加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)がジャズ名盤の個人的感想など綴ってます。

「Miles Davis And Milt Jackson Quintet/Sextet (Prestige) 1955」マクリーンとの喧嘩セッション

マイルス・デイヴィスMiles Davis)の1955年08月05日に録音された「Miles Davis And Milt Jackson Quintet/Sextet (Prestige PRLP-7034)」は、録音時にジャッキー・マクリーンJackie McLean)とひと悶着が起きた事から、嘘偽りない本当の意味での「喧嘩セッション」です(笑)。

 

その他の参加メンバーは、ミルト・ジャクソンMilt Jackson)のヴィブラフォンレイ・ブライアントRay Bryant)のピアノ、パーシー・ヒース(Percy Heath)のベース、アート・テイラー(Arthur Taylor)のドラムという編成。

 

「Miles Davis And Milt Jackson Quintet/Sextet (Prestige) 1955」マクリーンとの喧嘩セッション

さて、マイルスの自叙伝を読むと、(クスリの為かは不明だが)ハイになりすぎていたジャッキー・マクリーンJackie McLean)が「Bitty Ditty」録音時、マイルスに対し癇癪を起こしスタジオを出て行った為、残り2曲の演奏はマクリーン抜きで行われた模様。

 

 

と言う事で、ジャッキー・マクリーンJackie McLean)の自作曲「Dr. Jackle」と「Minor March」のみ、ジャッキー・マクリーンが参加。

 

録音中に騒動が起きた「Bitty Ditty」と、その後録音されたであろう「Changes」は、マクリーン抜きのメンバーで録音されております。

 

 

1曲目「Dr. Jackle」ジャッキー・マクリーンJackie McLean)の自作曲。

 


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短めのテーマの後、ミルト・ジャクソンMilt Jackson)の軽快なヴィブラフォン・ソロが始まります。

続くマイルスは、ブロー多めでブルージーなソロを展開。3番手のジャッキー・マクリーンは、興奮気味にソロを繋げ、4番手のレイ・ブライアントのソロの後、再びミルト・ジャクソンがソロを奏でます。

 

ミディアムテンポで演奏される3曲目「Minor March」も、ジャッキー・マクリーンJackie McLean)の自作曲。

 


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ジャッキー・マクリーンのやはり興奮気味なソロの後、ミルト・ジャクソンの気合の入ったソロが続きます。

ソロ3番手でようやく登場するマイルスも高揚気味に聴こえますが、かなり冷静にフレーズを選んで演奏しているように思われます。

ソロ4番手のレイ・ブライアントは、高揚気味にゴリゴリとブルージーなフレーズを聴かせてくれますね。

 

この曲、ブルーノート(Blue Note Records)でも演奏されていたように記憶しておりますが、そのバージョンに比べるとやや遅めのテンポです。

 

ニュー・ソイル

ニュー・ソイル

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今調べたら「Jackie McLean – New Soil(Blue Note BST-84013)」では、曲名が「Minor Apprehension」となっておりますね。

 


2曲目「Bitty Ditty」はトランペット奏者、サド・ジョーンズ(Thad Jones) の作品。

マイルスがちょっと浮ついた感じでテーマを吹き、そのままソロに突入しますが、この録音の前に事件(喧嘩)は起きた訳で・・・「喧嘩セッション」の経緯は下記の通り。

 

「Bitty Ditty」録音時、ドラムスのアート・テイラー(Arthur Taylor)が何度も失敗した様です。ただ、アート・テイラーが繊細ですぐ気に病むタイプである事を考慮して、マイルスはあまり強く当たらないようにしていたそうで。

 

それを見たジャッキー・マクリーン、「俺には強く当たるのに、アート・テイラーにはなんでそうしないんだ」とマイルスに詰め寄り、それに応えてマイルスが「どうしたんだお前、小便でもしたいのか」とあしらった為、怒り狂ったマクリーンが楽器を片付けて帰ってしまったという事です。

 

 

イントロから格調高い4曲目の「Changes」は、ピアノで参加するレイ・ブライアント(Ray Bryant) の作品で、テーマ部はミルト・ジャクソンヴィブラフォンが奏でております。

 


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格調高いテーマに続いてミュート・トランペットでソロを吹くマイルス、ソロ・フレーズがちょっと優雅に聴こえますね。

 

ソロ2番手に登場するレイ・ブライアント、アルバム「Ray Bryant Trio (Prestige PRLP-7098)」でも聴ける端正なソロを聴かせてくれます。

 

ソロは再びマイルスに戻り、そのまま演奏は終了します。

 

 

 

という事で「Miles Davis And Milt Jackson Quintet/Sextet (Prestige PRLP-7034)」は、ハイになりすぎたジャッキー・マクリーンJackie McLean)とのすったもんだがあったものの、マクリーンが抜けた2曲では、ミルト・ジャクソンMilt Jackson)とレイ・ブライアントRay Bryant)の、優雅で知性溢れる演奏が引き立った訳で。

 

「雨降って地固まる」というか、結果的には「人間万事塞翁が馬」的な感じになったアルバムであり、裏事情が分かると、かなり面白く聴けるアルバムであったりします(笑)。

 

 

Miles Davis And Milt Jackson Quintet/Sextet 
Prestige PRLP-7034 / OJCCD-012-2 / Victor Entertainment VICJ-60343 [1999.09.22]

side 1 (A)
01. Dr. Jackle (Jackie McLean)  8:57
02. Bitty Ditty (Thad Jones)  6:38

side 2 (B)
03. Minor March (Jackie McLean)  8:18
04. Changes (Ray Bryant)  7:12


Miles Davis (tp) Jackie McLean (as #1,3) Milt Jackson (vibes) 
Ray Bryant (p) Percy Heath (b) Arthur Taylor (ds) 

August 5, 1955 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

 

 

 

このセッションでの出来事に腹を立てたマイルス、二度とジャッキー・マクリーンJackie McLean)を起用しなかったそうです。

 

 

そのためか、しばらくライブに起用する良いサックス奏者に巡り会えず四苦八苦したらしいので、自業自得というか、マイルス本人にも相当のダメージがあった様です。

 

因果は巡る。