加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Hank Mobley And His All Stars (Blue Note) 1957」「The Jazz Messengers」リユニオン・バンド的なアルバム

ブルーノート(Blue Note Records)のオーナー、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)がこよなく愛したテナーサックス奏者、ハンク・モブレーHank Mobley)。

 

マイルス・デイヴィスMiles Davis)やジョン・コルトレーンJohn Coltrane)の様に
「俺が俺が」と、隙あらば人の前に出ようとするタイプの性格ではなかったため、マイルス・デイヴィスクインテットに抜擢された時、酷評の上に過小評価されたりしているのですが・・・。

 

ハンク・モブレーのシャイな性格を十二分に理解し、気心のしれたメンバーを集め、リラックスした雰囲気の中で録音を行い、次々と名盤を世に送り出していたのがブルーノート(Blue Note Records)であったりします。

 

「Hank Mobley And His All Stars (Blue Note) 1957」「The Jazz Messengers」リユニオン・バンド的なアルバム

 

Hank Mobley And His All Stars (Blue Note BLP-1544)」は1957年01月13日の録音で、リーダーのハンク・モブレーHank Mobley)の他、ヴァイブラフォンのミルト・ジャクソンMilt Jackson)、ピアノのホレス・シルヴァーHorace Silver)、ベースのダグ・ワトキンス(Doug Watkins)、ドラムスのアート・ブレイキー(Art Blakey)という、リズム隊が惜しくも解散してしまった「The Jazz Messengers」のメンバーそのままであり、そこに何故かミルト・ジャクソンが加わるという、ゴシップ記事的にも興味深い編成となっております。

 

kaji-jazz.hatenablog.com

 

kaji-jazz.hatenablog.com

 

まあ、「The Jazz Messengers」の成り立ちが元々、アート・ブレイキー(Art Blakey)に仕事の依頼が来た際、ホレス・シルヴァーHorace Silver)が自身のバンドメンバーを貸す形で始まったそうなので、何らかの理由でバンドを解散する時には他のメンバーがホレスの側につくのは仕方ない事なんだと思われますけど。

 

 

ジャズジャーナリストの小川隆夫さんによると、解散の理由は、アート・ブレイキーだけが熱心な回教徒で、他のメンバーが別の宗教を信仰している事から、ツアーで毎日顔を合わせていると宗教に由来する意見の相違等が気になってしまったからという話という事なので、時々、スタジオで顔を合わせて録音する分には、まったく問題が生じなかったみたいです。


そんな訳で、「Hank Mobley And His All Stars (Blue Note BLP-1544)」を録音した当時は、リズム隊は元「The Jazz Messengers」のメンバーが最適だったのでしょう。

 

なお、演奏される曲目は全てハンク・モブレーHank Mobley)の自作曲であり、モブレーの作曲者としての才能を十二分に発揮したアルバムであるとも言えます。

 

しかし、ミルト・ジャクソンMilt Jackson)のソウルフルでブルジーな演奏が、このアルバムに絶妙な味付けをしている点は、見逃せないですね。

 

 

アート・ブレイキーのド派手なドラムスの煽りで始まる1曲目「Reunion」は、マイルドな音色で熱い演奏を聴かせるハンク・モブレー、ソウルフルでテンション高めのミルト・ジャクソン、程よいファンキーさが心地よいホレス・シルヴァーとソロが続いていきます。

 


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後テーマの前に登場するアート・ブレイキーは、お馴染みのド派手なドラムスで演奏を
さらに盛り上げます。

 


ソウルフルなハード・バップといった風情の2曲目「Ultramarine」では、一番手に登場するミルト・ジャクソンのやや硬質なヴァイブラフォン・ソロが素晴らしいですね。

 

続くホレス・シルヴァーハンク・モブレーとそれぞれの持ち味を生かしたソロを聴かせてくれますし、ミルト・ジャクソンハンク・モブレー、そして後半に加わるアート・ブレイキーのソロ交換も面白いです。

 


アート・ブレイキーの軽快なドラム・ソロから始まる3曲目「Don't Walk」は、街を闊歩するのに丁度良いテンポで演奏が進んでいきます。

 

気持ちよくブローするハンク・モブレーに続き、ミルト・ジャクソンホレス・シルヴァーと軽快なソロ・リレーが続きます。

 

最後にアート・ブレイキーハンク・モブレーミルト・ジャクソンを交えたソロ交換が始まりますが、こんな感じで全員の見せ場を作り出すハンク・モブレーが持つ作曲能力の素晴らしさも堪能出来ます。

 


ファンキーさとソウルフルな感じが絶妙に混じる4曲目「Lower Stratosphere」は、この手のテイストが持ち味のホレス・シルヴァーの独断場ですね(笑)。

 


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マイルドなハンク・モブレー、意外とファンキーなベースのダグ・ワトキンス、ソウルフルなミルト・ジャクソンと素敵なソロが続きます。

 


5曲目「Mobley's Musings」は、やや耽美的で美しいバラッド風味の演奏で、ハンク・モブレー自身の持ち味は、こういう何気ないマイルドな曲で本領発揮されるのでしょうね。

 


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ハンク・モブレーホレス・シルヴァーミルト・ジャクソンと各々、持ち味を生かした美しいソロを聴かせてくれます。

 

 

Hank Mobley And His All Stars (RVG)
Blue Note BLP-1544 / 東芝EMI TOCJ-9155 [1999.11.26] 24 Bit By RVG

side 1 (A)
01. Reunion (Hank Mobley)  6:58
02. Ultramarine (Hank Mobley)  10:39

side 2 (B)
03. Don't Walk (Hank Mobley)  7:51
04. Lower Stratosphere (Hank Mobley)  6:42
05. Mobley's Musings (Hank Mobley)  6:06


Hank Mobley (ts) Milt Jackson (vib) Horace Silver (p) Doug Watkins (b) Art Blakey (ds) 

January 13, 1957 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

 

Hank Mobley & His All Star

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次作「Hank Mobley Quintet (Blue Note BLP-1550)」では、ミルト・ジャクソンMilt Jackson)の代わりにトランペットのアート・ファーマーArt Farmer)が参加。

 

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まさに「The Jazz Messengers」再会セッションといった風情の演奏を繰り広げております。