加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Miles Davis & John Clotrane - The Essential Live In Stockholm (Dragon) 1960」コルトレーン対マイルス・バンド

1960年03月、マイルス・デイヴィスMiles Davis)は、バンドを辞めたがっているジョン・コルトレーンJohn Coltrane)を何とか説き伏せ、最後のヨーロッパ・ツアーに旅立ちます。

 

この、1960年03月から04月かけて行われたヨーロッパ巡業は、ヴァーヴ(Verve Records)でお馴染みの興行主、ノーマン・グランツ(Norman Granz)が企画した「J.A.T.P. (Jazz At The Philharmonic)」のツアーだったとの事。

 

「Miles Davis & John Clotrane - The Essential Live In Stockholm (Dragon) 1960」コルトレーン対マイルス・バンド

 

さて今回のアルバム「The Essential Live In Stockholm (Dragon DRLP-90/91)」は、1960年03月22日に行われたスウェーデンストックホルムでのライブから拾遺された演奏です。

その他のメンバーは、ピアノのウイントン・ケリー(Wynton Kelly)、ベースのポール・チェンバースPaul Chambers)、ドラムスのジミー・コブ(Jimmy Cobb)となっております。

 

さて、マイルスは「Kind Of Blue (Columbia CS-8163)」や「1958 Miles (CBS/Sony 20AP-1401)」に聴かれるクールでリリカルな演奏をトリオのメンバーと繰り広げているのに対し、コルトレーンは駄々っ子が騒ぎ出しているような突拍子もないフレーズを連発、クールな雰囲気をぶち壊しにかかります(笑)。


なお、全部の曲が10分を超えているのは、不平不満の塊だったコルトレーンが、ソロを吹くのを止めないからですね(笑)。

 

ツアー中、コルトレーンはぶつぶつ文句言いながら、いつも一人っきりになっていたそうで、本当にツアーに同行するのを嫌がっていたみたいです。

なんで、この最後のツアーの際、マイルスはコルトレーンにソプラノ・サックスをプレゼントしたそうで、マイルスにそこまで気を使わせるとは、コルトレーンがどんだけ不機嫌だったんだろうと思ってしまいます。

 

 


1曲目「So What」はテーマ部からマイルスのソロのパートと、コルトレーンのソロに入った後の落差をお楽しみ下さい。

 


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コルトレーンのソロに続くウイントン・ケリーのソロが何だかいつもと違うのは、コルトレーンの怒れるソロに影響受けちゃってるんでしょうねえ(笑)。

 


2曲目「On Green Dolphin Street」は、ビル・エヴァンスみたいな弾き方をするウイントン・ケリーのリリカルなピアノによるイントロに始まり、マイルスのクールなミュート・トランペットを聴く事が出来ます。
続くコルトレーンは、吹きまくってはいるものの、流石に理性は失ってません(笑)。
大人しめのコルトレーンを受け、ウイントン・ケリー、ポール・チェンバースとリリカルなソロが続きます。

 


3曲目「All Blues/The Theme」の最初「All Blues」は「Kind Of Blue (Columbia CS-8163)」の雰囲気に近い演奏。

 

マイルス、コルトレーン、ウイントン・ケリーとソロが続きますが、吹きまくるコルトレーンもこの曲では雰囲気をぶち壊す寸前の演奏で寸止めしてますね。

 


4曲目「Walkin'/The Theme」での「Walkin'」も、初演「Walkin' (Prestige PRLP-7076)」
に近い雰囲気なのが面白いです。

 


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「J.A.T.P. (Jazz At The Philharmonic)」でのツアーなんで、万人に分かりやすいバージョンで演奏しようと配慮したのかもしれませんね。

 

 

Miles Davis & John Clotrane - The Essential Live In Stockholm
Dragon DRLP-90/91 / DIW DIW-409 [1997]


01. So What (Miles Davis) 15:19
02. On Green Dolphin Street (Washington - Kaper) 13:39
03. All Blues/The Theme (Miles Davis/Miles Davis) 17:20
04. Walkin'/The Theme (Carpenter/Miles Davis) 17:19

 

Miles Davis (tp) John Coltrane (ts) Wynton Kelly (p) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds) 
March 22, 1960 at "Konserthuset", Stockholm, Sweden.

 

 

1965年12月に録音された有名な「The Plugged Nickel」でのライブでは、「マイルス対
他のフリー系若手4人」が繰り広げる内部抗争が記録されたものですが、このストックホルムでの演奏は、「コルトレーン対マイルス&ピアノ・トリオ」という構図の争いが繰り広げられていた訳ですね・・・。

 

 

 

 

なお、この時の音源は、2018年に発売された4枚組ボックスセット
Miles Davis & John Coltrane - The Final Tour: The Bootleg Series Vol. 6 (Columbia/Legacy/Sony Music 88985448392)」で公式発売されております。