ジョン・コルトレーン(John Coltrane)のプレステッジ(Prestige Records)における
初リーダー・アルバムが、このハードバップ・ファンであればお馴染みのヴァン・ゲルダー・スタジオで1957年05月31日に録音された「Coltrane (Prestige PRLP-7105)」です。
前年1956年、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の有名なるマラソン・セッションに参加した後、迎えた1957年のジョン・コルトレーン(John Coltrane)は、「The Prestige All Stars」名義による録音やマル・ウォルドロン(Mal Waldron)のプレステッジ(Prestige Records)セッションに参加。
また、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)のリバーサイド(Riverside Records)セッションにも参加しハードバップ時代の名演奏を残しております。
今回のアルバム「Coltrane (Prestige PRLP-7105)」は1957年05月17日、副大統領の愛称で知られるポール・クイニシェット(Paul Quinichette)との双頭バンド名義でのアルバム「Cattin' With Coltrane And Quinichette (Prestige PRLP-7158)」の録音を終えた約半月後(1957年05月31日)の録音となっております。
曲により、ジョニー・スプローン(Johnny Splawn)というこのアルバム以外に聞いた事ないトランペット奏者と、サヒブ・シハブ(Sahib Shihab)のバリトン・サックス奏者がしております。
ピアノは、レッド・ガーランド(Red Garland)とマル・ウォルドロン(Mal Waldron)が3曲ずつ交代で参加し、そこにポール・チェンバース(Paul Chambers)の安定したベースとアルバート・ヒース(Albert Heath)のドラムスが加わり、ハードバップど真ん中と形容するに相応しい演奏が続きます。
バリトン・サックスの力強いフレーズからエキゾチックな雰囲気漂う1曲目「Bakai」は、カル(ヴィン)・マッセイ(Calvin Massey)の作品。
レッド・ガーランド(Red Garland)の比較的端正で良くスイングするピアノ・ソロ、続くジョン・コルトレーン(John Coltrane)は、力強くメロディアスなハードバップ時代のコルトレーンお馴染みフレーズを聴かせてくれます。
最後のソロはサヒブ・シハブ(Sahib Shihab)で、ジョニー・スプローン(Johnny Splawn)はアンサンブルのみ参加だった様です。
ちなみにフィラデルフィアで活動した後、ニューヨークに進出したジョン・コルトレーン(John Coltrane)やリー・モーガン(Lee Morgan)らが好んでカル(ヴィン)・マッセイ(Calvin Massey)の曲を演奏しておりますが、これはカル・マッセイがご当地フィラデルフィアで、音楽的指導者の立場に居たためではないかと推測されます。
2曲目の「コートにすみれを(Violets For Your Furs)」は、コルトレーン・カルテットによる演奏。
ハードバップ時代におけるコルトレーンの名バラッド演奏をここで聴く事が出来ますし、レッド・ガーランド(Red Garland)のピアノ・ソロも絶品です。
軽快なテンポで演奏される3曲目「Time Was」もコルトレーン・カルテットによる演奏。
4曲目以降は、ピアノがマル・ウォルドロン(Mal Waldron)に交代となります。
重厚な3管アンサンブルで始まる4曲目「Straight Street」は、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の自作曲。
何となく演奏が重厚に感じるのは、マル・ウォルドロン(Mal Waldron)がピアノを弾いている事も影響していると思われます(笑)。
ジョン・コルトレーン(John Coltrane)のソロに続き、饒舌気味なジョニー・スプローン(Johnny Splawn)のトランペット・ソロが初めて登場します。
ゆったり気味なテンポで演奏される5曲目「While My Lady Sleeps」は、テーマはジョン・コルトレーン(John Coltrane)のみで、ソロもコルトレーンのみでした(笑)。
アルバム最後を飾る6曲目「Chronic Blues」は、これまた重厚なブルース。
わずかなリードミスも気にせず、豪快にゴリゴリ吹きまくるサヒブ・シハブ(Sahib Shihab)、ブルースなんだけど独特なフレーズを連発するジョン・コルトレーン(John Coltrane)、ソロ3番手に登場するジョニー・スプローン(Johnny Splawn)は、ぼーっと聴いているとリー・モーガン(Lee Morgan)と勘違いしてしまうほどの類似フレーズを連発し、演奏を盛り上げてくれます。
まあ、しかしジョニー・スプローン(Johnny Splawn)が、リー・モーガン(Lee Morgan)かドナルド・バード(Donald Byrd)の変名だと言われても納得してしまう程、ハードバップ期における彼らに肉薄する素晴らしい演奏を、このアルバム「Coltrane (Prestige PRLP-7105)」で聴かせてくれます。
John Coltrane - Coltrane
Prestige PRLP-7105 / Victor Entertainment VICJ-60270 [1999]
side 1 (A)
01. Bakai (Calvin Massey)
02. Violets For Your Furs (Matt Dennis, Thomas Adair)
03. Time Was (Gabriel Luna de la Fuente, Miguel Prado, Russell)
side 2 (B)
04. Straight Street (John Coltrane)
05. While My Lady Sleeps (Bronislav Kaper, Gus Kahn)
06. Chronic Blues (John Coltrane)
Johnny Splawn (tp omit #2,3) John Coltrane (ts) Sahib Shihab (bs #1,4,6)
Red Garland (p #1,2,3) Mal Waldron (p #4,5,6) Paul Chambers (b) Albert Heath (ds)
May 31, 1957 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.