豪快で大胆。自然体のまま自由奔放に吹いただけで、持ち味が最大限に引き出されたアルバム。
ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)のアルバム「Saxophone Colossus (Prestige PRLP-7079)」は、1956年06月22日、クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ・クインテット在籍中に録音された、ジャズ史上最上級に位置する傑作アルバムです。
ジャズ初心者にソニー・ロリンズの作品をお勧めする際、真っ先に頭の中に浮かぶアルバムが「Saxophone Colossus (Prestige PRLP-7079)」、通称「サキコロ」だったりしますね。
しかし、この録音の4日後、1956年06月26日の雨降る深夜に、リッチー・パウエル(Richie Powell)夫妻と共に、クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)を交通事故で失う悲劇が待ち構えているとは・・・運命とは皮肉なものです。
そのため、「クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ・クインテット」は、唐突に空中分解してしまい、後任のトランぺッターとしてケニー・ドーハム(Kenny Dorham)が招集される訳ですが、その辺の話は後ほど。
悲劇に遭遇する前ですので、マックス・ローチ(Max Roach)のドラムもご機嫌にスイングしております。
影の主役とも言えるトミー・フラナガン(Tommy Flanagan)は、日本では「名盤請負人」の異名でお馴染みの名ピアニストです。
さて、「Saxophone Colossus (Prestige PRLP-7079)」の話に戻します。
1曲目、カリプソ風味のリズムが何とも陽気な「St. Thomas」
2曲目の「You Don't Know What Love Is」は、耽美的な雰囲気さえ漂う傑作バラッド。
3曲目の「Strode Rode」は、アップテンポのややシリアスな曲調。
クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ・クインテットでの演奏を髣髴とさせる、マックス・ローチ(Max Roach)のドラムが聴きどころの一つです。
4曲目の「Moritat」は、ソニー・ロリンズのユーモラスな側面を前面に押し出した1曲。
5曲目「Blue Seven」は、その名が示す通りアーシーなブルースです。
Sonny Rollins - Saxophone Colossus (RVG)
Prestige PRLP-7079/ OJC-291 / Concord PRCD-8105-2 [2006] RVG Remasters
side 1 (A)
01. St. Thomas (Sonny Rollins) 6:42
02. You Don't Know What Love Is (Raye, DePaul) 6:24
03. Strode Rode (Sonny Rollins) 5:11
side 2 (B)
04. Moritat (Brecht, Weil) 9:57
05. Blue Seven (Sonny Rollins) 11:12
Sonny Rollins (ts) Tommy Flanagan (p) Doug Watkins (b) Max Roach (ds)
June 22, 1956 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
ネタ元は失念しましたが、ジャズ・ジャーナリストの小川隆夫さんが書かれた記事の中で見つけた、「おもしろい事実」を紹介しておきます。
「Saxophone Colossus (Prestige PRLP-7079)」を録音する企画が持ち上がった際、ソニー・ロリンズはトランペットの「ドナルド・バード(Donald Byrd)」入りのクインテット編成での録音を希望したみたいです・・・ただ、予算の関係(オーナーの要請)で、カルテットに縮小された・・・という事。
しかし「予算の関係」というのが、プレステッジ(Prestige Records)らしいエピソードだと思います(笑)。
このアルバムが録音された6ヶ月後、12月16日に録音されたブルーノート(Blue Note Records)第1弾が、ドナルド・バード(Donald Byrd)入りのクインテット編成であった事を思い出すと、なおさら「面白い」事実というか、レーベル毎の個性がよく分かる話だなと・・・(笑)。
しかし、こうゆう「事実」は、本人か関係者に聞かなければ分からない話ですね。
ドナルド・バードが入っても、ソニー・ロリンズのブローに変化は無かったと思いますが、ドナルド・バード入りのクインテットでの録音が実現していれば、クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)と共演した「Sonny Rollins Plus 4 (Prestige PRLP-7038)」と肩を並べる名盤が誕生していたかもしれませんね・・・。
ついでに。
小川隆夫さんの著作を読み直してみると、「Saxophone Colossus (Prestige PRLP-7079)」に関するトミー・フラナガンご本人の話が掲載されておりました。
それによると、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の臨時編成バンドで時々、ソニー・ロリンズと一緒に演奏していた流れで、本アルバムに参加したそうで。
マイルスのレギュラー・クインテットが、メンバーのスケジュール調整が出来ない時、ソニー・ロリンズとトミー・フラナガンを加えた臨時編成バンドで、演奏していたらしいです。
そういえば、マイルスが最初にレギュラー・クインテットを結成する際、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)を加える事を希望したんですが、「雲隠れ」したロリンズと連絡が取れず、消去法的に気難しいジョン・コルトレーン(John Coltrane)を加えたという話もありましたね。
さて、ソニー・ロリンズとトミー・フラナガンを加えたマイルスのバンドは、何年頃に活動していたのか・・・マイルスの自叙伝にも、その辺りの記述がないし、ブート音源も発掘されていない様なので、資料の発掘が望まれます。
最後にCDで聴いていた頃の話を少し。
時々、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の豪快なブローを無性に聴きたくなる時がありまして。
そんな時は「A Night At The Village Vanguard (Blue Note BLP-1581)」、「Way Out West (Contemporary C3530)」、そしてこの「Saxophone Colossus (Prestige PRLP-7079)」あたりを順繰りに聴いておりました。
<1956>
Clifford Brown And Max Roach At Basin Street (EmArcy MG-36070)
Sonny Rollins Plus 4 (Prestige PRLP-7038)
Sonny Rollins - Saxophone Colossus (Prestige PRLP-7079)
Sonny Rollins (Vol. 1) (Blue Note BLP-1542)
<1957>
Sonny Rollins - Way Out West (Contemporary C3530)
Sonny Rollins Vol. 2 (Blue Note BLP-1558)
Sonny Rollins - Newk's Time (Blue Note BLP-4001)
Sonny Rollins - A Night At The Village Vanguard (Blue Note BLP-1581)