加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Miles Davis - Ascenseur Pour L'echafaud(死刑台のエレベーター)」マイルスの「音」を決定付けたサントラ

1958年01月29日に公開されたルイ・マル(Louis Malle)監督のフランス映画「Ascenseur Pour L'echafaud(死刑台のエレベーター)」のオリジナル・サウンドトラック10曲に、ボーナス・トラック16曲を追加したアルバムです。

 

「Miles Davis - Ascenseur Pour L'echafaud(死刑台のエレベーター)」マイルスの「音」を決定付けたサントラ

ジャケットの女優さんは、ジャンヌ・モロー(Jeanne Moreau)ですかね。

 


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マイルスは、恋仲であったジュリエット・グレコ(Juliette Gréco)を通じて、ルイ・マル監督から、映画音楽を担当するオファーを受けたそうです。


マイルス・デイヴィスMiles Davis)の他、テナーサックスのバルネ・ウィラン(Barney Wilen)、ピアノのルネ・ユルトルジュ(Rene Urtreger)、ベースのピエール・ミッシェロ(Pierre Michelot)、そしてアメリカからヨーロッパに移住していたドラムスのケニー・クラークKenny Clarke)が演奏に参加しております。

 

マイルスは、撮影が終わった映画のラッシュ・フィルムを見ながら即興で「作曲」したそうで、そのため各曲が短めです。

 

●Generique(死刑台のエレベーターのテーマ)


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●Sur L'autoroute(ドライヴウェイのスリル)


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●Florence Sur Les Champs-Elysees(シャンゼリゼを歩むフロランス)


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参考音源を聴いていただけるとお分かりになるかと思いますが。

 

殺人がテーマのサスペンス映画らしい陰鬱な曲(Generique)や、アクション・シーンにぴったりな急速調の曲(Sur L'autoroute)など、聴いていると映画のシーンが容易に連想される曲が収録されております。

 

11曲目からはサウンドトラックに可能される前、素(ノー・エコー)の演奏を7曲、別テイク合わせて16曲も聴く事が出来ます。

 


中山康樹さんが「マイルスを聴け!」で言及している通り、深いエコーがかかったマイルスのトランペットの音は、以降聴く事が出来るマイルスのサウンドそのもの。

 

 

つまり以降、コロンビア(Columbia Records)のアルバム制作者が、「死刑台のエレベーター」のために作られたサウンド、つまり加工された深ーいエコー・サウンドを「これぞマイルスをイメージする音だ!」という事で、似せて作っていった訳ですね。

 

一番分かりやすいのは、アルバム「Kind Of Blue (Columbia CL-1355/CS-8163)」のサウンドかな。「1958 Miles」も似たような傾向か。

 

 

「Kind Of Blue」が何故、あれほど空間広めでエコーが効いた音なのかという「理由(訳)」が、この「Ascenseur Pour L'echafaud(死刑台のエレベーター)」のオリジナル・サウンドトラックを聴き直す事で、うっすらと見えてきたりします。


しかし、久しぶりに聴いてみると、このサウンドトラックでは、私が大好きなバルネ・ウィラン(Barney Wilen)の活躍の場が、ほとんどなかったんですね(笑)。

 

 

Miles Davis - Ascenseur Pour L'echafaud (complete recordings)【死刑台のエレベーター(完全版)】
Fontana 660.213 MR /836 305-2 / Polygram Jazz PHCE-4181 [1997.12.03] 

 

side 1 (A)
01. Generique 死刑台のエレベーターのテーマ  2:51
02. L'assassinat De Carala カララの殺人  2:12
03. Sur L'autoroute ドライヴウェイのスリル  2:20
04. Julien Dans L'ascenseur エレベーターの中のジュリアン  2:13
05. Florence Sur Les Champs-Elysees シャンゼリゼを歩むフロランス  2:53

side 2 (B)
06. Diner Au Motel モーテルのディナー  3:58
07. Evasion De Julien ジュリアンの脱出  0:55
08. Visite De Vigile 夜警の見回り  2:05
09. Au Bar De Petit Bac プティバックの酒場にて  2:54
10. Chez Le Photographe Du Motel モーテルの写真屋  3:57

Bonus Tracks
11. Nuit Sur Les Champs-Elysees [take 1] シャンゼリゼの夜  2:27
12. Nuit Sur Les Champs-Elysees [take 2] シャンゼリゼの夜  5:26
13. Nuit Sur Les Champs-Elysees [take 3] (Generique)  シャンゼリゼの夜 (テーマ)  2:56
14. Nuit Sur Les Champs-Elysees [take 4] (Florence Sur Les Champs-Elysees)  シャンゼリゼの夜 (シャンゼリゼを歩むフロランス)3:02
15. Assassinat [take 1]  暗殺 (夜警の見回り)  2:08
16. Assassinat [take 2] (Julien Dans L'ascenseur)  暗殺(エレベーターの中のジュリアン)  2:16
17. Assassinat [take 3] (L'assassinat De Carala)  暗殺(カララの殺人)  2:14
18. Motel (Diner Au Motel)  モーテル(モーテルのディナー)  4:00
19. Final [take 1] ファイナル  3:11
20. Final [take 2] ファイナル  3:05
21. Final [take 3] (Chez Le Photographe Du Motel)  ファイナル(モーテルの写真屋)  4:09
22. Ascenseur (Evasion De Julien)  エレベーター(ジュリアンの脱出)  2:04
23. Le Petit Bal [take 1]  居酒屋  2:43
24. Le Petit Bal [take 2] (Au Bar Du Petit Bac)  居酒屋(プティバックの酒場にて)  2:58
25. Sequence Voiture [take 1] ドライヴウェイ      3:00
26. Sequence Voiture [take 2] (Sur L'autoroute)  ドライヴウェイ(ドライヴウェイのスリル)  2:21

All Composed by Miles Davis


Miles Davis (tp) Barney Wilen (ts) Rene Urtreger (p) Pierre Michelot (b) Kenny Clarke (ds) 

December 4 & 5, 1957 at Le Poste Parisien Studios, Paris, France.