「Pepper Adams - 10 To 4 At The 5 Spot (Riverside) 1958」メトロノームの音も聴こえるライブ
ニューヨークのライブ・スポット「ファイブ・スポット・カフェ(Five Spot Cafe)」は、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)、ケニー・バレル(Kenny Burrell)、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)など、有名ミュージシャン達の名ライブ盤を数多く録音している場所でもあります。
そんな名ライブ会場で1958年04月15日に録音されたのが、今回ご紹介する「Pepper Adams - 10 To 4 At The 5 Spot (Riverside RLP 12-265/RLP-1104)」です。
このライブは、バリトンサックス奏者であるペッパー・アダムス(Pepper Adams)名義となっておりますが、実質的にはトランペット奏者であるドナルド・バード(Donald Byrd)との双頭コンボですね。
ドナルド・バード(Donald Byrd)とペッパー・アダムス(Pepper Adams)のコンビは、ブルーノート・レコード(Blue Note Records)を中心に数多くの名演を残しておりますので、興味のある方は各種資料で検索してみて下さい。
さて、この「10 To 4 At The 5 Spot (Riverside RLP 12-265/RLP-1104)」ほど「実況ライブ盤」という称号が相応しいレコードもないかと思われます・・・。
まあ、ラフすぎるというか、(ある意味)臨場感溢れるライブ録音です(笑)。
まず、何度聴いても印象に残るのは、演奏途中に聴こえてくる「メトロノームの音」。
ベースソロなんかの途中にカッチ、カッチと聴こえてくると、やたら気になります(笑)。
おまけにラスト前には、演奏間のチューニング風景までアルバムに入ってたり・・・。
しかし、リズム隊には、豪華かつ珍しいメンバーが揃ってますね。
ピアノは、ファンキーな演奏で人気の「ボビー・ティモンズ(Bobby Timmons)」で、この年、ベニー・ゴルソンにスカウトされ、アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズに入団。半年後の1958年10月に、名盤「Moanin' (Blue Note BLP-4003)」を録音することにとなります。
ドラムスは、ジョーンズ3兄弟の末っ子「エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)」。
2年半後の1960年10月、アルバム「Coltrane Jazz (Atlantic LP 1354)」より、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)・バンドの録音に参加してますね。
ベースのダグ・ワトキンス(Doug Watkins)は、アート・ブレイキー(Art Blakey)らとの共演歴もあり、自身のリーダー作品を何枚か録音している名手です。
さて、アルバム「10 To 4 At The 5 Spot (Riverside RLP 12-265/RLP-1104)」の話に戻します。
1曲目は、ジョーンズ3兄弟の一人、サド・ジョーンズ(Thad Jones)作曲の「'Tis (theme)」。
エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)の煽るような重厚なドラムにのり、ドスの効いたバリトンが炸裂します。
2曲目は、バラッドの「You're My Thrill (Clare-Gorney) 」。
ペッパー・アダムス(Pepper Adams)がワンホーンで、抑制の効いたソロを聴かせてくれます。
3曲目は、ドナルド・バード(Donald Byrd)が作曲した「The Long Two/Four」。
エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)が叩き出すマーチ風と4ビートが交差するリズムにのり、各メンバーのファンキーなソロが続きます。
なお、この曲は後日「Off To The Races」と改題され、ブルーノート(Blue Note Records)でスタジオ録音されてますね。
以降、レコードだとB面に相当します。
4曲目は、ファンキーな「Hastings Street Bounce (trad / arr by P. Adams) 」。
ミディアム・テンポでファンキーなバッキングにのせ、軽快なソロが続きます。
ラストは、ドナルド・バード(Donald Byrd)作曲のバラッド「Yourna」。
ゴリゴリ吹きまくるアダムスに続き、バラッドの名手・バードのリリカルなソロが続きます。ティモンズのブロック・コード中心のソロもいいですね。
Pepper Adams - 10 To 4 At The 5 Spot (1958)
Riverside RLP 12-265/RLP-1104 / OJC-031
side 1 (A)
01. 'Tis (theme) (Thad Jones) 5:52
02. You're My Thrill (Clare-Gorney) 5:04
03. The Long Two/Four (Donald Byrd) 10:41
side 2 (B)
04. Hastings Street Bounce (trad / arr by P. Adams) 11:20
05. Band Tuning 0:18
06. Yourna (Donald Byrd) 6:39
Donald Byrd (tp) Pepper Adams (bs) Bobby Timmons (p) Doug Watkins (b) Elvin Jones (ds)
April 15, 1958 at The Five Spot Cafe, NYC.
さて、ドナルド・バード(Donald Byrd)が作曲した「The Long Two/Four」は「Off To The Races」と改題されてスタジオ録音が残っていると書きましたが・・・。
後に、エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)が録音した、エルヴィン自作の曲だと登録されている「Keiko's Birthday March」も、ほぼ同じ曲だったりします(笑)。
2022年11月に突然発売された、1967年07月の未発表ライブ録音「Elvin Jones - Revival: Live at Pookie's Pub (Blue Note B003576002)」でも、疑惑の「Keiko's Birthday March」を聴く事が出来ますので、興味のある方はお求め下さいませ。