)他の曲を聴き進めて下さい・・・。
ブッカー・リトル(Booker Little)作曲「Bee Vamp」は、アップテンポで演奏される軽快なナンバー。
ブッカー・リトルの特徴的なソロ・フレーズが、これでもか!といった感じで次々と演奏されます。
エリック・ドルフィーのソロのバックでも、ブッカー・リトルが時々登場するのも彼のファンとしては嬉しいですね。
レコードの時代だとB面丸々使い20分越えの大作「預言者(The Prophet)」は、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)の手による作品。
スローテンポで沈痛なるテーマが演奏された後、ややテンポアップしたピアノ・トリオをバックに、エリック・ドルフィーの摩訶不思議なアルトサックス・ソロが展開されます。
前衛的な要素を含みつつ、ビバップやクラシカルな要素が根底に見え隠れするエリック・ドルフィーのソロフレーズは、今聴いても古臭く感じません。
続くブッカー・リトルは最初、戸惑ってる様にも思われるのですが、ドラムスのエド・ブラックウェルが倍速テンポのバッキングで煽る辺りから、吹っ切れた感じのソロを聴かせてくれます。
別テイクの「Bee Vamp」は、本テイクにくらべ、やや大人目な印象ではありますが。
没テイクとしてお蔵入りのままにするには、もったいない出来です。
私が最初に買ったレコードは、こんな感じの色合いでした。
Eric Dolphy - At The Five Spot Vol. 1 +1 (1961)
New Jazz NJLP-8260 / Prestige PR-7611
side 1 (A)
01. Fire Waltz (Mal Waldron) 13:25
02. Bee Vamp (Booker Little) 12:21
side 1 (B)
03. The Prophet (Eric Dolphy) 21:15
CD Bonus Track
04. Bee Vamp (alternate take) (Booker Little) 10:03
Booker Little (tp) Eric Dolphy (as,bcl,fl) Mal Waldron (p) Richard Davis (b) Ed Blackwell (ds)
July 16, 1961 at Five Spot Cafe, NYC.
エリック・ドルフィーにとって不運な事に、相方のブッカー・リトル(Booker Little)がこのライブ録音の約3ヶ月後である1961年10月、尿毒症の合併症により急逝してしまいます。
よって、この双頭バンドによる演奏は、永遠に聴く事が出来なくなってしまいます。
さらにエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)も約3年後の1964年06月、演奏旅行先のヨーロッパにて、糖尿病の治療で処方されたインシュリンが引き起こした心臓発作で急死してしまいます・・・。
なお、この記事は元々、ブルーノート・レコードのオーナー、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)が、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)同様、その才能に惚れ込んだアンドリュー・ヒル(Andrew Hill)のアルバムを・・・
「Andrew Hill - Point Of Departure (Blue Note) 1964」ブルーノート新主流派オールスターズ集結、というタイトルで書かれたものでした。
今ブログを見返したら同じアルバムを短期間で2回紹介していた事に気がついた(汗)ので、思案の末、記事内容をさりげに差し替えました(笑)。
あしからず、ご了承願います。