「Art Farmer And Donald Byrd – 2 Trumpets (Prestige) 1956」知性派トランペッター2人の競演
ドナルド・バード(Donald Byrd)とアート・ファーマー(Art Farmer)という、知性派トランペッターの競演を収録した1956年08月03日録音のアルバムが「2 Trumpets (Prestige PRLP-7062)」です。
録音データを眺めると「The Prestige All Stars」とある事から、プレステッジ(Prestige Records)お得意の、安易なジャム・セッションを収録したアルバムを想像してしまうのですが・・・。
裏ジャケットは「Discogs」からお借りしました。
聴いてみると知性派のトランペッター2人がリーダー扱いされているためか、案外、しっかりとした構成で聴き応えある演奏が繰り広げられております。
2人のトランペッターの他、アルトサックスのジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)、ピアノのバリー・ハリス(Barry Harris)、ベースのダグ・ワトキンス(Doug Watkins)、ドラムスのアート・テイラー(Art Taylor)という全員、リーダー級の面子が揃っておりますので、単によく知られた曲やブルースを吹き流すだけのイージーなセッションで終わる事もなかったんでしょうね。
1曲目「The Third」は、ドナルド・バード(Donald Byrd)が書いた佳曲で、2トランペットにアルトサックスが加わるホーン陣全員参加の7分半ほどの賑やかな演奏となっております。
私、以前から「The Third」という曲がお気に入りで、リー・モーガン(Lee Morgan)の演奏とかも聴いてはいるのですが、このバージョンが一番だと思います。
溌剌としたドナルド・バード(Donald Byrd)、濁り気味の音色で吹きまくるジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)、甘めの音色で聴かせるアート・ファーマー(Art Farmer)、端正なソロを聴かせるバリー・ハリス(Barry Harris)、ダグ・ワトキンス(Doug Watkins)のベースソロを経て、トランペッター2人の熱を帯びたソロ交換に突入していきます。
2曲目「Contour」は、ケニー・ドリュー(Kenny Drew)の、如何にもハード・バップ!といった風情の作品で、これまたホーン陣全員が参加する7分半程の演奏です。
先発はマイルドな音色のアート・ファーマー(Art Farmer)、続くジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)は、パーカー派らしい軽快なソロを聴かせてくれます。
続くドナルド・バード(Donald Byrd)とバリー・ハリス(Barry Harris)は、ハードバップド真ん中といった感じの端正なソロに終始。
最後はドラムスのアート・テイラー(Art Taylor)を交えたソロ交換で盛り上がります。
3曲目「When Your Lover Has Gone」は、アート・ファーマー(Art Farmer)のワンホーンによる5分程のバラッド風味な演奏。
アート・ファーマー(Art Farmer)の美しいトランペットの音色を堪能出来る1曲となっております。
4曲目「Dig」は、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の作品で、ホーン陣が全員参加した14分にも及ぶ熱演が繰り広げられております。
バリー・ハリス(Barry Harris)、ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)、ダグ・ワトキンス(Doug Watkins)、アート・テイラー(Art Taylor)と脇役全員にソロを回した後、6分過ぎ頃からアート・ファーマー(Art Farmer)登場。アップテンポでも優雅さを失わないソロさばきは流石です。
続くドナルド・バード(Donald Byrd)は、対照的に派手でやんちゃな感じなソロを展開。2回目のソロで登場するアート・ファーマー(Art Farmer)はだんだん、戦闘モードに(笑)。
以降、アート・ファーマー(Art Farmer)とドナルド・バード(Donald Byrd)が交互に登場。時々ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)のソロを挟みつつ、熱を帯びたトランペット・バトルが繰り広げられます。
ここまで吹きまくるアート・ファーマー(Art Farmer)も珍しく、ぼーっと聴いていると今、どっちがソロ吹いているのか分からなくなったりします(笑)。
録音の良さも相まって、初期のマイルスが吹き込んだバージョンより出来は良いかも。
5曲目「'Round Midnight」は、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)が書いた有名な曲であり、今度はドナルド・バード(Donald Byrd)のワンホーンによる6分半程のバラッド演奏です。
バラッド演奏におけるドナルド・バード(Donald Byrd)の綺麗なロングトーンを楽しめる1曲であります。
ドナルド・バード(Donald Byrd)は、バラッド演奏で真価を発揮するタイプだと認識しているのですが、この演奏もテンポをもう少し落とせば、さらに絶品な演奏になったかもしれませんね・・・。
Art Farmer And Donald Byrd – 2 Trumpets
Prestige PRLP-7062 / Victor Entertainment VICJ-2073 [1996.07.03]
Masters Of Jazz - The History Series – 75
side 1 (A)
01. The Third (Donald Byrd) 7:37
02. Contour (Kenny Drew) 7:35
03. When Your Lover Has Gone (Einar A. Swan) 5:10
side 2 (B)
04. Dig (Miles Davis) 14:26
05. 'Round Midnight (Hanighen, Williams, Monk) 6:39
Donald Byrd (tp #1,2,4,5) Art Farmer (tp #1-3,4) Jackie McLean (as #1,2,4)
Barry Harris (p) Doug Watkins (b) Art Taylor (ds)
August 3, 1956 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
イギリスのエスカイアというレコード会社から発売された「2 Trumpets(Esquire 32-072)」趣のある別ジャケットで発売された模様。
「Discogs」からお借りしました。
何となくブラウニー(クリフォード・ブラウン)似のトランペッターのイラストが、とってもイージーというか(笑)。
また「Donald Byrd - House Of Byrd (Prestige P-24066)」という2枚組レコードの1枚目は、「2 Trumpets (Prestige PRLP-7062)」のAB面を逆にした上に曲順変更して収録。
「Discogs」からお借りしました。
2枚目は1956年11月録音の「Phil Woods / Donald Byrd - The Young Bloods (Prestige PRLP-7080)」が収録されている様です。