加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Art Pepper - Winter Moon (Galaxy) 1980」甘くないストリングス・アルバム

エスト・コーストの天才サックス奏者アート・ペッパーArt Pepper)が最晩年にあたる1980年09月に録音した、ストリングス入りアルバム「Winter Moon (Galaxy GXY-5140)」。

 

「Art Pepper - Winter Moon (Galaxy) 1980」甘くないストリングス・アルバム


1960年代後半に麻薬常習癖を克服するため「シナノン(Synanon)」という治療施設で過ごした後、1970年代前半に音楽シーンに復活したアート・ペッパーArt Pepper)は、1967年07月に急逝したジョン・コルトレーンJohn Coltrane)の多大な影響を受け、フリースタイルに接近した情熱的に吹きまくる演奏スタイルにシフトしており、アルバム「Winter Moon (Galaxy GXY-5140)」でも、そのやんちゃ(笑)な演奏を聴かせてくれます。

 


蛇足ですが、いにしえの日本のジャズ誌に投稿する批評家の間では、ストリング入りアルバムは「紐付き」などと揶揄され、商業主義に傾倒した非芸術的で格下なアルバムとして扱われていた様で、「コンガ入り」アルバム同様、継子(ままこ)扱いされていたためか、日本盤での再発もなかなか、ままならない状況であった様に思われます。

 


偏った批評家達の発言とはいえ、日本盤の再発には多大な影響を及ぼす訳で、有名な処では、吉祥寺のジャズ喫茶「メグ(Meg)」のオーナーであった寺島靖国氏とかが居りまして・・・。

 

 

一部の日本のジャズレーベルでは、寺島靖国好みの貧弱なステレオ装置では音が歪むほどベースの重低音がたっぷり入ったCDが量産されていたりしますが、これは良い事なのか時々、思案にふける事があったりします(笑)。

 

 

さて、戯言はこれ位にして、アート・ペッパーArt Pepper)のアルバム「Winter Moon (Galaxy GXY-5140)」の話に戻ります。

 

アルトサックスとクラリネットを持ち替えるアート・ペッパーArt Pepper)以外の
演奏メンバーは、ピアノのスタンリー・カウエル(Stanley Cowell)、ギターのハワード・ロバーツ(Howard Roberts)、ベースのセシル・マクビーCecil McBee)、ドラムスのカール・バーネット(Carl Burnett)です。

 

ストリングセクションの指揮と編曲には、ビル・ホルマン(Bill Holman)とジミー・ボンド(Jimmy Bond)という、日本のビックバンド演奏者にはお馴染みな方々が名を連ねておりますね。

 

 

1曲目「Our Song」は、アート・ペッパーArt Pepper)の自作曲。哀愁漂うテーマ部の途中から、ストリングスの重厚で華麗なアンサンブルが聴こえてきます。

 


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アート・ペッパーArt Pepper)のフリーキーで饒舌なソロのバックにストリングスが被さる事で、フリーキーなソロの「毒気」が程よく抜けた感じがしますね。


2曲目「Here's That Rainy Day」は、比較的穏やかでゆったりとした演奏。

 

 

3曲目「That's Love」はアート・ペッパーArt Pepper)の自作曲で、ややファンキー風味強めの1曲。

 

 

表題曲でもある4曲目「Winter Moon」は、50年代の端正で儚げな演奏を思い起こさせる素晴らしい演奏。微かに聴こえてくるストリングスがまた、いいですね。

 


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5曲目「When The Sun Comes Out」は、ややスロー気味で演奏される1曲。


6曲目「Blues In The Night」では、アート・ペッパーArt Pepper)はアルトサックスを脇に置き、クラリネットに持ち替えてますね。

 


7曲目「The Prisonner (Love Theme From The Eyes Of Laura Mars)」は、1978年に公開されたアメリカの猟奇サスペンス映画「アイズ(The Eyes Of Laura Mars)」のためにバーブラ・ストライサンドBarbra Streisand)が歌いヒットした曲の様です。

 


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哀愁漂うギターのイントロを経て、まずはアート・ペッパーArt Pepper)とストリングスが聴こえてきますが、リズム隊が加わる辺りで演奏の印象が変わり、情熱的な演奏
となっていきます。

 

アート・ペッパーArt Pepper)のソロは前半に過剰なほどの抑制を利かせ、後半で饒舌かつフリーキーに畳みかけており、アルバム一番の出来ではないかと思います。

 

 

Art Pepper - Winter Moon +3 (1980)
Galaxy GXY-5140/Fantasy OJCCD-677-2 / Universal Music UCCO-90211 [2013.04.17]

 

side 1 (A)
01. Our Song (Art Pepper)  5:29
02. Here's That Rainy Day (Van Heusen-Burke)  5:18
03. That's Love (Art Pepper)  4:50
04. Winter Moon (Hoagy Carmichael-Harold Adamson)  5:30

side 2 (B)
05. When The Sun Comes Out (Arlen, Koehler)  5:47
06. Blues In The Night (Arlen, Mercer)  6:59
07. The Prisonner (Love Theme From The Eyes Of Laura Mars) (Desautels, Lawrence)  6:45

 

CD Bonus Tracks
08. Our Song (alternate take) (Art Pepper)  5:30
09. The Prisoner (alternate take) (Desautels, Lawrence)  4:53
10. Ol' Man River (Kern, Hammerstein)  6:12


Art Pepper(as, cl) Stanley Cowell(p) Howard Roberts(g) Cecil McBee(b) Carl Burnett(ds) 
Bill Holman(arr,cond #1,4-6,8) Jimmy Bond(arr,cond #2,3,7,9,10) Nate Rubin(concert master) 

 

John Tenney(vln) Greg Mazmanian(vln) Patrice Anderson(vln) Clifton Foster(vln) 
Dan Smiley(vln) Audrey Desilva(vln) Elizabeth Gibson or Stephen Gihl(vln) 
Emily Van Valkenburgh(vln) Sharon O'Connor(vlc) Mary Ann Meredith or Terry Adams(vlc

 

September 3 & 4,1980 at Fantasy Studios, Berkeley, CA.

 

 

アルバム「Winter Moon (Galaxy GXY-5140)」は、アート・ペッパーArt Pepper)最晩年の作品であり、「ギャラクシー(Galaxy)」という日本では馴染の薄いレコード会社から発売されたものなので、あまり話題にものぼらないし、再発頻度も低かったりしますが。

 

一度聴いたら、そのまますぐ見えるCD棚に置いてしまいたくなる、魅力的なアルバムだったりします。因みに私は数年位CD探して、ようやく入手しました(笑)。

 

ついでに、1980年に録音されたアルバム群から、1枚だけ・・・。

 

ワン・セプテンバー・アフターヌーン+3

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