長年、ブルーノート(Blue note Records)の録音とマスター音源作成に関わるルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)が学生時代ではありますが、トランペットの演奏経験があるからか・・・ブルーノートが録音したアルバム群で聴けるトランぺットは、音像くっきりとしたきらびやかな音で聴く事が出来たりします。
その影響もあってか、他レーベルではイマイチというか、霞んだ印象があるトランペッターが、ブルーノートでは最良の演奏を聴かせてくれる事がまま、あります。
さて、カリブ海に浮かぶイギリス連邦加盟国の一つである島国、ジャマイカ(Jamaica)の首都であり、レゲエの故郷としても知られるキングストン(Kingston)出身で、かなり個性的で独特なスタイルを持つトランペット奏者、ディジー・リース(Dizzy Reece)も、そんなトランペッターの中の一人。
ちなみに彼のニックネームである「Dizzy」は、「おっちょこちょい」という意味合いで名付けられたという話を、ジャズ系の雑誌か何かで読んだ事があります(笑)。
ディジー・リース(Dizzy Reece)はジャマイカ(Jamaica)を出て1940年代末にロンドンに渡り、1950年代はパリを中心に活動しており、ヨーロッパを巡業のため訪れた米国ジャズ・ミュージシャン、とりわけライナーノートに「あのマイルス・ディヴィスが絶賛した!(意訳)」と記載された通り、マイルス・ディヴィス(Miles Davis)やソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)からも一目置かれていた様で・・・。
その噂を聞きつけたアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)がディジー・リース(Dizzy Reece)に興味を持った様で、その縁からブルーノート(Blue Note Records)で短期間ながら、今回ご紹介する「Blues In Trinity (Blue Note BLP-4006)」をとっかかりとして、計3枚の充実した録音を残す事となります。
ちなみに残る2枚は「Star Bright (Blue Note BLP-4023)」と、「Soundin' Off (Blue Note BLP-4033)」ですが、後ほど順次ご紹介しようと思ってます。
その他にサイドメンとしてブルーノート(Blue Note Records)における最上の演奏を聴かせてくれる「Duke Jordan - Flight To Jordan (Blue Note BLP-4046)」で、ディジー・リース(Dizzy Reece)の個性的なトランペットを聴く事が出来ます。
さて今回ご紹介するアルバム「Blues In Trinity (Blue Note BLP-4006)」は、前述の通りディジー・リース(Dizzy Reece)が渡米前に録音した、ブルーノート(Blue Note Records)第1弾に当たります。
で、丁度、ヨーロッパ巡業のため渡英中だったドナルド・バード(Donald Byrd)と、アート・テイラー(Art Taylor)も演奏に参加しております。
ただこの当時、「英国内のミュージシャン保護の観点から、米国のモダン系ジャズ・ミュージシャンはイギリス国内で録音する事まかりならぬ」という法律(規則?)が存在したらしく・・・そんな大人の都合により、1958年08月24日に「ロンドン」で録音したにも関わらず、「パリ」での録音であると意図的に誤記載していた、という話もあったりします(笑)。
曲により、参加するホーン奏者が増減しますが、欧州側のトランペットのディジー・リース(Dizzy Reece)、テナーサックスのタビー・ヘイズ(Tubby Hayes)、そして米国側からトランペットのドナルド・バード(Donald Byrd)が参加しております。
リズム隊は、欧州側からピアノのテリー・シャノン(Terry Shannon)、ベースのロイド・トンプソン(Lloyd Thompson)、そして米国側からドラムスのアート・テイラー(Art Taylor)という布陣。
さて、このアルバムで聴ける1~5曲目は、2曲目「I Had The Craziest Dream」を除き全曲が、ディジー・リース(Dizzy Reece)の自作曲となっております。
いきなり超アップテンポで演奏される1曲目「Blues In Trinity」は、ディジー・リース(Dizzy Reece)、タビー・ヘイズ(Tubby Hayes)とリズム隊による演奏。
ディジー・リース(Dizzy Reece)の緩急のある溌剌としたトランペット・ソロ、タビー・ヘイズ(Tubby Hayes)のソニー・ロリンズ(Sonny rollins)ばりな豪快なソロ、テリー・シャノン(Terry Shannon)の端正でちょっとファンキー風味混ざるピアノ・ソロと、欧州勢の健闘が目立ちます。
バラット風味の2曲目「I Had The Craziest Dream」は、ディジー・リース(Dizzy Reece)とリズム隊による演奏で、ディジー・リース(Dizzy Reece)が表情豊かな演奏を聴かせてくれます。
3曲目「Close-Up」は、ディジー・リース(Dizzy Reece)、タビー・ヘイズ(Tubby Hayes)、そしてドナルド・バード(Donald Byrd)が加わった3管編成のフロントとリズム隊による演奏。
得意の伸びやかなハイトーンを随所で聴かせるディジー・リース(Dizzy Reece)、ソニー・ロリンズ(Sonny rollins)風味のソロを聴かせるタビー・ヘイズ(Tubby Hayes)、ハードバップ期の絶頂期にあったドナルド・バード(Donald Byrd)も高域を生かし、ノビノビとしたソロを聴かせてくれます。
最後にフロント3人によるソロ交換が始まりますが、各人の個性が濃縮された白熱するソロを展開してくれます。
アップテンポで演奏される4曲目「Shepherd's Serenade」も、ディジー・リース(Dizzy Reece)、タビー・ヘイズ(Tubby Hayes)、ドナルド・バード(Donald Byrd)の3管とリズム隊による演奏。
ややバウンド気味にスイングするリズム隊をバックに、ディジー・リース(Dizzy Reece)、タビー・ヘイズ(Tubby Hayes)、ドナルド・バード(Donald Byrd)の順で、パワー全開のソロを展開します。
ビバップ風味漂う5曲目「Color Blind」は、ディジー・リース(Dizzy Reece)、タビー・ヘイズ(Tubby Hayes)とリズム隊による演奏。
こういう感じの曲調でのディジー・リース(Dizzy Reece)の演奏は、早世したファッツ・ナバロ(Fats Navarro)を思い起こさせますね。
このアルバム最後、6曲目を飾るのは、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)が書いたバラッド「'Round About Midnight」。
主役のディジー・リース(Dizzy Reece)らが抜け、タビー・ヘイズ(Tubby Hayes)とリズム隊による、ワン・ホーン・カルテットでの演奏ですが、絶品なバラッド演奏がアルバム「Blues In Trinity (Blue Note BLP-4006)」最大の聴き処だと思います(笑)。
Dizzy Reece - Blues In Trinity +2
Blue Note BLP-4006 / CDP 7243 8 32093 2 3 [1995.07.18] Blue Note Connoisseur Series
side 1 (A)
01. Blues In Trinity (Dizzy Reece) 6:44
02. I Had The Craziest Dream (Warren, Gordon) 3:02
03. Close-Up (Dizzy Reece) 10:38
side 2 (B)
04. Shepherd's Serenade (Dizzy Reece) 6:35
05. Color Blind (Dizzy Reece) 5:59
06. 'Round About Midnight (Monk) 4:44
Bonus Tracks
07. Eboo (Dizzy Reece) 4:44
08. Just A Penny (Dizzy Reece) 5:27
Dizzy Reece (tp #1-5,7,8) Donald Byrd (tp #3,4,7,8) Tubby Hayes (ts #1,3-8)
Terry Shannon (p) Lloyd Thompson (b) Art Taylor (ds)
August 24, 1958 at Decca Studios, London, England.
私が所有する1995年発売の米「Blue Note Connoisseur Series」には、2曲のボーナス・トラックが収録されており、いずれもディジー・リース(Dizzy Reece)の自作曲で、いずれもディジー・リース(Dizzy Reece)、ドナルド・バード(Donald Byrd)、タビー・ヘイズ(Tubby Hayes)とリズム隊による演奏。
アップテンポでテーマ部の重厚なアンサンブルが聴き処の7曲目「Eboo」、超アップテンポで演奏される8曲目「Just A Penny」共にフロントの3人が吹きまくり、トランペットに至っては、誰が吹いているのが分からなくなる場面が多いです(笑)。
「Dizzy Reece - Star Bright (Blue Note BLP-4023)」
「Dizzy Reece - Soundin' Off (Blue Note BLP-4033)」
「Duke Jordan - Flight To Jordan (Blue Note BLP-4046)」