カーメル・ジョーンズ(Carmel Jones)の「Jay Hawk Talk (Prestige PR-7401)」は、1965年05月08日に録音された、遅れて登場した極上のハード・バップという感じのアルバムです。
リーダーであるトランペットのカーメル・ジョーンズ(Carmel Jones)の他、フロントにはテナーサックスのジミー・ヒース(Jimmy Heath)、演奏のバックを支えるトリオのピアノにはバリー・ハリス(Barry Harris)、ベースにジョージ・タッカー(George Tucker)、ドラムスにロジャー・ハンプリース(Roger Humphries)といった編成。
ビ・バップの伝道師でありながら、ジャズ・ロックの大ヒットアルバムにも参加したというバリー・ハリス(Barry Harris)の柔軟な演奏スタイルが、このアルバムの雰囲気を決定付けている感じもします。
1曲目の「Jay Hawk Talk」は、カーメル・ジョーンズ(Carmel Jones)自作のジャズ・ロック。この当時、1曲目にジャズ・ロック調の曲を配するのが定番だったんでしょうか。
リー・モーガン(Lee Morgan)が1963年12月21日に録音し、翌1964年に発売され大ヒットを記録した「The Sidewinder (Blue Note BST-84157)」のタイトル曲と、それ以降しばらく続く、いわゆる「ジャズ・ロック路線」を踏襲した演奏です。
アルバム「The Sidewinder (Blue Note BST-84157)」に参加したピアノのバリー・ハリス(Barry Harris)の的確なバッキングも良いですし、テナー・サックスで参加するジミー・ヒース(Jimmy Heath)が、ここではジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)のようなブローを聴かせてくれます。
2曲目の「Willow Weep For Me」 (Ann Ronell) は、カーメル・ジョーンズのワン・ホーンによる演奏。
しみじみとしたバラッド演奏が、心に染み入りますね。
3曲目「What Is This Thing Called Love?」は、コール・ポーター (Cole Porter)
作曲の名曲。
かなりアップ・テンポな演奏ですが、ジミー・ヒース、カーメル・ジョーンズ、バリー・ハリスと快調なソロ・リレーが展開されております。
ソロの最後に登場するロジャー・ハンプリース(Roger Humphries)、マックス・ローチ(Max Roach)の様なソロをやっておりますので、この曲は「Brown - Roach Quintet」が残した名演をお手本にしているんでしょうね。
4曲目の「Just In Time」は、軽快なテンポで演奏される曲。
ジミー・ヒース、カーメル・ジョーンズ、バリー・ハリスの順にソロが展開されますが、いずれも快調なソロですね。
5曲目の「Dance Of The Night Child」は、カーメル・ジョーンズの自作曲であり、直訳すると「夜の子供の踊り」というタイトル通り、少しシリアスな曲調。
最初に登場するバリー・ハリスの哀愁に満ちたソロ、続くカーメル・ジョーンズもリー・モーガンばりに音をひしゃげたり、高速フレーズを混ぜつつも演奏を盛り上げます。
3番手のジミー・ヒースは、饒舌で時々ホンカー風味なソロを聴かせてくれてますし、ソロ4番手のジョージ・タッカー(George Tucker)は短いながらも重厚なベース・ソロを聴かせます。
アルバム最後を飾る6曲目「Beepdurple」も、カーメル・ジョーンズの自作曲。
陽気なラテン風リズムに乗り、クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)直系のふくよなか音色とフレーズで、ソロ1番手のカーメル・ジョーンズがソロを展開。
続くジミー・ヒースは、ややダークな音色で手慣れた感じのソロを聴かせてくれます。
ソロ3番手のバリー・ハリスは、やや強めのタッチでお得意のビバップ・フレーズを、ソロ4番手のジョージ・タッカーの力強いタッチでベース・ソロを聴かせてくれます。
Carmel Jones - Jay Hawk Talk
Prestige PR-7401 / Universal Music UCCD-9776 [2009.06.19]
side 1 (A)
01. Jay Hawk Talk (Carmel Jones) 5:48
02. Willow Weep For Me (Ann Ronell) 4:55
03. What Is This Thing Called Love? (Cole Porter) 8:54
side 2 (B)
04. Just In Time (Comden / Green, Styne) 5:30
05. Dance Of The Night Child (Carmel Jones) 6:35
06. Beepdurple (Carmel Jones) 6:15
Carmell Jones (tp) Jimmy Heath (ts #1,3-6) Barry Harris (p)
George Tucker (b) Roger Humphries (ds)
May 8, 1965 at RLA Sound Studios, NYC.
Producer, Design, Photography by Don Schlitten
ようやく入手出来た「Jay Hawk Talk (Prestige PR-7401)」を通して聴いてみると、中々の出来な訳ですが。
「フリー・ジャズ」や「新主流派」など、社会情勢と連動した過激でシリアスなジャズが好まれていたであろう時代に発売されたこのアルバム、ちょっと時代から取り残された感じが否めません。
ドン・シュリッテン(Don Schlitten)が制作を手掛けているようですので、1970年以降のビバップ・リバイバルの時期にこのアルバムが発売されていれば、もう少し話題になったのではないかと思われます・・・残念(古っ)。