加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Louis Smith - Smithville (Blue Note)」寡作なトランペッターの人気盤

寡作なミュージシャンでありながら、ブルーノート(Blue Note Records)に代表作を録音しているミュージシャンが何人か居たりしますが、そんな中の一人がトランペッターのルイ・スミス(Louis Smith)です。

 

ルイ・スミス(Louis Smith)は、クリフォード・ブラウン(Louis Smith)を彷彿とさせる音色とテクニックを持ち、一時期、ホレス・シルヴァーHorace Silver)のクインテットに抜擢されたりと、注目を浴びたミュージシャンではありましたが、すぐ音楽教師に専念してしまい、かなりの間、音楽シーンからは遠ざかってしまいます。

 

 

「Louis Smith - Smithville (Blue Note)」寡作なトランペッターの人気盤

 

前作「Here Comes Louis Smith (Blue Note BLP-1584)」は、トム・ウィルソン(Tom Wilson)が創設したレコード会社「Transition Records」が録音したものを買い取って発売したものであったので、今回紹介する「Louis Smith - Smithville (Blue Note BLP-1594)」が唯一、ルイ・スミス(Louis Smith)がブルーノート(Blue Note Records)で録音したアルバムとなります。

 

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ルイ・スミス(Louis Smith)以外のメンバーは、フロントの相方にテナー・サックスのチャーリー・ラウズ(Charlie Rouse)、リズム隊はブルーノート(Blue Note Records)のハウス・バンドという感じで、ピアノにソニー・クラークSonny Clark)、ベースはポール・チェンバースPaul Chambers)、ドラムスはアート・テイラーArt Taylor)といった(ブルーノート的に)安心安全なメンバーを揃えております。

 

 

ポール・チェンバースPaul Chambers)の重厚なベース・ランニングからおもむろに始まる1曲目「Smithville」は、ルイ・スミス(Louis Smith)自作のスロー・ブルース。

 


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いつになくファンキーなソニー・クラークSonny Clark)のピアノ・バッキングにのり、いきなりルイ・スミスのソロがしばし演奏された後、チャーリー・ラウズ(Charlie Rouse)との2管によるテーマ部が演奏されるという凝った構成です。

 

しかし、チャーリー・ラウズがファンキーにブローするとベニー・ゴルソンBenny Golson)っぽい面も出て来るんですね(笑)。

 

再びソロで登場するルイ・スミス(Louis Smith)は、ファンキーでありながらも大騒ぎに終始せず、どこか知性を残した演奏を聴かせてくれます。この辺は、ドナルド・バードDonald Byrd)に通じる所があるんですね。

 

続いて登場するソニー・クラークSonny Clark)のホレス・シルヴァーHorace Silver)の如きファンキーなソロは、凄まじいの一言。

 

ポール・チェンバースPaul Chambers)のベース・ソロを経て、後テーマに戻っていきます。

 

 

超アップテンポで演奏される2曲目「Wetu」は、ルイ・スミス(Louis Smith)の自作曲で多分、「Donna Lee」同様に「Indiana」のコード進行を拝借して作られた曲だと思われます。

 

チャーリー・ラウズ(Charlie Rouse)、ルイ・スミス(Louis Smith)とも手癖フレーズを多用しつつ、勢いある豪快なソロを展開しております。

 

続くソニー・クラークSonny Clark)は、シングル・トーンで勢いあるソロを、最後に登場するポール・チェンバースPaul Chambers)は弓弾きソロを披露しております。

 

 

3曲目「Embraceable You」は、穏やかなバラッド風の演奏で、ルイ・スミス(Louis Smith)の知性溢れる美しいトランペットの音色をご堪能いただけます。

 

 

 

 

4曲目「There Will Never Be Another You」は、軽快なアップ・テンポで演奏される1曲。この曲のソロ、アメリカで発売されたソロ・フレーズのコピー集に掲載されていたので、ミュージシャンの間では有名な演奏なんだと思われます。

 


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例の特徴あるソロ・フレーズを聴かせてくれるチャーリー・ラウズ(Charlie Rouse)、流れるような美しいソロ・フレーズを聴かせてくれるルイ・スミス(Louis Smith)をソロは続き、ソニー・クラークSonny Clark)は珍しくブロック・コードを混ぜたソロを聴かせてくれ、最後のポール・チェンバースPaul Chambers)は短いながら、お馴染みの弓弾きソロで演奏を盛り上げます。

 

 

超アップテンポで演奏される5曲目「Later」は、ルイ・スミス(Louis Smith)の自作曲。確か、何かのコード進行を下敷きにしていると思いますが、曲名が思い浮かびません(笑)。

 


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バリバリとハード・バップ風のフレーズを吹きまくるルイ・スミス(Louis Smith)、モンクのバンドでもよく聴く事が出来たソロ・フレーズを連発するチャーリー・ラウズ(Charlie Rouse)、軽快なソロ・フレーズを連発するソニー・クラークSonny Clark)と、いずれのメンバーも快調なソロを聴かせてくれております。

 

この曲でようやく、アート・テイラーArt Taylor)のドラム・ソロが出てきますね。

 

 

音楽教師という安定した職があったため、不安定なミュージシャン稼業からは一旦足を洗ってしまったルイ・スミス(Louis Smith)ではありますが、ブルーノート(Blue Note Records)のお陰で、全盛期の最良な演奏を聴く事が出来るというのは、嬉しい事ですね。

 

蛇足ですが「Louis Smith - Smithville (Blue Note BLP-1594)」には、何曲か未発表音源が残されており、一部は日本の東芝EMIが発売したオムニバス・レコードに収録され、一時期、追加3曲入りのCDも発売されていた様ですが、プレス枚数が少なったのか、現在、容易にというかリーズナブルに入手するのは少々、困難な様でございます。

 

 

Louis Smith - Smithville (RVG)
Blue Note BLP-1594 / 東芝EMI TOCJ-9200 [1999.03.23]

side 1 (A)
01. Smithville (Louis Smith)  11:04
02. Wetu (Louis Smith)  9:00

side 2 (B)
03. Embraceable You (George Gershwin, Ira Gershwin)  7:08
04. There Will Never Be Another You (Harry Warren, Mack Gordon)  5:33
05. Later (Louis Smith)  6:26


Louis Smith (tp) Charlie Rouse (ts) Sonny Clark (p) Paul Chambers (b) Art Taylor (ds) 
March 30, 1958 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

 

 

蛇足ですが「Louis Smith - Smithville (Blue Note BLP-1594)」に収録された「There Will Never Be Another You」が、私が1990年代に購入したアメリカ発売のトランペット・ソロ・コピー集に何故か収録されていたりするので、少なくともアメリカのミュージシャンの間では、よく知られたアルバムだったのだと推測されます。

 

 

ついでに、2枚のスタジオ・アルバムをカップリングしたCDも発売されております。

 

Legendary 1957-59 Stud

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