アート・ファーマー(Art Farmer)が、ライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)楽団で一緒に演奏したクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)とジジ・グライス(Gigi Gryce)を迎え、4管編成のアンサンブルをバックに演奏した快作が、このアルバム「The Art Farmer Septet (Prestige PRLP-7031)」です。
曲により程よいラテン風味が混ぜてあったり、重厚なアンサンブルを聴かせたかと思えば、ストレートなハードバップ路線で攻めたりと、アート・ファーマー(Art Farmer)の柔軟な対応能力を、この1枚で堪能出来る様になっております。
さて、アルバム「The Art Farmer Septet (Prestige PRLP-7031)」は元々、10インチレコード「Work Of Art (Prestige prLP-162)」として発売された「Work Of Art」、「The Little Bandmaster」、「Mau Mau」、「Up In Quincy's Room」の4曲に、同じ2つのセッションから計4曲ほど追加した上で、12インチ・レコードとして再編集したもの。
1960年代に入ると「Work Of Art (New Jazz NJLP-8278)」と、アルバム・タイトルを当初の10インチレコードのものに戻し、ジャケットを変更した上で再発してますね。
タイトルが10インチレコードと同じなのに、「The Art Farmer Septet (Prestige PRLP-7031)」と同じ曲順で発売しているんで、ネット検索時に注意が必要というか、私が情報確認の際に苦労しました。
さて、クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)を含むライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)楽団で、1953年秋ごろヨーロッパ各地を巡業した際、後に「(バップ世代)若手ミュージシャン達の反乱」と書かれる、ハンプトン親分に内緒で敢行されたスタジオ録音を繰り返した同志でもある知性派ミュージシャン二人から編曲と曲提供を得て、アート・ファーマー(Art Farmer)も、ゴキゲンにスイングしております。
前述の通り、いずれの曲もトランペット、トロンボーン、テナー・サックス、バリトン・サックスという構成の4管編成で、バックはピアノ・トリオという感じ。
この録音には、作編曲を提供したアルトサックスのジジ・グライス(Gigi Gryce)が、不参加というのも、不思議に思ってしまいますが、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)がピアノで参加していたりする辺りで、何らかの諸事情あった事は感じとれます。
という事で、「Mau Mau」を筆頭とした凝った編曲を聴かせる1~4曲目のピアニストは何と、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)です。
まあ、ライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)楽団のヨーロッパ巡業でも、ジョージ・ウォーリントン(George Wallington)が人種差別問題の噂から楽団を去った後、臨時でピアノを弾いていたみたいですからねえ・・・。
一転して躍動感溢れる演奏が続く5~8曲目は、独自のファンキー・スタイルで一躍人気者となったホレス・シルヴァー(Horace Silver)がピアノを弾いております。
1~3曲目は、アート・ファーマー(Art Farmer)とクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)の共作で、編曲は勿論、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)の手によるものです。
1曲目「Mau Mau」は、軽快なラテン・フレーヴァーがDJ諸氏の琴線に触れるのか近年、サンプリング素材として使用されたり、そのままカヴァーされたりしておりますね・・・。
盛り上がるラテン系のリズムにのり、アート・ファーマー(Art Farmer)も軽快なブローを聴かせてくれます。
2曲目「Work Of Art」は、如何にもクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)といった風情の、軽やかで洗練されたアンサンブルが素敵な1曲。
アート・ファーマー(Art Farmer)の暖かみあり優しい音色のソロに、アンサンブルが絶妙に絡むあたりがこの曲の一番の聴き処ですかねえ・・・。
3曲目「The Little Bandmaster」は、ややアップテンポの曲で、最初に登場するジミー・クリーヴランド(Jimmy Cleveland)のトロンボーン・ソロが良いですね。
お次に登場するテナー・サックスのクリフォード・ソロモン(Clifford Solomon)、バリトン・サックスのオスカー・エステル(Oscar Estell)の洒脱なソロに続き、アート・ファーマー(Art Farmer)の短いながらも聴かせ処の多いソロが素敵です。
4~5曲目は、ジジ・グライス(Gigi Gryce)の作編曲で、4曲目「Up In Quincy's Room」は、わずかな哀愁漂う感じが如何にもハード・バップといった曲でございます。
5曲目「Wildwood」は、明るく軽快な方面のハード・バップ。
アート・ファーマー(Art Farmer)は、アップテンポで若干ブルージーなソロを聴かせ、テナー・サックス、トロンボーンと続くソロに上手く繋げます・・・。
6~8曲目は、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)の作編曲。
6曲目「Evening In Paris」は、冒頭からホレス・シルヴァー(Horace Silver)が存在感抜群で、ブルージーというか哀愁漂う曲の陰影を、絶妙なバッキングでさらに濃く、染め上げていきます・・・。
7曲目「Elephant Walk」も、ファンキーなホレス・シルヴァー(Horace Silver)が弾くイントロとソロが印象的な1曲。
アート・ファーマー(Art Farmer)は、重厚なアンサンブルの合間で軽快なソロを聴かせてくれます。
8曲目「Tiajuana」も、あからさまにラテン味溢れる1曲。
アート・テイラー(Art Taylor)のツボを心得たラテン風味のドラム・パターンに、バリトンの低音を効果的に効かせたアンサンブルが絡み、その合間を縫って各人のソロが紡がれていきます。
OJC(Original Jazz Classic)盤には、追加曲として、しっとりとしたバラッド演奏の「When Your Lover Has Gone」が、何故かアルバム最後の9曲目に収録されております。
この曲「When Your Lover Has Gone」は1956年に録音されたアルバム「Art Farmer And Donald Byrd – 2 Trumpets (Prestige PRLP-7062)」に収録された1曲で、アート・ファーマー(Art Farmer)のワンホーンによる心にしみる演奏が聴けますが、何でこのアルバムの追加曲として採用したのか一度、編纂者に聞いてみたいですね(笑)。
Art Farmer - The Art Farmer Septet
Plays The Arrangements And Compositions Of Gigi Gryce And Quincy Jones
Prestige PRLP-7031 / New Jazz NJLP-8278 / Fantasy OJCCD-054-2 [1993]
side 1 (A)
01. Mau Mau (Art Farmer, Quincy Jones) 5:15
02. Work Of Art (Art Farmer, Quincy Jones) 5:46
03. The Little Bandmaster (Art Farmer, Quincy Jones) 4:06
side 2 (B)
04. Up In Quincy's Room (Gigi Gryce) 4:00
05. Wildwood (Gigi Gryce) 2:55
06. Evening In Paris (Quincy Jones) 2:41
07. Elephant Walk (Quincy Jones) 3:25
08. Tiajuana (Quincy Jones) 4:52
CD Bonus Track
09. When Your Lover Has Gone (Einar Aaron Swan) 5:10
#01-04 July 2, 1953 in NYC.
Art Farmer (tp) Jimmy Cleveland (tb) Clifford Solomon (ts) Oscar Estell (bs)
Quincy Jones (p) Monk Montgomery (b) Sonny Johnson (ds)
#05-08 June 7, 1954 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Art Farmer (tp) Jimmy Cleveland (tb) Charlie Rouse (ts) Danny Bank (bs)
Horace Silver (p) Percy Heath (b) Arthur Taylor (ds)
#09 August 3, 1956 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Art Farmer (tp) Barry Harris (p) Doug Watkins (b) Art Taylor (ds)
アート・ファーマー(Art Farmer)関連、他のアルバム紹介記事も貼っておきます。