日本では何故か人気薄なピアニスト、アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)。
ブルーノートのオーナー、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)が、「セロニアス・モンク(Thelonious Monk)に出会った時以来の衝撃的な才能」とベタ惚れし、1964年発売の「Andrew Hill - Black Fire(Blue Note BLP-4151)」から長年、大量の未発表曲を含む録音をブルーノート(Blue Note Records)に残しております。
「Black Fire(Blue Note BLP-4151)」以降、信じがたいペースで「全曲アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)作曲」のアルバムを量産したものの、同時代にデビューしたハービー・ハンコック(Herbie Hancock)ほどの人気が出ず、晩年は教育者として後進の育成に注力していた模様。
セロニアス・モンク(Thelonious Monk)、バド・パウエル(Bud Powell)、アート・テイタム(Art Tatum)から影響を受けたというピアノ・スタイルは、「前衛ジャズ時代に登場したセロニアス・モンク(Thelonious Monk)」とでも表現すべき、特異な演奏スタイルであります。
さて、アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)の日本のレコード会社主導で制作されたアルバムが、今回ご紹介する「Nefertiti (East Wind EW-8032)」です。
アルバムタイトルでもあり表題曲も収録される「ネフェルティティ(Nefertiti)」は、ベルリン博物館所蔵の胸像が有名な、紀元前14世紀中頃に相当する第18王朝エジプト王妃の名前から名付けれれたものでしょう。
演奏される曲はいつも通り全曲、アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)の作品です。
1曲目「Blue Black」の演奏の半分は、アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)の緊張感醸し出しつつも、物憂げで耽美的なソロです。
後半からはやや乱雑な感じがするロジャー・ブランク(Roger Blank)のドラムスと、リチャード・デイヴィス(Richard Davis)のぐいぐい引っ張るベースが加わり、カオス感増し増し(笑)な演奏となります。
2曲目「Relativity」は、耽美的なピアノにリチャード・デイヴィス(Richard Davis)の強力無比なベースと、ロジャー・ブランク(Roger Blank)の絶妙なブラシが絡む一曲。
アナログ・レコードだとB面に相当する、タイトル曲でもある3曲目「Nefertiti」は、弓弾きベースが醸し出す程よい緊張感の中、アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)の力強くも耽美的なピアノが鳴り響く1曲でございます。
ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)作曲の超有名曲「Nefertiti」とは同名異曲でありますが、通底する曲調や雰囲気は同じかな・・・と、思ったりします。
4曲目「Hattie」は3拍子で演奏される、アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)にしては明るめな曲調の1曲。
5曲目「Mudflower」は、ドラムスのロジャー・ブランク(Roger Blank)が刻むトライアングルのリズムが、マイルス・ディヴィス(Miles Davis)の「Decoy」で聴けるリズム・パターンとテンポも含めそっくりなので興味のある方は、聴き比べてみて下さい。
6曲目「Unnatural Man」は、如何にも「前衛ジャズ」っぽいドラムス、ベース、ピアノが一聴するに、無秩序に演奏を繰り広げている1曲です。
Andrew Hill - Nefertiti
East Wind EW-8032 / Universal Music UCCJ-9035 [2002.10.23]
side 1 (A)
01. Blue Black (Andrew Hill) 14:07
02. Relativity (Andrew Hill) 5:25
side 2 (B)
03. Nefertiti (Andrew Hill) 8:04
04. Hattie (Andrew Hill) 3:45
05. Mudflower (Andrew Hill) 7:28
06. Unnatural Man (Andrew Hill) 3:16
Andrew Hill (p) Richard Davis (b) Roger Blank (ds)
January 25, 1976 at Vanguard Studio, NYC.
アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)を紹介した他のアルバムへのリンクも貼っておきます。
後期のアルバムで一番聴き易く、お勧めするアルバムが「Eternal Spirit」です。