加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Horace Silver – The Cape Verdean Blues (Blue Note) 1965」2管編成を3管に拡大してみたアルバム

大人気ピアニスト、ホレス・シルヴァーHorace Silver)率いるクインテット(2管編成)が、曲によりビ・バップ・トロンボーンの開祖、J.J.ジョンソン(J.J. Johnson)を加えたセクステット(3管編成)に編成を拡大したアルバムが「The Cape Verdean Blues (Blue Note BST-84220)」です。

 

ジャズに異国情緒溢れるメロディをのせるホレス・シルヴァーHorace Silver)の作曲技法は、1950年代からお馴染みではありますが、このアルバムが録音された1965年においても健在です。

 

「Horace Silver – The Cape Verdean Blues (Blue Note) 1965」2管編成を3管に拡大してみたアルバム

クインテットのフロントは、トランペットがウディ・ショウ(Woody Shaw)、テナーサックスがジョー・ヘンダーソンJoe Henderson)という布陣。

 

後半3曲に、J.J.ジョンソン(J.J. Johnson)が加わり、セクステット(3管編成)に拡大されますが、同じ頃のアート・ブレイキー(Art Blakey)率いるジャズ・メッセンジャーズも、ハード・バップ・トロンボーンの人気者、カーティス・ブラー(Curtis Fuller)を加えた3管編成のバンドで活動していた事を考えると、この時期のホレス・シルヴァーの頭の中には、ハーモニーを厚くすべき理由とか、時代背景とかがあったのかもしれません。


前半3曲は「The Horace Silver Quintet」という事で、いつものクインテット編成での演奏です。

 

1曲目「The Cape Verdean Blues」は、カーボヴェルデ共和国に伝わる「ポルトガル民謡」、ブラジルの「サンバ」、アメリカの「ブルース」という3つの要素を掛け合わされたリズミックなナンバー。

 


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軽快なサンバ風のリズムに乗り、ややエキゾチックなテーマが演奏されます。


いきなり「キョ!キョ!キョ!」と、擬音風フレーズで登場するホレス・シルヴァーHorace Silver)は絶好調なんだと思われます。


スロー・テンポで徐々に盛り上がる2曲目「The African Queen」は、「アフリカ民謡」からヒントを得て創られた1曲だそうで。

 


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こういうディープな曲想は、トランペットのウディ・ショウ(Woody Shaw)にピッタリなのか、ソロで陰影の濃い強烈なブローを展開します。
ソロ最初に登場するジョー・ヘンダーソンJoe Henderson)も、抑え気味ながらフリー寸前のソロで応戦しております。

 

 

3曲目「Pretty Eyes」は、ブルージーな3拍子のワルツ。

 

テーマ後半におけるリズム隊の盛り上げ方が素敵な1曲です。
こんな盛り上げ方されたら、フロント陣はおもっきりブローする他、手が無いだろうなあ。

ホレス・シルヴァー、流石です。

 


後半3曲(LP時代はB面)では、ビ・バップ・トロンボーンの開祖であり、超絶技巧で知られるトロンボーン奏者、J.J.ジョンソン(J.J. Johnson)が加わり「The Horace Silver Quintet Plus J.J. Johnson」名義での演奏となります。

 

4曲目アンサンブル重視のアップテンポ・ナンバー「Nutville」は、お披露目の意味あい込めて、ソロ一番手にJ.J.ジョンソン(J.J. Johnson)が登場。

 


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テーマ部は、フロント3管+ホレス・シルヴァーHorace Silver)のピアノで「4管風ハーモニー」に聴こえます。
ソロに入ると、ホレス・シルヴァーのバッキングで盛り上げ、後半でフロント陣のアンサンブルが登場する豪華さ。


5曲目「Bonita」は、重厚なハーモニーが魅力的なミディアム・テンポの曲。


ズンズンと突き上げるようなりズムにのり、ホレス・シルヴァーがレイド・バック気味の渋いソロを展開します。


ラスト6曲目の「Mo' Joe」は、ジョー・ヘンダーソンJoe Henderson)の手による1曲ですが、作曲クレジットを見ないと、ホレス・シルヴァーの曲だと勘違いしそうな程、ホレス色に染まる曲であります。

 


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ややトリッキーなテーマではありますが、ソロは結構吹きやすい感じがしますね。

 

Horace Silver – The Cape Verdean Blues (RVG)
Blue Note BST-84220 / 東芝EMI TOCJ-9514 [2003.07.24] 24 Bit By RVG

side 1 (A)
01. The Cape Verdean Blues (Horace Silver)  4:59
02. The African Queen (Horace Silver)  9:36
03. Pretty Eyes (Horace Silver)  7:30

side 2 (B)
04. Nutville (Horace Silver)  7:15
05. Bonita (Horace Silver)  8:37
06. Mo' Joe (Joe Henderson)  5:45


Woody Shaw (tp) Joe Henderson (ts) J.J. Johnson (tb #4-6) 
Horace Silver (p) Bob Cranshaw (b) Roger Humphries (ds) 

October 1 & 22, 1965 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

 

Cape Verdean Blues

Cape Verdean Blues

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3管に拡大したホレス・シルヴァーHorace Silver)率いるバンドですが、次作「Horace Silver - The Jody Grind (Blue Note BST-84250)」からまた、2管編成に戻してしまいます。

 

ザ・ジョディ・グラインド

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収録曲の半分だけ3管というのは、ホレス・シルヴァーが試したみた結果、想像以上の効果が無かったという事でしょうかねえ・・・。


ハーモニー重視で新機軸を創った3管編成ジャズ・メッセンジャーズと違い、リズムに工夫を凝らす方が、ホレス・シルヴァーらしい気がしますし、アンサンブルに関しては1970年代以降に行われた、ビックバンド編成に拡大した方が得策だったという事でしょう。