(世間のイメージとして)静かなるトランぺッター、ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)がバックメンバーに煽られ、珍しくも奔放な演奏を繰り広げているのが、本アルバム「Una Mas (Blue Note BST-84127)」です。
(一応)トランペットを吹く私自身の経験上、ドラマーが火に油を注ぐような演奏を繰り広げた場合、それに最も呼応(反応)するのがトランペッターであると思います。
学校でトランペットを専攻した後、ドラムスに転向したラルフ・ピーターソン(Ralph Peterson)なんてミュージシャンも居ますし、私もドラム叩くの好きなので、何となく通じ合う部分が多いのではと思ったり。
さて、本アルバム「Una Mas (Blue Note BST-84127)」ではケニー・ドーハム(Kenny Dorham)が、新人アンソニー(トニー)・ウィリアムス(Anthony Williams)に斬新なリズムに煽られ、ジャズ・メッセンジャーズ(勿論ドラマーはアート・ブレイキー)名義で残されたアルバム以来の、物凄いブローを披露しています。
ライブ・バージョンの「Minor's Holiday」は必聴です。
さて「Una Mas (Blue Note BST-84127)」では、テナーにジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)、ピアノにはハービー・ハンコック(Herbie Hancock)とこれまた、1963年度版「Kenny Dorham & The New Jazz Messengers」とでも呼びたい位の、新進気鋭ながら演奏を熱く燃え上がらせるメンバーが揃っております。
1曲目、アフロ・キューバン・ジャズとボサ・ノバが混合されたような熱狂的なナンバー「Una Mas (One More Time)」では、カウント・ベイシー(Count Basie)楽団の名曲「April In Paris」同様、途中「Una Mas !」の掛け声とともに、もう一度テーマが繰り返されます。
「THE JAZZ MESSENGERS AT THE CAFE BOHEMIA Vol.1 (Blue Note BLP-1507)」収録の「Minor's Holiday」以来ですね、これだけ気持ち良くブローするケニー・ドーハムを聴いたのは。それ位凄い。
バックでソロのようにピアノをガンガン弾きまくるハービー・ハンコックと、アンソニー(トニー)・ウィリアムスの斬新なドラムも凄いです。
2曲目、アンソニー(トニー)・ウィリアムスの奔放なドラムが冴えるハードな「Straight Ahead」では、ケニー・ドーハムは勿論、ジョー・ヘンダーソンのパルス波を放射するかのような摩訶不思議なソロが面白いです。
3曲目、哀愁漂うボサ・ノバ・チューン「Sao Paulo」は、ストップ・タイム(演奏を途中で止める)や、ソロを受け渡す時にリフを加えるなど工夫を凝らした作品です。
なおCDによってじゃ、スタンダード(?)の「If Ever I Would Leave You」が追加されております。
Kenny Dorham - Una Mas +1 (RVG)
Blue Note BST-84127 / Blue Note 7243 5 21228 2 0 [1999]
side 1 (A)
01. Una Mas (One More Time) (Kenny Dorham) 15:15
side 2 (B)
02. Straight Ahead (Kenny Dorham) 8:55
03. Sao Paulo (Kenny Dorham) 7:15
Boonus Track
04. If Ever I Would Leave You (F. Loewe-A.J. Lerner) 5:05
Kenny Dorham (tp) Joe Henderson (ts) Herbie Hancock (p)
Butch Warren (b) Anthony Williams (ds)
April 1, 1963 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
「Una Mas」という曲は元々、「US」というタイトルで録音されております。
シャッフルとワルツが混ざったような不思議なビートで演奏される「US」は、1961年11月にカリフォルニアの「ジャズ・ワークショップ(Jazz Workshop)」でライブ録音された、「Kenny Dorham & Jackie McLean - Inta Somethin' (Pacific Jazz PJ-41)」の1曲目に収録されております。
バックは、ピアノがウォルター・ビショップJr.、ベースがリロイ・ビネガー、そしてドラムがアート・テイラーです。