加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Miles Davis - My Funny Valentine (Columbia) 1964」バラッド中心の名ライブ

1963年初頭に新バンドを結成したマイルス・デイヴィスMiles Davis)は、スタジオには入らず、ひたすらライブに明け暮れる日々を送っていた様です。

 

そんな中、公式にライブ録音された、1964年02月12日の「Philharmonic Hall」でのライブは、記録(ディスコグラフィー)を見る限り、途中休憩を挟み、2部構成で開催された模様で、その録音からバラッド中心の「My Funny Valentine (Columbia CS-9106/CL-2306)」と、アップテンポな演奏中心の「'Four' & More (Columbia CS-9253/CL-2453)」という2枚のアルバムに分散収録されております。

 

 

マイルス・デイヴィスMiles Davis)以外の演奏メンバーは、リズム隊が「The Trio」と呼ばれるドラムスのトニー・ウィリアムスTony Williams)、ベースのロン・カーターRon Carter)、ピアノのハービー・ハンコックHerbie Hancock)という若手3人。

 

そこに、ジョン・コルトレーンJohn Coltrane)の推薦で参加したテナーサックスのジョ-ジ・コールマン(George Coleman)が加わります。

 

ちなみに、この時期のライブが聴き易いのは、フリージャズを毛嫌いしていたらしいジョ-ジ・コールマンの存在が大きいです。

日々、フリージャズに影響される若手3人の暴走(笑)を抑える役目を彼が担っていたお陰で、あの「Plugged Nickel」のような惨劇が起きなかった訳ですから(笑)。

 

 


さて、今回紹介するバラッド中心の「My Funny Valentine (Columbia CS-9106/CL-2306)」には、第1部から「All Of You」、「Stella By Starlight」の2曲、第2部から「My Funny Valentine」、「All Blues」、「I Thought About You」の3曲が収録されております。

 

「Miles Davis - My Funny Valentine (Columbia) 1964」バラッド中心の名ライブ


第2部「All Blues」の次に演奏されたらしい、約15分にも及ぶバラッドの名演となった1曲目「My Funny Valentine」。

 


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冒頭の、ピアノのハービー・ハンコックとペースのロン・カーターだけをバックに、マイルスの間を生かしハード・ボイルドにキメるトランペットが素晴らしいです。

途中からドラムスのトニー・ウィリアムスも抑え気味に入って来ますが、バラッド演奏なので大人しくしているのが好ましいですね(笑)。

ソロは、ジョ-ジ・コールマン、ハービー・ハンコックと引き継がれますが、ハービーのビル・エヴァンスBill Evans)にも通じる耽美的なソロが素晴らしいかと。

 


2曲目「All Of You」は、ミディアムテンポで抑え気味に演奏されますが、真剣に聴き直すと、マイルスの「間」を生かしたソロが素晴らしいですね。

 

ジョ-ジ・コールマンは、ジョン・コルトレーン風味なフレーズを使いつつ、演奏を盛り上げ、ハービー・ハンコックのやや、耽美的なソロに引き継ぎます。

 


レコードではB面1曲目であった、3曲目「Stella By Starlight」。

 


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1曲目の「My Funny Valentine」同様、マイルスはかなり遅いテンポで渋くキメておりますが途中、「イエー!」という歓声が入り、トニー・ウィリアムスのドラムがブラシからスティックに切り替えると同時に拍手が沸き起こります。

 

それだけ会場に居た観客も、緊張感あるマイルス達の演奏に聴き入っていたのでしょうね。ソロでハイトーンを多用するマイルスもゴキゲンそのもの。

 

ジョ-ジ・コールマンのソロの次に登場するハービー・ハンコックも、マイルスの演奏スタイルに寄せつつも、独自のフリーフォームまでも視野に入れた、耽美的なソロを聴かせてくれます。

 


4曲目「All Blues」は、ややアップテンポで演奏されます。

 


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前述の通り、第2部の1曲目に演奏された様ですから、景気付けの意味もあったんでしょうね。テンション高めな「The Trio」に煽られつつ、新しいソロフレーズが次々と飛び出します。

耽美的なハービー・ハンコックのソロのバックでゴリゴリとベースを弾くロン・カーターも凄いですね。

 


アルバム最後に収録された5曲目「I Thought About You」も、「間」を生かしたバラッド演奏。

 

マイルスがオープン・トランペットで音を伸ばすだけで、ため息が出てしまいます。会場にいる観客の歓声や拍手がかすかに聴こえる事で、ライブの臨場感が伝わってきます。

 

 

感想に「凄いですね」と「素晴らしい」を連発してしまうライブアルバム「My Funny Valentine (Columbia CS-9106/CL-2306)」は、文句なしの名盤であり、ジャズ初心者の皆様にも、安心してお勧め出来る1枚です。

 

 

Miles Davis - My Funny Valentine
Columbia CS-9106/CL-2306 / Sony Records SRCS-9110 [1996.09.21]


side 1 (A)
01. My Funny Valentine (L. Hart-R. Rodgers)  15:11
02. All Of You (Cole Porter)  15:02

side 2 (B)
03. Stella By Starlight (N. Washington, V. Young)  13:05
04. All Blues (Miles Davis)  8:58
05. I Thought About You (J. Van Heusen, J. Mercer)  11:16


Miles Davis (tp) George Coleman (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds) 
February 12, 1964 at Philharmonic Hall, Lincoln Center, NYC.