加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「The Jazz Messengers At The Cafe Bohemia Vol. 1 (Blue Note) 1955」レギュラー・バンドによる充実したライブ録音

1955年当時、ニューヨークのミュージシャン達が「B」の付くジャズ・クラブを巡ると言った時は「Birdland」、「Basin Street」、そして今回の舞台「(Cafe) Bohemia」を巡る事を意味していたそうです。

 

さて、マイルス・デイヴィスMiles Davis)との交流から、独自のハード・バップ・スタイルを確立したドラマーのアート・ブレイキー(Art Blakey)と、ピアニストのホレス・シルバーHorace Silver)。

1954年02月、「Birdland」での伝説的なライブを経た後、彼ら二人を中心に結成されたのが、リーダーを明示しないジャズ・ユニット「The Jazz Messengers」です。

 

ブルーノート(Blue Note Records)の企画により、「The Jazz Messengers」は伝説の「バードランドの夜」から2年弱後の1955年11月23日、ジャズ・クラブ「カフェ・ボヘミア(The Cafe Bohemia)」にてライブ録音を行います。

 

ライブ録音の前からレギュラー・バンドとして演奏活動を続けていた事もあり、「The Jazz Messengers」と名乗る以前に「ホレス・シルヴァークインテット」名義で発売されたスタジオ録音と比べ、バンド独自のサウンド感が増した演奏を聴くことが出来ます。


なお演奏時のアナウンスは「A Night At Birdland (Blue Note BLP-1521/1522)」同様、バンド運営を担っていた、アート・ブレイキー(Art Blakey)が行っております。

 

ライブで演奏される曲に目を向けると、「Alone Together」などお馴染みのジャズ・スタンダードの他、ケニー・ドーハムKenny Dorham)とハンク・モブレーHank Mobley)が何曲か提供しております。

ただ不思議な事に、ホレス・シルバーHorace Silver)の曲が1曲も演奏されておりません・・・。

これは、バンド内における「力関係」のバランスをとった結果なのか、たまたまなのか・・・要研究事項です(笑)。

 

なお、ホレス・シルバーHorace Silver)は、音楽監督としてアート・ブレイキー以外のメンバーの選定まで行っていたみたいです。

まあ、ホレスが自身のメンバーを引き連れバンドを形成したものの、アート・ブレイキーがバンド運営を主導していた関係で「The Jazz Messengers」を名乗ったんだと思われます。

 

という訳で、アート・ブレイキーがバンド運営を主導し別途、音楽監督を選任するという後の「Art Blakey And The Jazz Messengers」の基本的な運営形態が、この「The Jazz Messengers」時代から実施されていたんですね。

 

今回の1955年11月23日、ジャズ・クラブ「カフェ・ボヘミア(The Cafe Bohemia)」にて行われたライブ録音では、1954年02月21日に「Birdland」で行われた火の出るようなライブとは対象的に、レギュラー・バンドという気心のしれたミュージシャン達によるややリラックスムードの、バンドとしても一体感ある演奏を堪能する事が出来ます。

 

「The Jazz Messengers At The Cafe Bohemia Vol. 1 (Blue Note) 1955」レギュラー・バンドによる充実したライブ録音

さて今回は1枚目にあたる「The Jazz Messengers At The Cafe Bohemia Vol. 1 (Blue Note BLP-1507)」について、簡単に紹介していきたいと思います。

 

アート・ブレイキー(Art Blakey)によるメンバー紹介に引き続き、ベニー・グッドマン(Benny Goodman)作曲の「Soft Winds」が1曲目に演奏されます。

 


www.youtube.com

 

こういうゆったりとした曲調だと、ハンク・モブレーHank Mobley)とケニー・ドーハムKenny Dorham)の持ち味が更に引き立ちますね。

 

軽快なるアップテンポで演奏される2曲目「The Theme」、ケニー・ドーハム作曲と記載されてますが、他のミュージシャンも演奏している「The Theme」と同じものでしょうね。この簡潔なる曲の権利関係は、どうもわかりませんが・・・。

 

3曲目、ケニー・ドーハムKenny Dorham)作曲の「Minor's Holiday」では、「鬼神の如く」と表現する方も居たようですが、リズム隊より前乗りでアート・ブレイキーを煽るかのような、鬼気迫るソロを聴かせてくれます。

 


www.youtube.com

 

なお、ソロの後半では、ケニー・ドーハムアート・ブレイキーによる、一騎打ちの様相を呈してきます。

 

 

ケニー・ドーハムKenny Dorham)のリーダーアルバムに、重厚なる「Minor's Holiday」のスタジオ録音が収録されておりますので、聴き比べてみるのも面白いと思います。

 


4曲目のジャズ・バラッド「Alone Together」は、ハンク・モブレーHank Mobley)がメインの演奏です。

ゆったりとしたテンポでの演奏が、ハンク・モブレーの魅力を一層引きたてております。


5曲目の「Prince Albert」は、ケニー・ドーハムKenny Dorham)の作曲と記載されておりますが、「All The Tings You Are」のコード進行を下敷きに書き下ろされた曲のようです。

 


www.youtube.com

 

チャーリー・パーカーCharlie Parker)が同じく「All The Tings You Are」を下敷きにした「Bird Of Paradise」の録音で、デューク・ジョーダンDuke Jordan)が弾いたあの聴き慣れたイントロから始まり、哀愁ある、これぞハードバップといった感じの演奏を聴かせてくれます。

 

追加曲では6曲目、タッド・ダメロンTadd Dameron)作曲の「Lady Bird」と、ベースのダグ・ワトキンス(Doug Watkins)がテーマを弾く7曲目「What's New」は聴き逃せませんね。

 


www.youtube.com

 


8曲目、ハンク・モブレーHank Mobley)が作曲した「Deciphering The Message」は、10分にも及ぶアップテンポの曲で、最初に登場するマイルドなハンク・モブレーのソロが素敵です。

 

 

「The Jazz Messengers At The Cafe Bohemia Vol. 1 (Blue Note) 1955」レギュラー・バンドによる充実したライブ録音

The Jazz Messengers At The Cafe Bohemia Vol. 1 +3 (RVG)
Blue Note BLP-1507 / 東芝EMI TOCJ-66117 [2001.06.20]

 

side 1 (A)
01. Announcement by Art Blakey  1:32
02. Soft Winds (Benny Goodman)  12:34
03. The Theme (Kenny Dorham)  6:11

side 2 (B)
04. Minor's Holiday (Kenny Dorham)  9:11
05. Alone Together (Dietz-Schwartz)  4:15
06. Prince Albert (Kenny Dorham)  8:51

CD Bonus Tracks
07. Lady Bird (Tadd Dameron)  7:30
08. What's New (B. Haggart-J. Burke)  4:31
09. Deciphering The Message (Hank Mobley)  10:13


The Jazz Messengers
Kenny Dorham (tp #omit 5,8) Hank Mobley (ts #omit 8) Horace Silver (p) 
Doug Watkins (b) Art Blakey (ds)

November 23, 1955 at Cafe Bohemia, NYC.

 

 

 

1954年02月21日、バードランド(Birdland)にて行われた「ブルーノート・オール・スターズ(Blue Note All Stars)」によるライブ録音は現在、2枚の12インチレコードとして発売されております。

 

「Art Blakey - A Night At Birdland Vol. 1 (Blue Note BLP-1521)」

 

バードランドの夜 Vol.1

バードランドの夜 Vol.1

Amazon

 

「Art Blakey - A Night At Birdland Vol. 2 (Blue Note BLP-1522)」

 

 

当初、クリフォード・ブラウンClifford Brown)と、ルー・ドナルドソンLou Donaldson)という有能なるミュージシャンを起用した、レギュラー・バンド結成を画策していたアート・ブレイキー(Art Blakey)とホレス・シルヴァーHorace Silver)ですが、有能なるフロント二人の予定がすでに決まっていたため、目論見は見事に崩れてしまいます。


そんなドタバタを経て、「ミントンズ・プレイハウス」にて、ハンク・モブレーHank Mobley)、ドラマーのアート・テイラーArt Taylor)、ベースのダグ・ワトキンス(Doug Watkins)という編成のカルテットで演奏していたホレス・シルヴァーHorace Silver)に、ブルーノート(Blue Note Records)から録音依頼が舞い込みます。

 

ブルーノートでの録音という事でドラムスには、アート・テイラーArt Taylor)の代わりにアート・ブレイキー(Art Blakey)を起用。

 

さらに録音の直前、トランペットのケニー・ドーハムKenny Dorham)を加えた「ホレス・シルヴァークインテット」名義にて、「1954年11月13日」に1回目の録音が行われます。

 

 

「1955年02月06日」、2回目の録音を終えた直後、アート・ブレイキー(Art Blakey)のもとに1955年02月中旬から、フォラデルフィアのジャズ・クラブ「ブルーノート」での演奏依頼が舞い込みます・・・。

 

この事をアート・ブレイキーホレス・シルヴァーHorace Silver)に相談した処、「自身のバンド・メンバーを貸し出しましょう」という事になり、そのバンドを「The Jazz Messengers」と名乗る事となった模様。

 

一連の経緯から、演奏仕事の受注及び仕切りはアート・ブレイキー(Art Blakey)、音楽監督ホレス・シルヴァーHorace Silver)と役割を分担したため、リーダーを明示しないユニット名「The Jazz Messengers」を使用したようです。


そんな経緯を経て、レギュラーバンド「The Jazz Messengers」は1955年11月23日、ジャズ・クラブ「カフェ・ボヘミア(The Cafe Bohemia)」でライブ録音を行った訳です。