加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Hampton Hawes - For Real (Contemporary) 1958」スコット・ラファロ参加が刺激を与えたアルバム

日本では人気のあるピアニスト、ハンプトン・ホーズHampton Hawes)をリーダーとし、1958年03月17日に録音された「For Real (Contemporary Records S-7589)」は、天才ベーシスト、スコット・ラファロ(Scott La Faro)とテナーサックスのハロルド・ランド(Harold Land)という珍しい顔ぶれが集うアルバム。

 

「Hampton Hawes - For Real (Contemporary) 1958」スコット・ラファロ参加が刺激を与えたアルバム

ドラムスは、あまりお馴染みでないフランク・バトラー(Frank Butler)です。

 


1年半後の1959年12月28日、「Bill Evans Trio - Portrait In Jazz (Riverside RLP 12-315)」が録音されるので、ビル・エヴァンスBill Evans)の革新的なピアノトリオに参加する前のスコット・ラファロ(Scott La Faro)が残した貴重な記録という面もある訳です。

 

 

1曲目「Hip」は、軽快な感じハード・バップといった風情がする、ハンプトン・ホーズHampton Hawes)の自作曲。

 


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テナーサックスのハロルド・ランド(Harold Land)、ピアノのハンプトン・ホーズ
ベースのスコット・ラファロ(Scott La Faro)とご機嫌なソロが続きます。

後テーマ前のハロルド・ランドハンプトン・ホーズの刺激的なソロ交換は、ベースのスコット・ラファロの存在あってこそ・・・という気がします。

 


2曲目「Wrap Your Troubles In Dreams」は、美しいバラッド風味の演奏。

ハロルド・ランドハンプトン・ホーズとソロが続きますが、やはりスコット・ラファロのベースが刺激になるのか、切れ味鋭いソロを聴く事が出来ます。

スコット・ラファロの短いソロの後、ハンプトン・ホーズハロルド・ランドと再びソロを取りますが、まだ弾き(吹き)足りなかったのでしょうかねえ。


3曲目「Crazeology (Little Bennie)」はベニー・ハリス(Bennie Harris) 作曲した、ビバップ時代の有名曲。

 

ハロルド・ランドハンプトン・ホーズ共に余裕たっぷりなソロを聴かせてくれますし、スコット・ラファロのベース・ソロも、単なるバッキングメンバーの域を超えたものですね。

演奏の最後の方では、ドラムスのフランク・バトラー(Frank Butler)が大活躍してます。

 


4曲目「Numbers Game」は、ハンプトン・ホーズHampton Hawes)とハロルド・ランド(Harold Land)の共作。

軽快なテンポに乗り、ハロルド・ランドハンプトン・ホーズスコット・ラファロとソロが続いた後、ドラムスとの4小節交換に突入します。

 


5曲目のタイトル曲「For Real」も、ハンプトン・ホーズHampton Hawes)とハロルド・ランド(Harold Land)の共作。

 


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スコット・ラファロの重厚なベースラインに導かれ、ややファンキー風味なテーマが登場。最初、ミディアム・テンポで演奏されソロの途中で、テンポが2倍になるなど仕掛けも充分。

ソロ3番目に登場するスコット・ラファロの躍動感溢れるソロが良いです。

 


6曲目、コール・ポーター (Cole Porter)の「I Love You」は、超アップテンポで演奏されます。

 


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ハロルド・ランドハンプトン・ホーズビバップ時代に回帰したそうなソロを聴く事が出来ます。

スコット・ラファロの短いソロの後、ドラムスとのソロ4小節交換が始まりますが、アップテンポでの演奏であるため、かなり刺激的ですね。


スコット・ラファロ(Scott La Faro)のベースは、どんな共演メンバーでも奮い立たせる効果がある事をあらためて実感出来るのが、この「For Real (Contemporary Records S-7589)」です。

 

Hampton Hawes - For Real 
Contemporary Records S-7589 / Victor Entertainment VICJ-41829 [1988.03.02]

 

side 1 (A)
01. Hip (Hampton Hawes)  6:14
02. Wrap Your Troubles In Dreams (Billy Moll, Harry Barris, Ted Koehler)  9:20
03. Crazeology (Little Bennie) (Bennie Harris)  6:40

side 1 (B)
04. Numbers Game (Hampton Hawes, Harold Land)  8:04
05. For Real (Hampton Hawes, Harold Land)  11:21
06. I Love You (Cole Porter)  3:56


Harold Land (ts) Hampton Hawes (p) Scott La Faro (b) Frank Butler (ds) 
March 17, 1958 at Contemporary Records, Los Angeles, CA.

 

 

1958年頃にスコット・ラファロ(Scott La Faro)が残した公式録音は、だいたいこんな感じです。

やはり、アメリカでは西海岸の方がスタジオ仕事とか多かったんでしょうねえ・・・。

 

January 21 and 22, 1958 at Contemporary's studio, Los Angeles, CA.
●Victor Feldman - The Arrival Of Victor Feldman (Contemporary S7549)

 

 

February, 1958 at San Francisco, CA.
●Cal Tjader-Stan Getz Sextet (Fantasy LP-3266)

 

 


March 17, 1958 at Contemporary's studio, Los Angeles, CA.
Hampton Hawes - For Real! (Contemporary S7589)

FOR REAL - THE COMPLETE SESSION

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April 4, 1958 at Los Angeles, CA.
●Buddy DeFranco And His Septette - Live Date! (Verve MGV-8383)

 

 

December 8, 1958 at Contemporary's studio, Los Angeles, CA.
December 9, 1958 at Contemporary's studio, Los Angeles, CA.
●Victor Feldman - Latinsville! (Contemporary CCD-9005-2)

 

Latinsville!

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On Vibes / Suite 16 / Latinsville

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「Art Farmer - Yesterday's Thoughts (East Wind) 1975」日本制作らしい渋めの良盤

名プロデューサー・伊藤八十八さんが1974年に設立した日本制作のジャズ・レーベル、イースト・ウィンド(East Wind)。

 

1975年03月05日に録音された「To Duke With Love (East Wind EW-7012)」に続くアルバムが、1975年07月16日と17日の2日間に渡り録音された「Yesterday's Thoughts (East Wind EW-8025)」です。

 

「Art Farmer - Yesterday's Thoughts (East Wind) 1975」日本制作らしい渋めの良盤

 

前作と同じくフリューゲルホルンの名手、アート・ファーマーArt Farmer)のバックを務めるのは、ピアノのシダー・ウォルトンCedar Walton)、ベースのサム・ジョーンズSam Jones)、ドラムスのビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)という顔ぶれ。

 

 

「Art Farmer - Yesterday's Thoughts (East Wind) 1975」日本制作らしい渋めの良盤

 

2回目の録音だったためか、各自リラックスした演奏を聴かせてくれます。

 


1曲目の「What Are You Doing The Rest Of Your Life」は、ミッシェル・ルグラン(M. Legrand)の手による名バラッド。

 


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アート・ファーマーシダー・ウォルトン共に日本人の嗜好に合わせた、安定した堅実なソロを聴かせてくれます。

 


2曲目の「How Insensitive」は、アントニオ・カルロス・ジョビン(A.C. Jobim)作曲の有名なボサ・ノバ。

 

アップテンポで攻め気味な演奏であるものの、フリューゲルホルンの甘い音色が色香漂う豊饒な大人の演奏に仕上げております。

 


3曲目の「Namely You」は、ミディアム・テンポのゆったりとした演奏・・・


と思いきや、アート・ファーマーが適度なブローを混ぜて演奏を盛り上げます。

 


4曲目の「Alone Together」は、哀愁漂う演奏。


フリューゲルホルンの甘い音色で、ややハードなソロを吹くアート・ファーマーも面白いですね。

 


5曲目の「Yesterday's Thoughts」は、ベニー・ゴルソン (Benny Golson)作曲のアルバムのタイトル曲。ベニー・ゴルソンアート・ファーマーは名ユニット、ジャズテットで共演しておりましたね。

 


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「I Remember Clifford」に通じる切ない感じのメロディを、アート・ファーマー
優雅に吹き綴っていきます。

 


6曲目の「Firm Roots」は、躍動感溢れるシダー・ウォルトンCedar Walton)の作品。

 


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テーマ部をアート・ファーマーシダー・ウォルトンがユニゾンで奏でた後、アート・ファーマーの軽快なソロが続きますが、その後に登場するシダー・ウォルトンの軽やかなソロもいいですね。

 

ソロ・リレーの最後にはビリー・ヒギンズ登場。多彩なリズム・パターンを披露します。

 


「Yesterday's Thoughts (East Wind EW-8025)」は、ジャズ喫茶の大音量のスピーカーで聴く事を想定した作りなんでしょうね。

そんな風に思える、日本制作らしい渋めの良盤です。

 

Art Farmer - Yesterday's Thoughts
East Wind EW-8025 / Universal Music UCCJ-9155 [2015.02.04]

side 1
01. What Are You Doing The Rest Of Your Life (A.&M. Bergman, M. Legrand)  9:50
02. How Insensitive (A.C. Jobim, V.De Moraes)  6:32
03. Namely You (G.D. Paul, J. Mercer)  5:54

side 2
04. Alone Together (H. Dietz / A. Schwartz)  9:28
05. Yesterday's Thoughts (Benny Golson)  7:59
06. Firm Roots (Cedar Walton)  4:58


Art Farmer (flh) Cedar Walton (p) Sam Jones (b) Billy Higgins (ds) 
July 16 & 17, 1975 at Vanguard Studios, NYC.

 

 

 

 

「Art Farmer - To Duke With Love (East Wind) 1975」デューク・エリントンに捧げたアルバム

1974年に日本フォノグラムを親会社とし、名プロデューサー・伊藤八十八さんが設立したジャズ・レーベル、イースト・ウィンド(East Wind)。

 

そのイースト・ウィンド(East Wind)がアート・ファーマーArt Farmer)をリーダーとし1975年03月05日にニューヨークで録音したのが、ビックバンド・ジャズ界の巨人デューク・エリントンDuke Ellington)に捧げたアルバム「To Duke With Love (East Wind EW-7012)」です。

 

「Art Farmer - To Duke With Love (East Wind) 1975」デューク・エリントンに捧げたアルバム

フリューゲルホルンの名手、アート・ファーマーArt Farmer)のバックを務めるのは、ピアノのシダー・ウォルトンCedar Walton)、ベースのサム・ジョーンズSam Jones)、ドラムスのビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)という顔ぶれ。

 

「Art Farmer - To Duke With Love (East Wind) 1975」デューク・エリントンに捧げたアルバム


デューク・エリントン楽団が演奏した楽曲を題材にした、渋めのバラッド集という体裁であるため、アルバム全編で比較的、落ち着いた雰囲気の演奏が続きます。


クリフォード・ブラウンClifford Brown)、クインシー・ジョーンズQuincy Jones)らとはライオネル・ハンプトンLionel Hampton)楽団の1953年のヨーロッパ・ツアー時、同じトランペット・セクションに座り、「若手ミュージシャンの反乱」と呼ばれた
ユーロッパのミュージシャン達との極秘録音にも参加しているアート・ファーマーArt Farmer)。

 

 

この1975年の録音ではフリューゲルホルンに専念し、シダー・ウォルトンCedar Walton)トリオの絶妙なバッキングに刺激をもらいながら、温かい音色でソロを紡いでおります。

 

全編同じ雰囲気のアルバムなので、曲の紹介はかいつまむだけに留めます。

 

1曲目は、デューク・エリントンのバラッドを演奏するなら、これっ、という感じでミュージシャン達もよく取り上げる名曲「In A Sentimental Mood」。

 


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冒頭からアート・ファーマーのフリューゲルホルンが鳴り響き、アート・ファーマーの渋めのソロのバックで、ピアノのシダー・ウォルトンがやや攻め気味のバッキングを弾いているのが面白いですね。

 

5曲目「Lush Life」はデューク・エリントンの片腕、ビリー・ストレイホーン(Billy Strayhorn)作曲の、これまた名バラッド。

 


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素材の良さを生かしつつ、自分流に仕上げていくといった感じで、渋めのアート・ファーマーを、シダー・ウォルトンの刺激的なバッキングで浮かび上がらせるといった風情の演奏が心地よいです。

 

6曲目の「Love You Madly」は、確かデューク・エリントンがよく口にする言葉を曲のタイトルにしているようですね。

 


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シダー・ウォルトンのファンキー風味のバッキングにのり、アート・ファーマーがフリューゲルホルンを吹き鳴らしております。

ビリー・ヒギンズの躍動的なドラム、それに寄り添うサム・ジョーンズのベースと、アルバムの最後に相応しい賑やかな演奏が続きます。

 

 

Art Farmer - To Duke With Love (1975)
East Wind EW-7012 / Universal Music UCCJ-9142 [2015.02.04]

 

side 1
01. In A Sentimental Mood (D. Ellington, I. Mills, M. Kurtz)  7:03
02. It Don't Mean A Thing (D. Ellington, I. Mills)  5:34
03. The Star Crossed Lovers (D. Ellington)  7:11

side 2
04. The Brown Skin Gal In The Calico Gown (D. Ellington)  7:26
05. Lush Life (B. Strayhorn)  6:23
06. Love You Madly (D. Ellington)  6:28


Art Farmer (flh) Cedar Walton (p) Sam Jones (b) Billy Higgins (ds) 
March 5, 1975 at Blue Rock Studio, NYC.