加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Gil Melle - Patterns In Jazz (Blue Note) 1956」極上なるウエスト・コースト風味のサウンド

ギル・メレ(Gil Melle)という白人系サックス奏者は、初期ブルーノート(Blue Note Records)において重要な役割を果たした人物として、一部ブルーノート・マニアに認知されている存在ではありますが、昨今のCD再発状況を眺める限り、一般的な人気があったとは言えない様です。

 

まず、ギル・メレは、録音エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)をブルーノートに紹介した人物として、マニアの間では有名な存在だったりします。

 

また、5000番台(10インチ)アルバム・ジャケットのデザインを担当し、マルチな才能をブルーノートで発揮した事でも知られております。

 

「Gil Melle - Patterns In Jazz (Blue Note) 1956」極上なるウエスト・コースト風味のサウンド


さて今回紹介する「Patterns In Jazz (Blue Note BLP-1517)」には、ハードバップの宝庫1500番台(12インチ)には似つかわしくない、クールなウエスト・コースト風味の演奏が収められております。

 

どちらかというと5000番台(10インチ)の延長線上にあるサウンドで、他のハードバップ系アルバムと比較し、継子扱いされるのがあまりにも不憫であります。

5000番台(10インチ)のアルバムも一部、CD化されておりますが、ギル・メレ(Gil Melle)が残した4枚のアルバム群に関しては単独で発売される事は今後、まずないでしょうねえ。

アナログ・レコードでは時々、再発されてますが、再生が面倒なんで(笑)。

 

話を戻しまして。ギル・メレ(Gil Melle)のこのアルバムに関しては演奏を聴く限り、クールで極上の演奏が収められていますので、聴かず嫌いはもったいないと断言しておきます(笑)。

 


1956年04月01日にハッケンサックにあったルディ・ヴァン・ゲルダーの自宅兼スタジオで録音されたアルバムには、バリトン・サックスに専念するギル・メレ(Gil Melle)の他、トロンボーンのエディ・バート(Eddie Bert)、ギターのジョー・シンデレラ(Joe Cinderella)、ベースのオスカー・ペテイフォード(Oscar Pettiford)、ドラムスのエド・シグペンEd Thigpen)という渋めの実力派が顔を揃えております。

 

ギター・トリオで構成されたリズム隊に、バリトン・サックスとトロンボーンという低音楽器の2管アンサンブルが絡む演奏は、ウエスト・コースト・サウンドの特徴でもある、からっとしていて、実にクールに響いております(録音場所はイースト・コーストだけど)。

 

1曲目の軽快なテンポで演奏される「The Set Break」は、ギル・メレ(Gil Melle)の自作曲。

 


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バリトン・サックスとトロンボーンの低音アンサンブルから、ギル・メレバリトンとは思えない流暢なソロが始まります。


ギターのジョー・シンデレラ、トロンボーンのエディ・バート、ベースのオスカー・ペテイフォードと、ドラムスのエド・シグペンによるソロ交換、続いてギル・メレ、エディ・バート、ジョー・シンデレラの三者による聴き応えのあるソロ交換と続きます。

 


2曲目の物憂げな感じが漂う「Weird Valley」は、ギル・メレ(Gil Melle)の自作曲。

 

テーマ部から各人のソロが絶妙に挟まる構成は、如何にも知的なジャズといった感じ。

ソロ最初に登場するギターのジョー・シンデレラの乾いたギターの音色はまさにクール。続くギル・メレ、エディ・バートの優しく温かい感じの音色との対比が素晴らしいです。

 


3曲目「The Arab Barber Blues」は、9分にも及ぶギル・メレ(Gil Melle)の自作曲。
エディ・バート抜きのギター・カルテットによる演奏となります。

 


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ビバップ風味のメロディラインが長いテーマから、そのままソロに突入します。
ジョー・シンデレラのちょっと朴訥としたソロのバックでギル・メレが絡んだ後、オスカー・ペテイフォードのソロが登場、そのままドラムスとの4小節ソロ交換に突入します。

 


4曲目、ミディアムテンポで演奏される「Nice Questions」は、8分程あるギル・メレ(Gil Melle)の自作曲。エディ・バート抜きのギター・カルテットによる演奏です。

 

ここでのギル・メレは、ちょっとジェリー・マリガンGerry Mulligan)を彷彿とされる音色で跳躍の激しいソロを聴かせてくれます。
ギル・メレに刺激されたのかジョー・シンデレラのギター・ソロもやや激しい感じです。
最後に登場するギル・メレ、ジョー・シンデレラ、エド・シグペン三者によるソロ交換も良いですね。

 


5曲目、バラッド風味に演奏される「Moonlight In Vermont」は、短いながらも心に染み入るような演奏です。

 


6曲目「Long Ago And Far Away」は、あの有名なガーシウィン兄弟の作品。

 


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確か日本企画のブルーノート・オムニバスCD「No Room For Square」シリーズにも収録されておりましたが、軽快なテンポでかなり聴きやすい演奏となっております。

 

Gil Melle - Patterns In Jazz 
Blue Note BLP-1517 / Blue Note 7243 4 95718 2 2 [1998]

side 1 (A)
01. The Set Break (Gil Melle)  4:48
02. Weird Valley (Gil Melle)  5:13
03. The Arab Barber Blues (Gil Melle)  9:05

side 2 (B)
04. Nice Questions (Gil Melle)  8:17
05. Moonlight In Vermont (J. Blackburn, K. Suessodorf)  4:52
06. Long Ago And Far Away (I. Gershwin, J. Kern)  4:32


Eddie Bert (tb #1,2,5,6) Gil Melle (bs) Joe Cinderella (g) 
Oscar Pettiford (b) Ed Thigpen (ds)

April 1, 1956 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

 

 

なお、ギル・メレ(Gil Melle)がブルーノートに残した作品群を聴くには、私も所有している「Gil Melle - The Complete Blue Note Fifties Sessions (Blue Note 7243 4 95718 2 2)」がベストです。

レコードで聴けない未発表曲が1曲追加されているのもポイントですが、ア●ゾンだと品切れ中の様なので、他の中古CD市場等でお探し下さいませ。