ブルーノート(Blue Note Records)の1500番台では、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)に続くハウス・ピアニストとして活躍したソニー・クラーク(Sonny Clark)。
そんなソニー・クラークは、誕生日である1957年07月21日に初リーダーアルバム「Dial "S" For Sonny (Blue Note BLP-1570)」を録音しております。
演奏メンバーはソニー・クラーク(Sonny Clark)の他、トランペットのアート・ファーマー(Art Farmer)、テナーサックスのハンク・モブレー(Hank Mobley)、ドラムスのルイス・ヘイズ(Louis Hayes)という何故か、当時のホレス・シルバー(Horace Silver)クインテットのメンバー3人が顔を揃えております。
そこに、ブルーノート(Blue Note Records)が売り出し中のトロボーン奏者、カーティス・フラー(Curtis Fuller)と、ベースのウィルバー・ウエア(Wilbur Ware)が加わり、如何にもブルーノートらしい演奏が繰り広げられております。
ソニー・クラークは、オリジナルを4曲(残り2曲はスタンダード)用意し、記念すべき初リーダー録音に臨んでおります。
なお、オリジナル曲のうち3曲が、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)が書きそうな曲調であるのは、当時ホレスのバンドで演奏していたメンバー中心の録音である事を考慮した結果だったのかもしれません(知らんけど)。
録音当日のルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオには、バースディ・ケーキも用意されていたかもしれません・・・勿論、単なる推測です(笑)。
とにかく、初リーダー作とは思えないほど、リラックス・ムード満点の仕上がりとなっております。
アルバム・タイトルにも採用されている1曲目「Dial S For Sonny」は、ソウルフルでファンキーなソニー・クラーク(Sonny Clark)の自作曲。
ホレス・シルヴァー(Horace Silver)が書きそうな曲調ではありますが、ホレスより少し洗練された感じもします。
テナーサックスのハンク・モブレー(Hank Mobley)、トロボーンのカーティス・フラー(Curtis Fuller)、トランペットのアート・ファーマー(Art Farmer)、ピアノのソニー・クラーク(Sonny Clark)、ベースのウィルバー・ウエア(Wilbur Ware)の順にソロが登場しますが、トランペットのアート・ファーマーとピアノのソニー・クラークのソロが特に印象深いですね。
2曲目「Bootin It」は、ソニー・クラーク(Sonny Clark)の自作曲。CDには追加曲として7曲目に「Bootin It (mono take)」が収録されておりますが、これまた、ファンキーなホレス・シルヴァー(Horace Silver)っぽい曲調ですね(笑)。
ピアノのソニー・クラーク、トロボーンのカーティス・フラー、テナーサックスのハンク・モブレー、トランペットのアート・ファーマーと流暢なソロが続き、ドラムスのルイス・ヘイズ(Louis Hayes)とのソロ交換を経て、後テーマに戻ります。
3曲目「It Could Happen To You」は、バラッド風味で演奏される有名スタンダード。
トランペットのアート・ファーマー、ピアノのソニー・クラーク、テナーサックスのハンク・モブレー、トロボーンのカーティス・フラーの順で、しみじみとしたソロを聴かせてくれます。
4曲目「Sonny's Mood」は、ソニー・クラーク(Sonny Clark)の自作曲で、これも、モロにホレス・シルヴァー(Horace Silver)っぽい曲調。ここまで確信犯的な曲が続くと、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)が、そそのかしたのではないかと思ったりします(知らんけど)。
トランペットのアート・ファーマー、テナーサックスのハンク・モブレー、トロボーンのカーティス・フラー、ピアノのソニー・クラークの順でソロが続きます。
5曲目「Shoutin On A Riff」は、超アップ・テンポで演奏されるソニー・クラーク(Sonny Clark)の自作曲。
ピアノのソニー・クラーク、テナーサックスのハンク・モブレー、トランペットのアート・ファーマー、トロボーンのカーティス・フラー、ドラムスのルイス・ヘイズと流暢なソロが続きます。
6曲目「Love Walked In」も、有名なスタンダードで、この演奏のみフロント陣はお休みしてます。
演奏冒頭から始まるソニー・クラークのバラッド風味のピアノ・ソロが素晴らしく、続いてピアノ・トリオによる躍動感溢れる演奏が始まりますが、「Sonny Clark Trio (Blue Note BST-81579)」に繋がる演奏の様にも感じられます。
Sonny Clark - Dial "S" For Sonny +1 (RVG)
Blue Note BLP-1570 / 東芝EMI TOCJ-7013 [2007.07.25]
side 1 (A)
01. Dial S For Sonny (Sonny Clark) 7:24
02. Bootin It (Sonny Clark) 5:13
03. It Could Happen To You (J. V. Heusen - J. Burke) 6:56
side 2 (B)
04. Sonny's Mood (Sonny Clark) 8:36
05. Shoutin On A Riff (Sonny Clark) 6:42
06. Love Walked In (George & Ira Gershwin) 5:48
CD Bonus Track
07. Bootin It (mono take) (Sonny Clark) 5:15
Art Farmer (tp #1-5,7) Curtis Fuller (tb #1-5,7) Hank Mobley (ts #1-5,7)
Sonny Clark (p) Wilbur Ware (b) Louis Hayes (ds)
July 21, 1957 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
さて、1500番台に、やたら無名のソニー・クラークが参加していた理由は、ハウス・ピアニストとして重用されていたからなんですね。
ブルーノート(Blue Note Records)のオーナー、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)自身の回想によると、全米を回るツアーが入り、忙しくなってきたホレス・シルヴァー(Horace Silver)が担ってきたハウス・ピアニストの役割を、ソニー・クラーク(Sonny Clark)が引き受けたんだそうです。
おかげでホレス・シルバーは、気兼ねなくツアーに出かける事が出来、人気もうなぎ上りになっていったという話で・・・。
さて、ホレス・シルバー同様に、アルフレッド・ライオンに可愛がられていたソニー・クラークですが、悪癖の麻薬常用が災いし、ニュー・ヨークの酒場で仕事をするために
必要な「キャバレー・カード」を取得出来ずにいた模様。
つまり才能はあるものの、お酒を提供するライブハウスで演奏し、本国アメリカのジャズファンにアピールする事が出来なかったと・・・それでは、レコードも売れないですよね。
その上、ミュージシャン達にも、ソニー・クラークの存在は知られていなかったらしいです。
日本では、ロングセラーである「Cool Struttin'(BLP-1588)」や「Sonny Clark Trio(BLP-1579)」なども、当時のアメリカのジャズ・ファンは知らなくて当然だった訳です。
そんな不遇なソニー・クラーク(Sonny Clark)を、少しでも元気付けようとしたのでしょうか?
ミュージシャンの事を最優先で考えていたブルーノート(Blue Note Records)のオーナー、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)は、そんな彼の誕生日に「初リーダー録音」という、この上も無いプレゼントを贈ったのではないかと思ったりします。
ライブで演奏する機会が少なかったであろうソニー・クラーク(Sonny Clark)の知名度を上げる為、専用のセッションを行ってまで、積極的にシングル盤を発売したりしていたらしいですが、その辺のお話は機会があれば・・・。