加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Miles Davis & Sonny Stitt - The Essential Live In Stockholm (Dragon) 1960」臨時雇いのソニー・ステットと

「The Essential Live In Stockholm (Dragon DRLP-129/30)」は1960年11月13日、ストックホルムの「Konserthuset」におけるライブから拾遺されたものです。

 

「Miles Davis & Sonny Stitt - The Essential Live In Stockholm (Dragon) 1960」臨時雇いのソニー・ステットと

 

このライブも、ヴァーヴ(Verve Records)でお馴染みの興行主、ノーマン・グランツ(Norman Granz)が企画した「J.A.T.P. (Jazz At The Philharmonic)」のツアーみたいですね。

 

マイルス・デイヴィスMiles Davis)、ソニー・ステット(Sonny Stitt)の他、春のヨーロッパ・ツアー同様に、ピアノのウイントン・ケリー(Wynton Kelly)、ベースのポール・チェンバースPaul Chambers)、ドラムスのジミー・コブ(Jimmy Cobb)が参加しております。

 

ソニー・ステットが臨時雇いだというのは、「モード奏法」で演奏していたバンドが、ソニー・ステットに合わせ、ハード・バップ時代に戻ったかのような演奏を繰り広げている事からも感じとる事が出来ます・・・。

 

激情のサックス・ソロでマイルスのリリカルな演奏を際立出せたジョン・コルトレーンJohn Coltrane)が1960年前半でバンドを退団した後、1964年の夏にウェイン・ショーターWayne Shorter)が加入するまでの期間、マイルス・デイヴィスMiles Davis)は多種多様なサックス奏者と演奏する事になります。

 

 

マイルスの自叙伝(この辺からⅡに記載)によると、コルトレーンが退団した直後は、ジミー・ヒース(Jimmy Heath)を雇い入れる事となります。

 

この頃、ジミー・ヒースは麻薬がらみに罪で投獄されていた刑務所から出所したばかりで、仕事がない事も考慮しての誘いだった模様で、コードを元にしたビバップに慣れ親しんだジミー・ヒースに、「モード奏法」による演奏を理解させるには苦労したそうですが、次第に慣れていった様です。

 

しかしながら、ジミー・ヒースがせっかく「モード奏法」に慣れた頃、係官から仮釈放中は「フィラデルフィアから半径60マイル以上は移動禁止」のお沙汰が下され、バンドでの演奏が困難となってしまったそうです。

 

さて、どうしたものかと思案したマイルス、コルトレーンが退団する直前に(コルトレーンから聞いて)連絡してきたウェイン・ショーターWayne Shorter)に電話したそうです。

その時は、アート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズで演奏しているという事で参加を断られ、ウェインの参加は1964年の夏まで伸びる事となった模様。

 

そんな経緯で、1960年11月のヨーロッパ・ツアーの為、場繋ぎ的にソニー・ステット(Sonny Stitt)が雇われたそうです。

 

 

1曲目「If I Were A Bell」は、マイルスの軽快なミュート・トランペットから始まります。

 


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ソロ2番手にテナー・サックスのソニー・ステットが登場し、ハード・バップ寄りの
演奏を聴かせてくれます。続くウイントン・ケリーの球を転がすような軽快なソロも素敵ですね。

 

2曲目「No Blues」は、ミディアムテンポで演奏されるタイトル通りブルース進行の曲。マイルス、ソニー・ステット、ウイントン・ケリー、ポール・チェンバース、そして再びマイルスと堅実なるソロが続きます。

 


3曲目「'Round Midnight」は、ギル・エヴァンス(Gil Evans)編曲したバージョンで演奏されますが、あのド派手なキメの後、のほほんとしたソニー・ステットのソロが登場する事で、少し気が抜けた感じになります(笑)。

 


4曲目「All Of You」は、クールなマイルスのミュート・トランペットが冴える曲。

 


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ここでソニー・ステットはアルト・サックスに持ち替え、バードばりの高速ビバップ・フレーズを多用したソロを聴かせてくれます。

 


5曲目「Autumn Leaves/The Theme」は、ジミー・コブがブラシでざくざく刻むリズムに乗った、マイルスのミュート・トランペットのリリカルな演奏を聴く事が出来ます。

 


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ソニー・ステットはアルト・サックスで、キャノンボールに負けじと高速ビバップ・フレーズを連発しております。


まあ、時代が若干1958年頃に逆戻りした感じがするライブではありますが、マイルスもソニー・ステットも、ヨーロッパの観衆が喜びそうな、聴きやすい演奏を繰り広げている様に思えます。

 

 

Miles Davis & Sonny Stitt - The Essential Live In Stockholm
Dragon DRLP-129/30 / DIW DIW-410 [1997] 


01. If I Were A Bell (Loesser) 11:12
02. No Blues (Miles Davis) 13:24
03. 'Round Midnight (Monk - Williams) 6:20
04. All Of You (Cole Porter) 15:40
05. Autumn Leaves/The Theme (Prevert - Kosma/Miles Davis) 14:53


Miles Davis (tp) Sonny Stitt (as,ts) Wynton Kelly (p) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds)
October 13, 1960 at "Konserthuset", Stockholm, Sweden.

 

 

ソニー・ステット(Sonny Stitt)が参加した1960年11月のヨーロッパ・ツアーは、あまり再発されていないようですね。

 

 

大体、1960年春のコルトレーンが参加したライブと抱き合わせというのは、人気のなさを暗に示しているんだと思います(笑)。