加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)がジャズ名盤の個人的感想など綴ってます。

「Kenny Dorham - Trampeta Toccata (Blue Note) 1964」本当は熱いトランぺッターの最終作

ビ・バップ時代に相当する1940年代後半、チャーリー・パーカーCharlie Parkerクインテットに抜擢された頃から注目を集め、1950年代はアート・ブレイキー(Art Blakey)とホレス・シルヴァーHorace Silver)を中心とするジャズ・メッセンジャーズ(The Jazz Messengers)に参加。

 

1960年代には、弟子入り志願したジョー・ヘンダーソンJoe Henderson)を従え、新主流派と呼ばれるミュージシャンらに混ざり、ブルーノート(Blue Note Records)をはじめ、多くのジャズレーベルに録音を残した名トランペッター、ケニー・ドーハムKenny Dorham)。

 

そんなケニー・ドーハムKenny Dorham)のブルーノート(Blue Note Records)における最終作であり、公式上、最後のリーダー・アルバムとなったのが、1964年09月14日に録音された「Trampeta Toccata (Blue Note BST-84181)」です。

 

「Kenny Dorham - Trampeta Toccata (RVG) 1964」本当は熱いトランぺッターの最終作

キングレコード盤の帯には「ファンキー・ムーブメントの中で生まれたエキゾチックな佳作」、との宣伝文句が書かれておりますが、まあ、そんな感じのアルバムですね。

 

 

フロントの相方には弟子のジョー・ヘンダーソンJoe Henderson)を従え、ピアノに名盤請負人の異名を持つトミー・フラナガンTommy Flanagan)、ベースにリチャード・デイヴィス(Richard Davis)、ドラムにはアルバート・ヒース(Albert Heath)という布陣で、火傷しそうになる程の熱い演奏を全編で繰り広げます。


日本では「静かなる」イメージが定着してしまっているケニー・ドーハムですが、本当は熱いトランぺッターであった事が、このアルバムから伺う事が出来ます。

静かなるケニー(SHM-CD)

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さて、「Trampeta」とはスペイン語で「トランペット」を意味する言葉です。

 

では、クラッシック音楽関連で時々目にする「トッカータ(Toccata)」とは何ぞや?という事で、以前このアルバムを紹介した時より詳細に調べてみましょう。

 

では、ネット上に掲載される複数の辞書から意味を拾い、まとめてみます。

 

トッカータ(Toccata)」は「打つ」、「触れる」を意味するイタリア語「toccare」が語源で、鍵盤楽器などの調子を確かめるための「即興的な前奏曲」と同義。

また「(金管楽器による)祝祭用のファンファーレ風の小楽曲」、あるいは「ファンファーレを奏でる金管パートの名称」とも同義。

さらに、演奏者の名人芸を誇示するかの如き「即興風の華麗な作品」も意味し、速いパッセージや細かな音形の変化などを伴う「技巧的作品」を、「トッカータ(Toccata)」と呼ぶ事もある。

 

要するに「Trampeta Toccata」とは、即興的でファンファーレの要素を含む作品であり、ケニー・ドーハムKenny Dorham)が持てる技巧を惜しげもなく披露する楽曲でもある、という事が聴いてすぐお分かりになるかと思われます。

 

トッカータ(Toccata)」と表現するファンファーレ風のオープニングに続くテーマ部で、ラテン風味というかアフロ・キューバン・ジャズの要素を混ぜるあたりが、本当は熱い漢、ケニー・ドーハムらしいと思います(笑)。

 


表題曲でもある1曲目、冒頭でケニー・ドーハムKenny Dorham)が高らかに、ファンファーレ風の華々しいメロディを吹き綴る「Trompeta Toccata」。

 

12分にも及ぶこの曲は、6/8拍子という変拍子で書かれた、ケニー・ドーハムお得意であろう、アフロ・キューバン・ジャズ風味の1曲。

 


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東芝EMI盤のCD帯では「真骨頂とも言える哀愁漂うラテン調のタイトル曲」、ユニヴァーサル・ミュージック盤のCD帯では「得意のラテン・エリアの意欲的大作」との宣伝文句が飛び交う、壮大なる楽曲でございます。

 

しかし、これだけ熱く燃え上がれるケニー・ドーハム、凄いの一言ですね。


続くジョー・ヘンダーソンJoe Henderson)も師匠に負けじとブローし、クールにキメるトミー・フラナガンTommy Flanagan)にソロのバトンを渡します。

 


2曲目の「Night Watch」は、やや哀愁漂う、美しいテーマを持つ曲。

 


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ケニー・ドーハムKenny Dorham)は凄い気合で、ビブラートをかけ、さらに音をひしゃげさせてソロをとっております。

 

ソロ2番手のジョー・ヘンダーソンは、師匠のハッタリに圧倒されたのか、大人し目なフレーズで、あっさりとソロを終えます。

 


3曲目、ボッサ・ロック調の軽快な「Mamacita」は、ジョー・ヘンダーソンJoe Henderson)のオリジナル楽曲。ケニー・ドーハム作曲のブルージーな「Blue Bossa」とは真逆、明るいイメージの曲です。

 

なお、資料を調べるとこの曲、「Kenny Dorham - Mamacita Part 1 & 2 (Blue Note 45-1922)」として、ジュークボックス用のシングル盤も発売されているようです。

 


アルバムの最後を飾る4曲目は、超アップ・テンポで激情迸る「The Fox」です。鼻歌を歌うかのように、次々と美しいメロディを繰り出すケニー・ドーハムがやはり、圧巻ですね。

 


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ここまで熱い演奏を繰り広げられると、トミー・フラナガンの美麗なバッキングが、やや淡白に感じられます(笑)。

 

 

Kenny Dorham - Trampeta Toccata (RVG)
Blue Note BST-84181 / 東芝EMI TOCJ-9191 [2000.03.23]

side 1 (A)
01. Trompeta Toccata (Kenny Dorham)  12:24
02. Night Watch (Kenny Dorham)  5:46

side 2 (B)
03. Mamacita (Joe Henderson)  11:02
04. The Fox (Kenny Dorham)  8:00


Kenny Dorham (tp) Joe Henderson (ts) Tommy Flanagan (p) Richard Davis (b)

Albert Heath (ds) 

September 14, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

 

トランペット・トッカータ

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2018年11月に急逝した人気トランペッター、ロイ・ハーグローブ(Roy Hargrove)が、新人時代に「Night Watch」を取り上げるなど、アルバム「Trampeta Toccata (Blue Note BST-84181)」は、ミュージシャン側の評価が案外と高いように思われます。

 

 

しかし、1964年09月14日録音の「Trampeta Toccata (Blue Note BST-84181)」以降、発掘盤は別として、公式のリーダーアルバムが途絶え、客演でしかケニー・ドーハムKenny Dorham)の演奏を聴く事が出来なくなるのは、時代が悪かったんでしょうかねえ。

 

最後に1965年以降、ケニー・ドーハムが参加しているアルバムを紹介しておきます。

 

March 27, 1965 at Carnegie Hall, NYC.
●Various Artists - Charlie Parker 10th Memorial Concert Recorded Live At Carnegie Hall (Limelight LM-82017)

 

June 4, 1968 in NYC.
●Barry Harris - Bull's Eye! (Prestige PRST 7600)

Bull's Eye

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July 30, 1968 at Top Of The Gate-Village Gate, Greenwich Village, NYC.
●Toshiko Akiyoshi - Toshiko At Top Of The Gate (Nippon Columbia XMS-10008-CT)