加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「The Amazing Bud Powell Vol. 1 (Blue Note) 1949,1951」天才バド・パウエル登場

ブルーノート(Blue Note Records)のオーナー、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)がこよなく愛したミュージシャンの一人が天才ピアニスト、バド・パウエルBud Powell)です。

 

ビバップを演奏するピアニストは全員、バド・パウエルの影響下にあると言っても過言じゃないほど、世界中のジャズ・ピアニストに影響を与えている人でもありますね。

 

バド・パウエルの天才的な閃きというか凄さは、演奏を聴いてもらえば一目瞭然かと思われますが、物凄い演奏は初期に集中しており、欧州に移住したキャリア後半には、初期の凶器を孕んだ熱狂的な演奏は影を潜め、どちらかというと寛いだ演奏を聴かせるようになります。

 

その理由は物凄い演奏を聴かせてくれる1940年代半ばから「総合失調症」という「こころや考えがまとまりづらくなってしまう病」にかかって入退院を繰り返し、年を経る毎に症状が悪化してしまった為なんだそうです。

 

参考までに厚生労働省の「統合失調症」のページをリンクしておきます。

 

www.mhlw.go.jp

 

マイルス・デイヴィスMiles Davis)やデューク・ジョーダンDuke Jordan)の話によると、「バドは入院時に受けた電気ショック療法が原因で精神が不安定になった」とも・・・。

 

いずれにせよ、日々寄り添い、最良な録音が出来る日を根気強く待っていたアルフレッド・ライオンの粘り勝ちとも言える記録が、ブルーノート(Blue Note Records)に残される事となります。

 

「The Amazing Bud Powell Vol. 1 (Blue Note) 1949,1951」天才バド・パウエル登場


さて、「The Amazing Bud Powell Vol. 1 (Blue Note BLP-1503)」には、まず1949年08月09日のトランペットのファッツ・ナバロ(Fats Navarro)、テナー・サックスのソニー・ロリンズSonny Rollins)というフロントに、ベースのトミー・ポッター(Tommy Potter)、ドラムスのロイ・ヘインズ(Roy Haynes)というリズム隊を加えたクインテット編成による録音が収録されております。

 

これが「WOR Studios」で行われたバド・パウエルBud Powell)のブルーノート第1回目の録音で、ファッツ・ナバロとソニー・ロリンズが録音に参加した理由は、バド・パウエルBud Powell)の精神状態を考慮した為なんだそうで・・・。

 

録音日当日にバドが体調を崩しても、バド・パウエル抜きで録音を行える様に配慮した為だという事で、この録音では録音後半に、保険に意味合いで参加してもらったフロントの2人に帰ってもらい、トリオのみで録音を続けたそうです。

 

 

4曲目「異教徒の踊り(Dance Of The Infidels)」は、バド・パウエルの自作曲。

ファンファーレの様なイントロから、如何にもビバップといった感じのラインの長いテーマが続き、バド・パウエル、ファッツ・ナバロ、ソニー・ロリンズと天才達のソロ・リレーをお楽しみいただけます。


5曲目「52nd St. Theme」は、セロニアス・モンク (Thelonius Monk) の作品。

 


www.youtube.com

ファッツ・ナバロの軽快なイントロからテーマが演奏され、ソニー・ロリンズ、ファッツ・ナバロ、バド・パウエルの順でテンションの高いソロが続きます。


9曲目「Wail」は、バド・パウエルの自作曲でアップテンポの曲ではありますが、ソニー・ロリンズ、ファッツ・ナバロ、バド・パウエルと、余裕たっぷりなソロを聴かせてくれます。


11曲目「Bouncing With Bud」は、バド・パウエルの自作曲。
軽快でハネるようなテーマに続き、ソニー・ロリンズ、ファッツ・ナバロ、バド・パウエルと、これまた天才達の閃きに満ちたソロが続きます。


12曲目「Ornithology」は、フロント2人が抜けたトリオ編成による録音です。

このトリオだけの演奏を聴くと、出来る事なら全てトリオ編成で演奏したかったというアルフレッド・ライオンの思いが切実に伝わる、バドの天才的な演奏を聴く事が出来ます。

 

 

1951年05月01日に「WOR Studios」で行われた2回目の録音は、ベースのカーリー・ラッセル(Curly Russell)とドラムスのマックス・ローチMax Roach)というトリオ編成で行われました。

 

異様なまでに緊張感高まった演奏が残されている理由は一旦、録音スタジオに入ったバド・パウエルBud Powell)が突然、行方不明になり約1時間半後、ハイテンションの状態で戻ってきた為の様です。

・・・まあ、何処かでクスリをキメてきたんだと思われますが、壮絶なる「Un Poco Loco」を筆頭に、まさに神がかった演奏が残される事となります。



12インチ・アナログ・レコードではA面冒頭3曲が「Un Poco Loco」という、バド・パウエルの自作曲が演奏されます。

 


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1曲目「Un Poco Loco [1st take]」は4分弱、2曲目「Un Poco Loco [2nd take]」は4分半、3曲目「Un Poco Loco」は5分弱とマスターテイクに至るまでどんどん演奏時間が長くなっていきます。

マックス・ローチMax Roach)の叩き出す不思議なリズム・パターンが、この演奏のキモであったりするんですが、3つのテイクで微妙に異なって来るので、その辺も聴き処の一つかと思われます。

 

6曲目「It Could Happen To You [alternate master]」は、バド・パウエルのソロで演奏されますが、ソロ演奏なので、バド・パウエルBud Powell)の超絶なる演奏テクニックが十分に堪能出来ます。

 


12インチ・アナログ・レコードでは、B面冒頭2曲が「A Night In Tunisia」です。

 


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7曲目「A Night In Tunisia [alternate master]」、8曲目「A Night In Tunisia」とも、マックス・ローチMax Roach)のドラムが異様に冴えわたっておりますが、しかし、ソロ・ブレイクからバド・パウエルのソロもドラムに負けじと冴え渡っておりますね。

 


12曲「Parisian Thoroughfare」も、バド・パウエル (Bud Powell) の自作曲。

軽快なテンポで羽が生えた如く快調に演奏を繰り広げる、バド・パウエルの凄さといったら・・・。

 

 

The Amazing Bud Powell Vol. 1 (RVG)
Blue Note BLP-1503 / Toshiba EMI TOCJ-9026 [1998.09.30]

side 1 (A)
01. Un Poco Loco [1st take] (Bud Powell)  3:49
02. Un Poco Loco [2nd take] (Bud Powell)  4:31
03. Un Poco Loco (Bud Powell)  4:46
04. Dance Of The Infidels (Bud Powell)  2:53
05. 52nd St. Theme (Thelonius Monk)  2:48
06. It Could Happen To You [alternate master] (Van Heusen, Burke)  2:23

side 2 (B)
07. A Night In Tunisia [alternate master] (Dizzy Gillespie, F. Paparelli)  3:52
08. A Night In Tunisia (Dizzy Gillespie, F. Paparelli)  4:16
09. Wail (Bud Powell)  3:06
10. Ornithology (Bennie Harris, Charlie Parker)  2:23
11. Bouncing With Bud (Bud Powell)  3:03
12. Parisian Thoroughfare (Bud Powell)  3:25

 


#04,05,09-11  August 9, 1949 at WOR Studios, NYC.
Fats Navarro (tp #omit 10) Sonny Rollins (ts #omit 10) Bud Powell (p) Tommy Potter (b)

Roy Haynes (ds)

 

#01-03,06,07,08,12  May 1, 1951 at WOR Studios, NYC.
Bud Powell (p) Curly Russell (b #omit 06) Max Roach (ds #omit 06)

 

 

 

 

「The Amazing Bud Powell Vol. 1 (Blue Note) 1949,1951」天才バド・パウエル登場

The Amazing Bud Powell 
Blue Note BLP-5003

side 1 (A)
01. Un Poco Loco (Bud Powell)  4:44
02. Over The Rainbow (Harburg-Arlen)  2:57
03. Ornithology (B. Harris)  2:22
04. Wail (Bud Powell)  3:04

side 2 (B)
05. A Night In Tunisia (Robin-Gillespie)  4:14
06. It Could Happen To You (Burke-Van Heusen)  3:13
07. You Go To My Head (Coots-Gillespie)  3:14
08. Bouncing With Bud (Bud Powell)  3:02


#03,04,07,08  August 9,1949 at WOR Studios, NYC.

Fats Navarro(tp #04,08) Sonny Rollins(ts #04,08) Bud Powell(p) Tommy Potter(b)

Roy Haynes(ds)


#01,02,05,06  May 1,1951 at WOR Studios, NYC.

Bud Powell(p) Curly Russell(b #01,05) Max Roach(ds #01,05)

 

THE COMPLETE AMAZING BUD POWELL

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