加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

Thelonious Monk - Genius Of Modern Music Vol. 1 (Blue Note) 1956

ドイツ出身のアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)が、アメリカ人の出資者と共に創設したブルーノート・レコード(Blue Note Records)。

 

 

ルフレッド・ライオン(Alfred Lion)がプライベート録音するという形で第二次世界大戦(1939年09月01日~1945年09月02日)が始まる年でもある1939年01月06日、ブギウギ・ピアノの名手アルバート・アモンズとミード・ルクス・ルイスを最初にスタジオ録音。

 

録音に参加したミュージシャンや、ジャズ仲間の後押しもあり、1939年05月頃にブルーノート・レコード(Blue Note Records)が設立された様です。

 

レコード会社が設立された当初は、その時代人気の演奏スタイルであったブギウギ・ピアノや、ディキシーランド・ジャズを積極的に録音していたようですが。

 

スイング系のサックス奏者だったアイク・ケベック(Ike Quebec)の手引きで、新たなムーブメントであるバップ系のミュージシャンを次々に紹介された事で、1947年からバップ系のミュージシャン中心の録音にシフトしていきます。

 

最初はバップ系ヴォーカリスト、バブズ・ゴンザレサス(Babs Gonzales)の録音からスタート。

 

Weird Lullaby

Weird Lullaby

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次にバブズ・ゴンザレサス(Babs Gonzales)の録音にも参加した、タッド・ダメロンTadd Dameron)の録音が行われる訳ですが、そこには早逝の天才トランペッター、ファッツ・ナバロ(Fats Navarro)が参加しております。

 

 


前置きがかなり長くなってしまいましたが。

 

バップ系ミュージシャンの3人目として登場するのが、セロニアス・モンクThelonious Monk)です。

 

モンクを紹介され、その作曲能力や人柄にとことん魅了されたアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)は、一時期、公私の区別なくモンクと行動を共にしていた様です(笑)。

 

今回の「Genius Of Modern Music Vol. 1 (BLP-1510)」では、計6回行われた録音のうち、最初の4回のセッションから拾遺編纂されております。

 

アルバムを聴いてあらためて実感するのは、セロニアス・モンクThelonious Monk)というミュージシャンが書いた曲を堪能する為にはビックバンド、少なくともクインテット(5人)が必要だという事。

 

アンサンブルやセカンド・メロディを奏で、時折、モンクが装飾的な音を奏でるという編成か、いっその事、モンクのソロ・ピアノで演奏したものを聴くのが最良であるという個人的な感想に辿り着きます。

 

ピアノ・トリオであれば、アート・ブレイキー(Art Blakey)の様な元ピアニストであり、適度に刺激するバッキングが出来るドラマー。

 

カルテットやクインテット編成であれば、ミルト・ジャクソンMilt Jackson)の様にピアノも弾けて、パーカッシブな演奏を得意とするミュージシャンと組み合わせる事で、セロニアス・モンクThelonious Monk)から最良の演奏を引き出せる様にも感じます。

 

 

さて、録音データを眺めると、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)モンクに対する「のめり込み」がそうさせたのか、モンクの自作曲を全部録音する気満々な勢いで、立て続けに3回の録音が行われておりますね。

 

1947年10月の15日は6人編成、24日はピアノ・トリオ、11月21日は5人編成で録音が実施。


翌1948年07月02日の4回目の録音では、ミルト・ジャクソンMilt Jackson)を含む
4人編成で行われ、このアルバムには未収録ですが最初の3曲だけ、ケニー・ハゴッド(Kenny 'Pancho' Hagood)という男性ヴォーカリストの歌を中心に収録されております。

 

 

私が聴いたCDの中で最もクリアな音でセロニアス・モンクThelonious Monk)の演奏が聴けるのは、2001年に発売された「Thelonious Monk - Complete Genius Of Modern Music (RVG) [東芝EMI TOCJ-66119/6620] です。

 

Thelonious Monk - Complete Genius Of Modern Music (RVG)

 

その後、2枚に分散発売された「米RVG」盤も、同じリマスター音源を使っているかもしれません。

 

さてさて、「Genius Of Modern Music Vol. 1 (BLP-1510)」には1曲目の「'Round About Midnight」を筆頭に、「Ruby My Dear」、「Epistrophy」、「Well You Needn't」などモンク・クラッシックスとも呼ばれるセロニアス・モンクThelonious Monk)が書いた珠玉の名曲がてんこ盛りです。

 

1947年11月21日に行われた3回目のセッションは5人編成で演奏されております。

 

1曲目「'Round About Midnight」では、モンクがテーマを奏でホーン・セクションが装飾的なアンサンブルを吹く事で、モンクの頭の中で鳴ってる「音」が、有名なギル・エヴァンス(Gil Evans)が編曲し、マイルス・デイビスMiles Davis)が演奏した「'Round About Midnight」の解釈と「微妙に異なる」事を感じたりします・・・。

 

マイルスの演奏はトコトン、ハードボイルドなんですけど、モンクの演奏では、若干の余裕というかユーモア的なものを感じされるんですよね。

 

2曲目「Off Minor」、3曲目「Ruby My Dear」を含むセッションでは、アート・ブレイキー(Art Blakey)が加わるトリオ編成ですが、アート・ブレイキー(Art Blakey)の出しゃばりすぎない絶妙なバッキングにより、セロニアス・モンクThelonious Monk)のピアノが、ラージ・アンサンブル編成の時と同様に生き生きとしている様に感じます。

 

4曲目「I Mean You」、8曲目「Epistrophy」、9曲目「Misterioso」は、ヴィヴラフォンの名手、ミルト・ジャクソンMilt Jackson)を擁するカルテット編成。

 

4曲目「I Mean You」では、ミルト・ジャクソンMilt Jackson)のパーカッシブな演奏に刺激されたのか、セロニアス・モンクThelonious Monk)が奏でるピアノの装飾音が一段と高揚した風に聴こえてきます。

 

 

Thelonious Monk - Genius Of Modern Music Vol. 1 (Blue Note) 1956

Thelonious Monk - Genius Of Modern Music Vol. 1 +3 (1956)
Blue Note BLP-1510 / 東芝EMI TOCJ-66119-20 [2001.06.20] Blue Note Complete Series


side 1 (A)
01. 'Round About Midnight (Monk)  3:09
02. Off Minor (Monk)  2:59
03. Ruby My Dear (Monk)  3:07
04. I Mean You (Monk-Hawkins)  2:43
05. April In Paris (V.Duke)  3:19
06. In Walked Bud (Monk)  2:54

side 2 (B)
07. Thelonious (Monk)  2:57
08. Epistrophy (Monk-Clarke)  3:04
09. Misterioso (Monk)  3:19
10. Well You Needn't (Monk)  2:57
11. Introspection (Monk)  3:11
12. Humph (Monk)  2:52

[CD Bonus Tracks]
13. Ruby My Dear [alternate take] (Monk)  3:04
14. April In Paris [alternate take] (V.Duke)  2:40
15. Well You Needn't [alternate take] (Monk)  2:53


#07,12  ●1st Session [October 15, 1947 at WOR Studios, NYC.]
Idrees Suliman (tp) Danny Quebec West (as) Billy Smith (ts) 
Thelonious Monk (p) Eugene Ramey (b) Art Blakey (ds)

#02,03,05,10,11 & 13-15  ●2nd Session [October 24, 1947 at WOR Studios, NYC.]
Thelonious Monk (p) Eugene Ramey (b) Art Blakey (ds)

#01,06  ●3rd Session [November 21, 1947 at WOR Studios, NYC.]
George Taitt (tp) Edmund Gregory (as) Thelonious Monk (p) 
Robert Paige (b) Art Blakey (ds)

#04,08,09  ●4th Session [July 2, 1948 at Apex Studios, NYC.]
Milton Jackson (vib) Thelonious Monk (p) John Simmons (b) Shadow Wilson (ds) 

 

 

Blue Note 542 Thelonious Monk - Thelonious / Suburban Eyes
Blue Note 543 Thelonious Monk - 'Round About Midnight / Well You Needn't
Blue Note 547 Thelonious Monk - Evonce / Off Minor
Blue Note 548 Thelonious Monk - In Walked Bud / Epistrophy
Blue Note 549 Thelonious Monk - Ruby My Dear / Evidence

Blue Note 560 Thelonious Monk - Humph / Mysterioso


Blue Note 1564 Tadd Dameron - Symphonette / Thelonious Monk - I Mean You
Blue Note 1565 Thelonious Monk - Who Knows / Monk's Mood
Blue Note 1575 Thelonious Monk - April In Paris / Nice Work

Blue Note 45-1664 Thelonious Monk - Round Midnight / In Walked Bud