トランペット界の吟遊詩人、アート・ファーマー(Art Farmer)。
晩年には楽器メーカーのモネット(Monette)が作るトランペットとフリューゲルホルンを掛け合わせた「フランペット(Flumpet)」なるハイブリット楽器で演奏しておりましたね。
雑誌で「フランペット(Flumpet)」の情報を知り、生演奏で聴いて見たいなーと思ってた直後に、ご本人が逝去された事を思い出しました。
さて、佐藤允彦さんのアグレッシブなピアノ演奏と流暢なストリングスをバックに、アート・ファーマー(Art Farmer)がフリューゲル・ホルンで超有名曲を軽やかに演奏したアルバムが「Maiden Voyage (Interface YF-7073)」です。
ここではフリューゲル・ホルンを演奏するアート・ファーマー(Art Farmer)の他、ストリングスの編曲・指揮に加えピアノとエレクトリック・ピアノを演奏する佐藤允彦、ベースがロン・カーター(Ron Carter)、ドラムスがジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette)というリズム隊に、バックアンサンブルを華麗に彩るストリングス隊が加わります。
ジャズ・ジャイアントが書いた超有名曲がずらっと並んでおりますが、曲を眺めると、コンボでの演奏は勿論、ビックバンド用に編曲され演奏されている曲が多い事に気が付きます。
ここまで超有名曲が並ぶと、どれを紹介しようかな・・・となりますが、ストリングスものなので何曲かかいつまんでご紹介しときます。
1曲目の「Nica's Dream」は、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)が書いた代表的な1曲で、各国のビックバンドでも様々な編曲で演奏されておりますね。
ジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette)とロン・カーター(Ron Carter)が刻む、やや突っ込み気味になリズムにのり、ストリングス・セクションがビックバンドのホーン隊の様な重厚なアンサンブルを、ストリングスならではの流暢な感じで聴かせてくれます。
アグレッシブに煽るバックに合わせているのか、吟遊詩人の優雅さをかなぐり捨てたアート・ファーマー(Art Farmer)が、かなり盛大なブローを聴かせてくれます。
この曲お馴染みの「セカンド・リフ」を、流暢なストリングスが奏でる辺りが最大の盛り上がり部分だと思います(笑)。
3曲目の「Blue Bossa」はケニー・ドーハムの書いたボサノヴァ・タッチの名曲であり、日本各地で開催されるジャム・セッションでも頻繁に演奏される1曲です。
佐藤允彦さんの尖がった感じのピアノとエレビが、何とも心地よいです。
6曲目で表題曲の「処女航海(Maiden Voyage)」は、とある都合もあってか、頻繁に来日するハービー・ハンコック(Herbie Hancock)の大ヒット作。
元々、海をテーマにした壮大なコンセプト・アルバムの表題曲だけあり、流暢なストリングスの響きがぴったりハマりますね。
アート・ファーマー(Art Farmer)も、比較的ゆったりとしたソロを聴かせてくれます。
最後の方に出て来る、ジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette)のドラム・ソロも中々、オツな感じでございます。
7曲目の「Naima」は、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の書いた名バラッドですが、テーマ部では、そこそこ大人しくしているものの、途中からかなりアグレッシブな演奏に移行していきます(笑)。
演奏が始まって約3分頃から聴こえるストリングス・セクションのアグレッシブな演奏からリズム隊もテンポ・アップ。
アート・ファーマー(Art Farmer)もテーマ部の吟遊詩人ぶりをかなぐり捨てたアグレッシブなソロを聴かせてくれます。
後半部の壮大かつ流暢な盛り上がり方は、佐藤允彦さんの編曲スゲー!と、素直に思ってしまいますね。
Art Farmer - Maiden Voyage
Interface YF-7073 / Nippon Columbia/J-Room COCB-53476 [2005.12.21]
01. Nica's Dream (Horace Silver) 5:55
02. Ruby My Dear (Thelonious Monk) 4:47
03. Blue Bossa (Kenny Dorham) 6:27
04. Goodbye Pork Pie Hat (Charles Mingus) 5:36
05. Blue In Green (Bill Evans, Miles Davis) 6:09
06. Maiden Voyage (Herbie Hancock) 6:09
07. Naima (John Coltrane) 6:09
Arranged & Conducted by Masahiko Satoh
Art Farmer (flh) Masahiko Satoh (p, el-p) Ron Carter (b) Jack DeJohnette (ds)
David Nadien (concertmaster, violin)
Barry Finclair, Charles Libove, Elena Barere, Jan Mullen, John Pintavalle, Lewis Eley, Masako Yanagita, Regis Landiorio, Richard Sortomme (violin)
Charles McCracken, Jonathan Abramowitz (cello)
Al Brown, Emanuel Vardi (viola) John Beal (strings bass)
Recorded and mixed at A&R Studios, New York City, April, 1983.