加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Art Pepper - Tokyo Debut (Galaxy) 1977」初来日、郵便貯金ホールでのラジオ録音

エスト・コーストの天才サックス奏者アート・ペッパーArt Pepper)が1977年04月05日、東京都港区芝公園にあった東京郵便貯金会館のホールで「生きてきてよかった」と自伝「ストレート・ライフ」に記すほど大歓迎を受けた日本公演の記録が、今回紹介するアルバム「Art Pepper - Tokyo Debut (Galaxy GCD-4201-2)」です。

 

 

「Art Pepper - Tokyo Debut (Galaxy) 1977」初来日、郵便貯金ホールでのラジオ録音


この録音は元々、TBSラジオが番組放送用に収録したものだったそうで、1990年に日本のポリドール(Polydor)からアルバム「First Live in Japan (Polydor J00J-20390)」として発売され、1995年に米ギャラクシー(Galaxy)から「Tokyo Debut (Galaxy GCD-4201-2)」と名を変え発売された、という流れです。

 

長年、新発田図書館で借りて感動したポリドールの日本盤CDを探していたのですが、中々見つからずネットを眺めていたら別ジャケットになった米ギャラクシー(Galaxy)を見つけ、確保した訳です。

 


さて、アート・ペッパーArt Pepper)は重度の麻薬中毒のため、1960年代から1970年前半までスタジオ録音が途絶えていたのですが、1975年08月録音の「Living Legend (Contemporary S7633)」で復活。

 

以降、1976年09月録音の「The Trip (Contemporary S7638)」、1977年03月録音の「No Limit (Contemporary S7639)」と順調に録音活動を続けた後、1977年04月にヴィヴラフォン奏者カル・ジェイダー(Cal Tjader)バンドのゲストとして「奇跡の日本来日」を果たした訳です。

 

来日が「奇跡」と書いたのは、1970年代の日本では、麻薬で逮捕歴のあるミュージシャンが来日するためのビザの発給が厳しく制限されていたみたいだからで。

 

アート・ペッパーArt Pepper)は1950年代後半頃から麻薬関連で捕まり、1960年代後半には麻薬常習癖を克服するため「シナノン(Synanon)」という治療施設で過ごしていたので、入国許可が下りるか申請してみるまで分からないといった感じだったんでしょうねえ。

 


という事で、「Art Pepper - Tokyo Debut (Galaxy GCD-4201-2)」の話に戻ります。

 

1950年代には映画俳優顔負けの容姿と小鳥がさえずるような儚げな演奏で、日本では熱烈なファンを獲得したアート・ペッパーArt Pepper)ではありますが・・・。

 

1970年代前半に音楽シーンに復活した際は、1967年07月に急逝したジョン・コルトレーンJohn Coltrane)のフリーキーで激情的な演奏スタイルに感化された様で、時々、雄叫びの如きフレーズを混ぜつつ情熱的に吹きまくるスタイルにシフトしており、復帰後のアルバムを聴かずにライブに行った方がいれば、あっけにとられたかもしれません(笑)。

 


急速調の1曲目「Cherokee」、5曲目で自作の有名曲「Straight Life」などで、その激情的な演奏を聴く事が出来ますが、エレキ・ピアノで参加するクレア・フィッシャー(Clare Fischer)などのバックメンバーは、興奮気味に演奏するアート・ペッパーArt Pepper)についていくのがやっと、といった風情で、アート・ペッパーの一人相撲という感じに終始しております。

 

日本のお客さんの万雷の拍手に感極まって、思わず演奏に余計な力が入っちゃった(てへ)、みたいな感じだったんでしょうねえ・・・。

 


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3曲目、アート・ペッパーArt Pepper)の自作曲「The Spirit Is Here」は、冷静さをやや取り戻した感じで、バックバンドも軽快にスイングしております。

 

バンド全体の演奏の出来としてはカル・ジェイダー(Cal Tjader)が加わる後半に演奏されるラテン・ジャズの古典ともいえる「Manteca」や、ボサノヴァのリズムが心地よい「カーニヴァルの朝(Manha De Carnaval)」の方がよろしいかと思われます。

 


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アート・ペッパーArt Pepper)も気負いなく演奏しているみたいですし。

 

Art Pepper - Tokyo Debut (1977)
Galaxy GCD-4201-2 / VICJ-23185 [1995]

side 1 (A)
01. Introduction  2:23
02. Cherokee (Ray Noble)  12:03
03. The Spirit Is Here (Art Pepper)  8:58
04. Here's That Rainy Day (Van Heusen-Burke)  6:47
05. Straight Life (Art Pepper)  6:27

side 2 (B)
06. Manteca (Gillespie, Fuller)  12:59
07. Manha De Carnaval (Maria, Bonfa)  7:49
08. Felicidade (Jobim, DeMoraes)  3:00


Art Pepper (as) Clare Fischer (el-p) Rob Fisher (b) Peter Riso (ds) Pancho Sanchez (per) Cal Tjader (vib #6-8) Bob Redfield (g #6-8) 

April 5, 1977 at the Yubin Chokin Hall, Tokyo.

 

Tokyo Debut

Tokyo Debut

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1970年代前半に音楽シーンに復活した以降のアルバム群を少しだけ・・・。

 

August 9, 1975 at Contemporary's studio, Los Angeles, CA.
Art Pepper - Living Legend (Contemporary S7633)

 

September 15 and 16, 1976 at Contemporary's studio, Los Angeles, CA.
Art Pepper - The Trip (Contemporary S7638)

 

March 26, 1977 at Contemporary's studio, Los Angeles, CA.
Art Pepper - No Limit (Contemporary S7639)

No Limit

No Limit

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April 5, 1977 at "Yubin Chokin Hall", Tokyo, Japan.
Art Pepper - First Live In Japan (Polydor J00J-20390) 1990
Art Pepper - Tokyo Debut (Galaxy GCD-4201-2) 1995

 

 

July 28, 1977 at Village Vanguard, NYC.
Art Pepper - Thursday Night At The Village Vanguard (Contemporary LP-7642)

 


Art Pepper - Friday Night At The Village Vanguard  (Contemporary LP-7643)

 

July 30, 1977 at Village Vanguard, NYC.
Art Pepper - Saturday Night At The Village Vanguard  (Contemporary LP-7644)