「Paul Chambers Quintet(Blue Note BLP-1564)」は、天才ベーシスト、ポール・チェンバース(Paul Chambers)がブルーノート(Blue Note Records)の名盤ひしめく1500番台に残した3枚のリーダーアルバム中、2枚目にあたります。
なお、ブルーノートだけでも、サイドメンとして参加しているアルバムは多数ありますので各自、お調べ下さいませ。
「Paul Chambers Quintet(Blue Note BLP-1564)」には、ポール・チェンバースの演奏を引きたてるべく、実力派のハードバッパー達が顔を揃えております。
という事で参加メンバーは、フロントにトランペットのドナルド・バード(Donald Byrd)、テナーサックスのクリフォード・ジョーダン(Clifford Jordan)、ピアノには名盤請負人の異名を持つトミー・フラナガン(Tommy Flanagan)、ドラムはエルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)という、中々豪華な面子。
ベーシストの教科書と称される大名盤、1957年07月録音「Bass On Top(BLP-1569)」と、ジョン・コルトレーンも参加する1956年09月録音「Whims Of Chembers(BLP-1534)」に挟まれ、印象が薄いアルバムではありますが、聴いてみると案外、良好のハード・バップをお楽しみいただけます。
なお私は1996年に米ブルーノートから発売された追加曲入り「Blue Note Connoisseur Series (Blue Note CDP 7243 8 52441 2 4)」と、2000年に発売された追加曲なしのRVG盤「東芝EMI TOCJ-9173」で聴いているのですが、2009年には、ボーナストラック入りのRVG盤が発売されております。
「Paul Chambers Quintet(Blue Note BLP-1564)」を改めて聴き直してみるとこの時代、ここまでテーマ、バッキングと自由自在に演奏出来るベーシストは少なかったでしょうね。
ポール・チェンバース(Paul Chambers)の演奏が如何に優れていたかは、彼の演奏を聴いたマイルス・デイヴィス(Miles Davis)が、自身のクインテットにすぐ加入させた事からもうかがい知れると思います。
ちなみにポール・チェンバースとトランペットのドナルド・バードは、白人ピアニスト、ジョ-ジ・ウォーリントン(George Wallington)率いるクインテットで演奏していた同僚ですね。
さて1曲目「Minor Run-Down」は、ポール・チェンバースのベースがテーマを弾き、フロントの2人がバッキングに廻り、そのままベースソロに突入するという「Bass On Top(BLP-1569)」の予告編的な構成。
その後、クリフォード・ジョーダン、ドナルド・バード、トミー・フラナガンと、ポール・チェンバースの安定したバッキングに支えられた小粋なソロリレーを聴かせてくれます。
テーマ前にはベースとドラムの4小節交換を挟み、セカンド・テーマ、サード・テーマが続くという、かなり凝った構成の1曲です。
あ、作曲者を見るとベニー・ゴルソン(Benny Golson)ですね(笑)。どうりで、凝った構成な訳だ。
2曲目「The Hand Of Love」は、ポール・チェンバースの自作曲で、ゆったりとしたテンポで演奏される、流れるようなメロディが美しい曲です。
ポール・チェンバース、トミー・フラナガン、クリフォード・ジョーダン、ドナルド・バード、エルヴィン・ジョーンズと軽快なソロリレーをお楽しみいただけます。
3曲目の「朝日のようにさわやかに(Softly As In A Morning Sunrise)」は、録音データを眺めると最後に録音されたらしい、ピアノ・トリオで演奏される短い曲。
ポール・チェンバースがベースでテーマを演奏し、そのままリラックス気味のソロに突入します。
続くトミー・フラナガンが短いながらチャーミングなソロを演奏した後、再びポール・チェンバースのソロが登場します。
4曲目「Four Strings」も、ベニー・ゴルソン(Benny Golson)の作品であり、前述のボーナストラック入りのCDには「Four Strings [alternate take]」が追加収録されております。
ポール・チェンバースが弓弾きベースでテーマを奏で、フロントがバッキングに終始
した後、クリフォード・ジョーダン、ドナルド・バード、トミー・フラナガン、エルヴィン・ジョーンズと、これぞハードバップ!と言いたくなるような絶妙なソロが続きます。
5曲目の「What's New」はトランペット奏者、ドナルド・バード(Donald Byrd)のフューチャー・トラックで、はちきれんばかりのトランペット・ソロにしばし、うっとりしてしますね。
クリフォード・ジョーダンの短いソロを挟み、再びドナルド・バードが登場します。
その後、トミー・フラナガン、最後にポール・チェンバースがソロを演奏し、テーマ部に戻ります。
ラストは、ドナルド・バードのカデンツァでしめるという小粋な構成となります。
オリジナルアルバム最後、6曲目の「Beauteous」は、テナーサックス奏者J.R.モンテローズ(J.R. Monterose)のリーダーアルバム「J.R.Monterose(Blue Note BLP-1536)」収録のバージョンよりの遅めのテンポですが、それがより寛いだ雰囲気を醸し出していきます。
ドナルド・バード、クリフォード・ジョーダン、ポール・チェンバース、トミー・フラナガン、エルヴィン・ジョーンズと、メンバーそれぞれのソロが登場した後、テーマ部に戻ります。
なお「Beauteous」はCS放送「Sky PerfecTV !」の開始当初、音楽番組「Music Air Network」のタイトルバックに使用されたバージョンなので、知らず知らずのうちに耳にしている方も多いかもしれません。
「Beauteous」は、私が特に好きな曲で、楽譜があれば自分のバンドでも演奏してみたい1曲であります。
Paul Chambers - Paul Chambers Quintet +1 (RVG) [Streo Version]
Blue Note BLP-1564 / Blue Note CDP 7243 8 52441 2 4 [1996] Blue Note Connoisseur
/ Blue Note 50999 2 65144 2 0 [2009] RVG Edition / EMI Music Japan TOCJ-7152 [2009]
/ 東芝EMI TOCJ-9173 [2000.01.26] (※ボーナストラックなし)
side 1 (A)
01. Minor Run-Down (Benny Golson) 7:36
02. The Hand Of Love (Paul Chembers) 6:22
03. Softly As In A Morning Sunrise (Oscar Hammerstein II, Sigmund Romberg) 3:06
side 2 (B)
04. Four Strings (Benny Golson) 5:26
05. What's New (Johnny Burke, Bob Haggart) 5:38
06. Beauteous (Paul Chembers) 8:05
CD Bonus Tracks
07. Four Strings [alternate take] (Benny Golson) 5:11
Donald Byrd (tp) Clifford Jordan (ts) Tommy Flanagan (p) Paul Chambers (b)
Elvin Jones (ds)
May 19, 1957 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Originally Released in Mono Version in 1958.