加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)がジャズ名盤の個人的感想など綴ってます。

「Thelonious Monk – The Unique (Riverside) 1956」モンク・トリオのスタンダード集

1956年04月に録音された切手風味のジャケットが印象的な「The Unique Thelonious Monk (Riverside RLP12-209) 」は、セロニアス・モンクThelonious Monk)のトリオ編成によるジャズ・スタンダード集。

ただ1曲、「Memories Of You」だけは、セロニアス・モンクのソロによる演奏となります。

 

「Thelonious Monk – The Unique (Riverside) 1956」モンク・トリオのスタンダード集

 

ベースのオスカー・ペティフォード(Oscar Pettiford)、ドラムスのアート・ブレイキー(Art Blakey)を伴ったトリオによる演奏を収録しております。

 


モンクの自作曲を封印し、弾きなれたスタンダード・ナンバーだけを収録しているのは、移籍第1弾の「エリントン作品集」に続き、アルバムの売り上げ面を考慮した結果
だろうと思われます。


1曲目「Liza」は、モンクらしからぬ軽快にスイングする1曲。

 


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アート・ブレイキー(Art Blakey)の控えめながらポイントをおさえたバッキングが、
モンクの演奏を引き立てます。

 

2曲目「Memories Of You」は、ソロによる演奏。
演奏を聴いていると、暖かい春の日差しを受け、公園のベンチでまどろんでいる光景が
思い浮かびます。

 

3曲目「Honeysuckle Rose」はテーマ部分から、モンク節炸裂!といった風情の演奏です。

 


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オスカー・ペティフォード(Oscar Pettiford)のベースソロも、存分にお楽しみいただけます。

 

4曲目「Darn That Dream」は、ピアノ・ソロに近い感じで、ベースとドラムスの刻むリズムは控えめ。穏やかな演奏です。

 


5曲目からはレコードではB面に相当します。

5曲目「Tea For Two」は、モンクのバド・パウエルBud Powell)を思わせる速弾きで始まり、オスカー・ペティフォードのベースのゆったりとしたベース・ソロを挟んでテーマが始まるという面白い構成。

 


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セロニアス・モンクが実は、相当のテクニックを持ったピアニストである事を思い知らされる1曲です。

 

6曲目「You Are Too Beautiful」も、ソロ演奏に近い感じのゆったりした演奏ですね。
オスカー・ペティフォード(Oscar Pettiford)のベース・ソロも穏やかそのもの。

 

アルバム最後となる7曲目「Just You, Just Me」は、ミディアムテンポで演奏される1曲。

アート・ブレイキー(Art Blakey)がドラム・ロールなどの特徴的な演奏スタイルで、
さりげなくモンクの演奏を鼓舞します。

 

 

「Thelonious Monk – The Unique (Riverside) 1956」モンク・トリオのスタンダード集

※別バージョンのジャケットは「Discogs」からお借りしました。

 

Thelonious Monk – The Unique Thelonious Monk
Riverside Records RLP12-209 / Victor Entertainment VICJ-60351 [1999.09.22]

Riverside Contemporary Series


side 1 (A)
01. Liza (Gershwin-Gershwin)  3:14
02. Memories Of You (Razaf, Blake)  4:19
03. Honeysuckle Rose (Razaf, Waller)  5:35
04. Darn That Dream (Van Heusen, Eddie DelangeBurke)  6:32

side 2 (B)
05. Tea For Two (Caesar, Youmans)  5:54
06. You Are Too Beautiful (Rodgers-Hart)  4:58
07. Just You, Just Me (Greer, Klages)  7:59


Thelonious Monk (p) Oscar Pettiford (b #1,3-7) Art Blakey (ds #1,3-7)

March 17 & April 3, 1956 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

 

ザ・ユニーク

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さて、セロニアス・モンクThelonious Monk)は、精神面に何らかの問題があったのか、「他人とコミュニケーションをとることが極端に苦手」だったようで。

 

ただ、ブルーノート(Blue Note Records)のオーナー、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)の回想によると、奥さんのネリーさんとはラブラブ(死語)だったという話もありますので、セロニアス・モンクThelonious Monk)は思い込みの激しい、かなり重度の人見知りであったと推測されます。

 

ブルーノート(Blue Note Records)における録音でも、モンクの持ってきた曲があまりに難解すぎる事を愚痴ったミュージシャンに、「プロなら黙って演奏しろ(意訳)」と言い放った、とかいう話もありましたから、典型的な没入型の芸術家なんだろうなあ・・・と。

 

さて、このアルバムが録音された1956年頃、セロニアス・モンクは、ニューヨークのジャズクラブに出演するための許可証「キャバレー・カード」を没収されていた時期であり、実質的に演奏活動が出来ない状態だったとの事。

 

「キャバレー・カード」を没収された経緯は、マイルス・デイヴィスMiles Davis)の自伝で語られた事などを参考にすると、バド・パウエルBud Powell)を庇った事による「身代わり逮捕」が原因だった模様。

 

 

1951年、車で移動途中、遭遇した警官に、同乗していたバド・パウエルBud Powell)が所持していた麻薬を発見され、「これは誰が所持していたものか?」と尋ねられた際、モンクが黙秘した事により、その場で逮捕。モンクの「キャバレー・カード」が没収・・・という流れのようです。


1957年にようやく、モンクのパトロンであったニカ男爵夫人らの尽力により「キャバレー・カード」再交付されたようで。

 

蛇足ですが、ニカ男爵夫人の名前にちなんだジャズの名曲は「Nica's Dream」、「Pannonica」など沢山あるので、その曲を見たら、あー、このミュージシャンもニカ男爵夫人が支援してたんだなあ・・・と思って間違いないです(笑)。

 

そういえば、チャーリー・パーカーCharlie Parker)が亡くなった場所も、ニカ男爵夫人のお住まいだったはず。

 

 

セロニアス・モンクThelonious Monk)の話に戻りますが、「キャバレー・カード」が再交付された後に、ジャズクラブ「ファイブ・スポット」にジョン・コルトレーンJohn Coltrane)を伴って長期出演する事となります。

 

公式なライブ録音が残っていませんが、その時に「伝説」級のライブが繰り広げられたようです。