フランス人ピアニスト、ジャッキー・テラソン(Jacky Terrasson)は、1993年の「セロニアス・モンク・コンペティション」で優勝した程の逸材。現在はフランス在住の様です。
この記事を最初に書いた2007年03月時点での所属レーベルは、「(仏)ブルーノート・レコード」でしたね。
さて、このアルバム「Lover Man (Venus Records TKCV-79033」は、日本の「ヴィーナス(Venus Records)が制作したトリオ編成によるアルバムです。
バックを務めるのはベースのウゴナ・オケーゴ(Ugonna Okegwo)と、最小限のドラムで物凄いリズムを刻んでるレオン・パーカー(Leon Parker)。
まあ、このアルバムに衝撃を受け、ブルーノート(Blue Note Records)に移籍した後もジャッキー・テラソン(Jacky Terrasson)のアルバムを聴き続けた感想なんですが、今の処このアルバムが、彼の最高傑作だと思われます。
なお最初に発売したものと最新版では、ジャケットが異なります。
初っ端、リズミックにアレンジし直された1曲目「Donna Lee」の勢いは本当に凄く、特に、レオン・パーカー(Leon Parker)のドラムが最高だったりします。
そんなアレンジされたリズミックな曲と、4曲目「In Your Own Sweet Way」などのバラッド演奏とが程好い感じで並んでるという・・・。本当に聴き易いアルバムです。
これは、プロデューサー・原哲夫さんの才能に拠る所が大きいかもしれませんね。
ブルー・ノートと契約した後の初期アルバム群は、お澄まし顔で演奏しているというか、何か物足りない気がするんですよね・・・。
ちなみに、ジャッキーの才能の一つは、「過去の名曲」をリズミックにアレンジし直して、彼独特の演奏にしてしまえる事、だと思います。
6曲目には「Lost」という、ジャッキー・テラソン(Jacky Terrasson)の自作曲を演奏しておりますが、耽美的なバラッド風な演奏で、この辺りにはハービー・ハンコック(Herbie Hancock)の影響を感じる事が出来たりしますね。
「最新版ジャケット」も掲載しときます。
Jacky Terrasson - Lover Man
Venus Records TKCV-79033 [1994.02.24] / TKCV-35105 [1999.10.20]
01. Donna Lee (Charlie Parker) 5:17
02. Nardis (Miles Davis) 4:35
03. First Child (Jacky Terrasson) 2:21
04. In Your Own Sweet Way (Dave Brubeck) 9:43
05. Wail (Bud Powell) 2:15
06. Lost (Jacky Terrasson) 7:10
07. Broadway (H. Woode, T. Mcrae, B. Brid) 5:51
08. Lover Man (R. Ramirez, J. Sherman) 7:44
09. Close Enough For Love (J. Mandel) 2:27
10. Love For Sale (Cole Porter) 6:25
Jacky Terrasson (p) Ugonna Okegwo (b) Leon Parker (ds)
November 18 & 19, 1993 at the Clinton Recording Studio "A" in NYC.
Producer – Tetsuo Hara
ついでなので。
「Donna Lee」ですが、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)作曲と記載されていますが、実はこの曲、マイルス・デイビス(Miles Davis)が書いた曲のようです。
2007年03月17日、ジャズジャーナリスト・小川隆夫さんのブログでコメントのやりとりをした中で小川隆夫さんからも「マイルス・デイビス(Miles Davis)作曲で正しいとの返信いただいております。
また小川さんのコメントには、興味深いお話が付記されていました。
「Donna Lee」という曲のタイトルは、ベーシストのカーリー・ラッセル(Curly Russell)の娘に因んだ名前」だそうです。
カーリー・ラッセル(Curly Russell)は、「バードランドの夜(A Night At Birdland with Art Blakey Quintet [Blue Note 1521/1522]に参加していたベーシストですね。
「バードランドの夜」で、久々にPee Wee の甲高い声を聴くのも一興かと。
私が大好きなピアニスト、ミッシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani)亡き今、ジャッキー・テラソンにはもっと頑張ってもらいたいところです。
ジャッキー・テラソンとマルチ・サックス奏者、バルネ・ウィラン(Barney Wilen)が競演した録音もあったりします。
発売元が消滅してしまったので入手困難な状態が続いておりますが、1990年録音の「Barney Wilen - Paris Moods (Alfa Jazz ALCB-9515)」 というアルバムです。
リズミックな8曲目、「Mon Blouson (C’est Ma Maison)」で、ジャッキーが大暴れ(笑)しております。
あと、2002年の「Smile [Blue Note]」などは、スティービー・ワンダーの「イズント・シー・ラヴリー?」とか、個々の曲の演奏は素晴らしいのです。
ただしアルバム全体を聴き通すとなると・・・やはり、このアルバムには敵いません。
ジャッキー・テラソンは、公式サイトも開設していますので、お時間のある方はどうぞ。