ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)をリーダーとする「Tippin' The Scales」は、1962年09月28日に録音された「お蔵入りセッション」。
ジャッキー・マクリーンとソニー・クラーク(Sonny Clark)による、唯一のワン・ホーン・カルテットであり、最後の共演盤なんだそうです。
1979年に日本のキングレコードが発掘盤 (Blue Note GXF-3062)としてリリースするまで存在すら知られていなかったアルバムであります。
1980年代、米国でブルーノート(Blue Note Records)が活動を再開した際に、ジャケットを変更し「Tippin' The Scales (Blue Note BST-84427)」として発売されております。
「Tippin' The Scales」の半年前、1962年03月19日録音の「Let Freedom Ring (Blue Note BST-84106)」も同様にワン・ホーン・セッションですが・・・。
「Let Freedom Ring」はオーネット・コールマン(Ornette Coleman)らが始めたフリージャズに傾倒した作品であるのに対し、「Tippin' The Scales (Blue Note GXF-3062)」は、ブルージーで陰りを帯びた曲多目で比較的リラックスした感じの、「お蔵入りらしからぬ好盤」となっております。
演奏メンバーは、アルトサックスのジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)、ピアノのソニー・クラーク(Sonny Clark)の他、ベースにブッチ・ウォレン(Butch Warren)、ドラムスはアート・テイラー(Art Taylor)です。
1曲目「Tippin' The Scales」は、ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)の作曲。
7曲目には別テイク、「Tippin' The Scales (alternate take)」が収録されております。
テーマ部でキレのあるキメが多いので、ドラムスはビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)かと思いきや、アート・テイラーなんですね。ジャッキー・マクリーン、ソニー・クラーク、アート・テイラー、ブッチ・ウォレンの順に熱いソロが展開されます。
別テイクの方は、テーマ・フレーズが若干異なる位で、本テイクとそれほど出来の差異は感じられない好演です。
2曲目「Rainy Blues」は、ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)作曲のファンキーなブルースで、ソニー・クラークのノッてるバッキングがお楽しみいただけます。
ジャッキー・マクリーン、続くソニー・クラーク、ブッチ・ウォレンと、珍しくファンキー風味なソロを聴かせてくれてます。
3曲目「Nursery Blues」は、如何にもソニー・クラーク(Sonny Clark)が書きそうなファンキーなブルース。
テーマの後すぐ、耳に残る定型フレーズを挟むなどの工夫を凝らしていて良いですね。
ジャッキー・マクリーンがキャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)の如き、ファンキーなフレーズを連発するのも面白いですね。
ソロ2番手に登場するソニー・クラークも、楽しそうにノッてるソロを弾いてます。
4曲目「Nicely」は、穏やか風情のソニー・クラーク(Sonny Clark)が書いた曲であり、テレビ番組のエンディング・テーマに起用出来そうな曲調ですね。
ジャッキー・マクリーン、ソニー・クラークとも余裕たっぷりなソロを聴かせてくれます。
5曲目「Two For One」は、ソニー・クラーク(Sonny Clark)作曲した、キメ多めのちょっと演奏が面倒そうな曲。
CDには8曲目に「Two For One (alternate take 1)」、9曲目に「Two For One (alternate take 2)」と、2つの別テイクも収録されております。
途中、マンテカのテーマ・フレーズを引用したりと、徐々に熱を帯びたソロを展開するジャッキー・マクリーン、クールに始めブロックコードを用いて盛り上げるソニー・クラークと、それぞれの個性が伺えるソロを聴かせてくれます。
2つの別テイクは、本テイクより早めのテンポで演奏されており、本テイクに至るまでの、ソロ・フレーズの変化をお楽しみいただけます。
6曲目「Cabin In The Sky」は、オリジナルアルバムの最後を飾るに相応しい、ゆったりとした曲調の演奏です。
ジャッキー・マクリーン、ソニー・クラークともリラックス気味にソロを展開しております。
Jackie McLean - Tippin' The Scales +3 [SHM-CD]
Blue Note GXF-3062 / BST-84427 / Universal Music UCCQ-5017 [2014.06.25]
Blue Note The Masterworks / 24bit/192kHz remastering
sie 1 (A)
01. Tippin' The Scales (Jackie McLean) 6:00
02. Rainy Blues (Jackie McLean) 5:10
03. Nursery Blues (Sonny Clark) 6:35
side 2 (B)
04. Nicely (Sonny Clark) 6:26
05. Two For One (Sonny Clark) 6:03
06. Cabin In The Sky (John Latouche/Vernon Duke) 5:32
CD Bonus Tracks
07. Tippin' The Scales (alternate take) (Jackie McLean) 5:58
08. Two For One (alternate take 1) (Sonny Clark) 4:59
09. Two For One (alternate take 2) (Sonny Clark) 4:59
Jackie McLean (as) Sonny Clark (p) Butch Warren (b) Art Taylor (ds)
September 28, 1962 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
1961年から1963年までのジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)は、従来のチャーリー・パーカーを始祖とするビバップ・スタイルから脱却し、フリージャズに傾倒して演奏スタイルを刻々と変化させていた時期でした。
<1961>
January 8, 1961 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
●Jackie McLean - Bluesnik (Blue Note BST-84067)
October 26, 1961 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
●Jackie McLean - A Fickle Sonance (Blue Note BST-84089)
November 13, 1961 at The Jazz Workshop, San Francisco, CA.
●Kenny Dorham And Jackie McLean - Inta Somethin' (Pacific Jazz PJ-41)
<1962>
March 19, 1962 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
●Jackie McLean - Let Freedom Ring (Blue Note BST-84106)
June 14, 1962 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
●Jackie McLean Quintet (Blue Note BST-84116 not released)
September 28, 1962 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
●Jackie McLean - Tippin' The Scales (Blue Note GXF-3062/BST-84427)
<1963>
February 11, 1963 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
●Jackie McLean - Vertigo (Blue Note BN-LT1085)
April 30, 1963 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
●Jackie McLean - One Step Beyond (Blue Note BST-84137)
September 20, 1963 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
●Jackie McLean - Destination... Out! (Blue Note BST-84165)
ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)の自己変革は、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)が急死する、その時まで続きますが、その変遷をアルバム単位で辿ってみるのも面白いかと思われます。