「Art Farmer - Yesterday's Thoughts (East Wind) 1975」日本制作らしい渋めの良盤
名プロデューサー・伊藤八十八さんが1974年に設立した日本制作のジャズ・レーベル、イースト・ウィンド(East Wind)。
1975年03月05日に録音された「To Duke With Love (East Wind EW-7012)」に続くアルバムが、1975年07月16日と17日の2日間に渡り録音された「Yesterday's Thoughts (East Wind EW-8025)」です。
前作と同じくフリューゲルホルンの名手、アート・ファーマー(Art Farmer)のバックを務めるのは、ピアノのシダー・ウォルトン(Cedar Walton)、ベースのサム・ジョーンズ(Sam Jones)、ドラムスのビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)という顔ぶれ。
2回目の録音だったためか、各自リラックスした演奏を聴かせてくれます。
1曲目の「What Are You Doing The Rest Of Your Life」は、ミッシェル・ルグラン(M. Legrand)の手による名バラッド。
アート・ファーマー、シダー・ウォルトン共に日本人の嗜好に合わせた、安定した堅実なソロを聴かせてくれます。
2曲目の「How Insensitive」は、アントニオ・カルロス・ジョビン(A.C. Jobim)作曲の有名なボサ・ノバ。
アップテンポで攻め気味な演奏であるものの、フリューゲルホルンの甘い音色が色香漂う豊饒な大人の演奏に仕上げております。
3曲目の「Namely You」は、ミディアム・テンポのゆったりとした演奏・・・
と思いきや、アート・ファーマーが適度なブローを混ぜて演奏を盛り上げます。
4曲目の「Alone Together」は、哀愁漂う演奏。
フリューゲルホルンの甘い音色で、ややハードなソロを吹くアート・ファーマーも面白いですね。
5曲目の「Yesterday's Thoughts」は、ベニー・ゴルソン (Benny Golson)作曲のアルバムのタイトル曲。ベニー・ゴルソンとアート・ファーマーは名ユニット、ジャズテットで共演しておりましたね。
「I Remember Clifford」に通じる切ない感じのメロディを、アート・ファーマーが
優雅に吹き綴っていきます。
6曲目の「Firm Roots」は、躍動感溢れるシダー・ウォルトン(Cedar Walton)の作品。
テーマ部をアート・ファーマーとシダー・ウォルトンがユニゾンで奏でた後、アート・ファーマーの軽快なソロが続きますが、その後に登場するシダー・ウォルトンの軽やかなソロもいいですね。
ソロ・リレーの最後にはビリー・ヒギンズ登場。多彩なリズム・パターンを披露します。
「Yesterday's Thoughts (East Wind EW-8025)」は、ジャズ喫茶の大音量のスピーカーで聴く事を想定した作りなんでしょうね。
そんな風に思える、日本制作らしい渋めの良盤です。
Art Farmer - Yesterday's Thoughts
East Wind EW-8025 / Universal Music UCCJ-9155 [2015.02.04]
side 1
01. What Are You Doing The Rest Of Your Life (A.&M. Bergman, M. Legrand) 9:50
02. How Insensitive (A.C. Jobim, V.De Moraes) 6:32
03. Namely You (G.D. Paul, J. Mercer) 5:54
side 2
04. Alone Together (H. Dietz / A. Schwartz) 9:28
05. Yesterday's Thoughts (Benny Golson) 7:59
06. Firm Roots (Cedar Walton) 4:58
Art Farmer (flh) Cedar Walton (p) Sam Jones (b) Billy Higgins (ds)
July 16 & 17, 1975 at Vanguard Studios, NYC.