「Gettin' Around (Blue Note BST-84204)」はバップ時代の巨人、デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)が、ボビー・ハッチャーソン(Bobby Hutcherson)、バリー・ハリス(Barry Harris)らをバックに録音したアルバムです。
しかし、ハッチャーソンが参加している経緯は、背景となるエピソードが分からないと???となるところです。
小川隆夫さん著「ブルーノートの真実(東京キララ社)」を探すと、下記のようなエピソードが紹介されています。
「(ボビーを)ライオンに推薦したのはデクスター・ゴードンだ。ボビー・ハッチャーソンの父親がゴードンの親友だった。その関係で、彼のベビー・シッターをデクスター・ゴードンが務めたというエピソードもある。」
ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)がバップ時代の代表選手だとすると、ボビー・ハッチャーソンは、続く「新主流派」の代表選手だと思います。
ちなみに私が好きな演奏を思いつくまま挙げてみると、『Jackie McLean - One Step Beyond(BN4137)』、『Andrew Hill - Judgment !(BN4159)』、『Eric Dolphy - Out To Lunch(BN4163)』など、新主流派期待の新人達が録音した、エッジの利いた作品に集中します。
ただ、この作品はリラックス・ムード満点。
主役のデクスター・ゴードンはいつも通り、朗々としたブローを披露しております。
一番の出来は、ボサノバのリズムに乗った1曲目、「カーニバルの朝(Manha de Carnaval)」ですかね。
ボビー・ハッチャーソンのバイブラフォンが加わることにより、クールな感じが強調されて良いです。
カウント・ベイシー(Count Baise)楽団のヒット曲「Shiny Stockings」も、クールに演奏されています。
そういえば80年代、デクスター・ゴードンが主役の映画「ラウンド・ミッドナイト」が
公開され、話題を呼びましたね。
その劇中でデクスター・ゴードンは、アドリブで「カウント・ベイシー楽団で演奏したかった」という意味の台詞を言ったそうです。
その事を思い出しながら「Shiny Stockings」を聴くと、感慨深いものがあります。
その他、「Who Can I Turn To ?」と「Everybody's Somebody's Fool」では、サブトーンを交えた心に染み入るようなバラッドを聴かせてくれます。
では、暖かくも優しい、彼のテナー・サウンドにしばし酔いしれて下さい。
Dexter Gordon - Gettin' Around (RVG)
Blue Note BST-84204 / 東芝EMI TOCJ-9115 [1999.07.23]
side 1 (A)
01. Manha de Carnaval (Antonio Maria/Louis Bonfa) 8:21
02. Who Can I Turn To ? (Newley/Bricusse) 5:12
03. Heartaches (Hoffman/Klenner) 7:42
side 2 (B)
04. Shiny Stockings (Frank Foster) 6:15
05. Everybody's Somebody's Fool (H.Keller/H.Greenfield) 6:41
06. Le Coiffeur (Dexter Gordon) 6:59
#01,05,06 May 28,1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
Dexter Gordon (ts) Bobby Hutcherson (vib) Barry Harris (p)
Bob Cranshaw (b) Billy Higgins (ds)
#02-04 May 29,1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
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