セロニアス・モンク(Thelonious Monk)という超個性的なピアニストは、ビバップ時代から活躍するジャズの巨人の一人です。
ジャズ好きなら一度は聴いた事のあるセロニアス・モンクの自作曲は沢山ありますが、それらは活動初期にモンクの才能に惚れ込んたアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)により、代表的な曲はブルーノート(Blue Note Records)に録音されております。
セロニアス・モンクは偉大なる存在であったものの、ビバップ時代から一貫してジャズのスタイル変遷とは無縁の、自己のスタイルを貫き通したため、活動初期はレコードを作り、大々的に宣伝してみてもまったく売れず、モンクの一家は奥さんの収入でなんとか生活していたという話もあったりします。
さて、そんなセロニアス・モンクがブルーノート(Blue Note Records)、プレステッジ(Prestige Records)とレコード会社を渡り歩いた後の所属先となったのが、リバーサイド(Riverside Records)です。
リバーサイド・レコードでは、数多の名盤が記録される事となりますが、移籍第1弾として1955年にルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで録音されたのが、この「Plays the Music of Duke Ellington (Riverside RLP12-201) 」となります。
ベースにオスカー・ペティフォード(Oscar Pettiford)、ドラムスにケニー・クラーク(Kenny Clarke)というビバップ時代を代表するミュージシャンに囲まれ、ビックバンド界の巨匠、デューク・エリントン(Duke Ellington)が手掛けた有名な曲を、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)独特の解釈で演奏しております。
打楽器のようにピアノを弾き倒すセロニアス・モンクが、同様の演奏傾向があるデューク・エリントンの作品だけを取り上げているので、もしも日本企画で録音されたならサブタイトルに「デューク・エリントンに捧ぐ」と書かれていたのかもしれません。
1曲目「It Don't Mean a Thing If It Ain't Got That Swing」、邦題「スイングしなきゃ意味ないね」はミディアムテンポでゆったりと演奏されております。
これくらいのテンポだと、セロニアス・モンクの「間」を有効に活用した個性的なピアノ・スタイルが活きますね。
2曲目「Sophisticated Lady」は、ややスローテンポで演奏されております。
ヘッドフォンで聴いてるとモンクの唸り声がよく聴こえるので、ゴキゲンにスイングしてたんだと思います(笑)。
3曲目「I Got It Bad and That Ain't Good」は、最初ソロで演奏され、ちょっとブギウギ風のリズムで弾きだしたあたりから、他のメンバーが演奏に加わるという、面白い構成の演奏です。
4曲目「Black and Tan Fantasy」は、ケニー・クラーク(Kenny Clarke)お得意のブラシによる演奏が印象的な曲。
セロニアス・モンクも、リズミックで間を生かした演奏を繰り広げております。
5曲目「Mood Indigo」も、ケニー・クラークはブラシでリズムを刻んでありますが、シンバルやハイハットのガシャガシャした高音が聴こえない分、セロニアス・モンクのリズミックなピアノによる演奏を堪能出来ますね。
6曲目「I Let A Song Go Out of My Heart」は、モンクが滑らかに流れるようなスイングでピアノを演奏しておりますね。
7曲目「Solitude」は、このアルバム唯一、ソロ・ピアノによる演奏です。
セロニアス・モンクを初めて聴く人には、ソロかビックバンド編成で演奏しているものをお勧めするのですが、このソロでも、独特の「間」を生かした演奏を堪能する事が出来ます。
アルバム最後となる8曲目「Caravan」は、デューク・エリントン(Duke Ellington)楽団の代表的な1曲。
ケニー・クラーク(Kenny Clarke)が叩き出す馬が闊歩するようなリズムパターンに導かれ、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)も軽快な演奏を繰り広げております。
ベースのオスカー・ペティフォード(Oscar Pettiford)が奏でる、長めのソロも良いですね。
「Plays the Music of Duke Ellington (Riverside RLP12-201) 」の別ジャケットは、ジャングル風なイラストだったりします。
これは、最初期のデューク・エリントン(Duke Ellington)率いる楽団が「ジャングル・スタイル」という異国情緒あふれる演奏スタイルで人気を獲得していった事を考慮してでしょう。
※別ジャケットは「Discogs」からお借りしました。
Thelonious Monk - Plays the Music of Duke Ellington
Riverside RLP12-201 / VICJ-2045 [1996.03.27]
side 1 (A)
01. It Don't Mean a Thing If It Ain't Got That Swing (Ellington-Mills) 4:38
02. Sophisticated Lady (Duke Ellington) 4:28
03. I Got It Bad and That Ain't Good (Webster-Ellington) 5:54
04. Black and Tan Fantasy (Ellington-Miley) 3:24
side 2 (B)
05. Mood Indigo (Ellington-Mills-Bigard) 3:14
06. I Let A Song Go Out of My Heart (Nemo-Mills-Ellington) 5:41
07. Solitude (DeLange-Mills-Ellington) 3:42
08. Caravan (Ellington-Mills-Tizol) 5:56
Thelonious Monk(p) Oscar Pettiford(b #1-6,8) Kenny Clarke(ds #1-6,8)
July 21 & 27,1955 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack,NJ.
小川隆夫著「ジャズマンがコッソリ愛するJAZZ隠れ名盤100(河出書房新社)」にも、このアルバムが紹介されているので、興味のある方はどうぞ。
大西順子、ジャッキー・テラソン、ドン・フリードマン、カーラ・ブレイがそれぞれ述べた感想を小川隆夫さんが簡潔にまとめております。
週末は「新潟ジャズストリート」というイベントの運営お手伝いをしておりました。
イベントの副題に「デューク・エリントン・メモリアル」とついている訳は、デューク・エリントン(Duke Ellington)が、新潟市の名誉市民である事に由来しているのですが。
1964年06月16日に発生した「新潟地震」が生んだ「ご縁」などについては、公式ページに記載されておりますので、興味のある方のために下記にリンク張っておきます。
以前、「新潟地震50周年式典」で来日した孫のポール・エリントンさんから、デューク・エリントンの名ライブ盤の裏話とかを、直接お聴きする機会があったりしたのですが、その辺は書き出すと長くなるので、また機会を改めて。