アート・ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズが、全盛期のメンバーであるフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)をトランペット及び音楽監督として迎え、オランダで録音されたアルバムが今回の「70 Years Anniversary Special Edition Vol.1」です。
プロデューサーが日本人らしい事から推測するに元々、日本のアルファ・レコードが企画したアルバムだったようですが。
アルファ・レコード自体が現在、SONYに買収されている関係か、このアルバムはタイトルとイマイチなジャケットに差し替えられた「Freddie Hubbard, Art Blakey – Feel The Wind (Timeless SJP-307)」として、日本でも再発されている模様。
今のジャケット、もう少し洗練されてくれたらなあ・・・と思わずには(笑)。
このアルバム紹介は、新発田市歴史図書館から借りてきたアナログ・レコードをPCMレコーダーで録音し、「24bit/48kHz」で自家リマスタリングした音源を聴きつつ、書いております。

Art Blakey and The Jazz Messengers – 70 Years Anniversary Special Edition Vol.1 (LP)
Timeless SJP-307 / Alfa Records 28R1-26 [1989]

Timeless SJP-307 Freddie Hubbard, Art Blakey – Feel The Wind
side 1
01. Arietis (Freddie Hubbard) 5:24
02. Up Jumped Spring (Freddie Hubbard) 5:11
03. Embraceable You (George Gershwin) 9:12
side 2
04. Off Minor (Thelonious Monk) 6:14
05. Feel The Wind (Freddie Hubbard) 9:50
06. Big Foot (Charlie Parker) 4:39
Freddie Hubbard (tp) Javon Jackson (ts) Benny Green (p)
Leon Dorsey (b) Art Blakey (ds)
October 31 - November 1988 at Studio44, Monster, Holland.
Producer – Makoto Kimata
このアルバム「70 Years Anniversary Special Edition Vol.1」を簡単に説明すると、リーダーであるアート・ブレイキー(Art Blakey)や他のメンバーを脇に追いやり、音楽監督であるフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)だけが、豪快にひたすら吹きまくる、といった風情のアルバムであります(笑)。
なので、人によって「好み」がかなり分かれるであろうと思われます。
01曲目「Arietis」は、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)作曲の作品であり、1961年08月21日に録音された「Ready For Freddie (Blue Note BST-8485)」の1曲目に収録された曲の再演ですね。なお、アルバム「Ready For Freddie」に関しては後日、ご紹介する予定。
御大アート・ブレイキー(Art Blakey)渾身のドラムスと、当時の若手ピアニストであったベニー・グリーン(Benny Green)のピチピチしたピアノ・バッキングに導かれたテーマ・メロディは、まさに往年のジャズ・メッセンジャーズ・サウンドそのもの。
ベテランであるフレディ・ハバードによるツボを心得たトランペット・ソロをたっぷりと聴かされた後、当時売り出し中だったであろう若手2人によるソロ・リレーが続きます。
ジャボン・ジャクソン(Javon Jackson)、ベニー・グリーン(Benny Green)共に、御大の繊細で的確なドラムによる煽りを受けつつフレッシュなソロを聴かせてくれております。
02曲目「Up Jumped Spring」は、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)書いた作品の中で、一番知れている曲だと思われます。
演奏は御大アート・ブレイキーの短いドラム・ソロの後、フレディ・ハバード単独でお馴染みの3拍子で書かれたメロディが奏でられ、リラックスした雰囲気の中、フレディ・ハバードの豪快なトランペット・ソロが吹き鳴らされていきます。続くベニー・グリーンの弾くピアノ・ソロも中々よろしいですね。
03曲目「Embraceable You」は、有名なジャズ・スタンダード。2曲目ではお休みだったテナー・サックスのジャボン・ジャクソンがイントロ部分を担当し、テーマ部ではフレディ・ハバードが単独で余裕たっぷりにテーマ・メロディを奏でております。
ソロ1番目のフレディ・ハバードは、高音と早いパッセージを随所に混ぜた華麗なるソロを聴かせ、2番手のベニー・グリーンは時折、ボビー・ティモンズ(Bobby Timmons)を彷彿とさせるファンキーなソロで演奏を盛り上げます。演奏の最後は、フレディ・ハバードの豪快な無伴奏カデンツァで〆。
04曲目「Off Minor」は、ジャズ界の巨匠の一人であるピアニスト、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)の作品。
過去のモンクとの共演で、的確なバッキングを聴かせてくれた御大アート・ブレイキーによる奔放なドラム・ソロの後、フロント2管によるやや摩訶不思議な、これぞモンクという感じのテーマが奏でられます。
ソロ1番手のフレディ・ハバードは、ややフリー寄りのソロ・フレーズを繰り出して演奏を盛り上げ、ソロ2番手のジャボン・ジャクソンは、ややモンク・バンドで活躍したテナーサックス奏者、チャーリー・ラウズ(Charlie Rouse)を意識したソロを聴かせてくれてます。
05曲目「Feel The Wind」は、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)作曲のファンキーなテーマに、絶妙なモード風味が混ぜ合わされた作品であり、ソロにおけるフレディ・ハバードのブローがいつも以上に熱いです(笑)。
06曲目「Big Foot」は、ジャズ界の巨匠の一人でビバップの創始者としても有名な、
サックス奏者チャーリー・パーカー(Charlie Parker)の作品。
モード風味な「Feel The Wind」のあとに、もろビバップ調の「Big Foot」が配置されると、たとえ同じようなソロ・フレーズをブローされても、やけに新鮮に聴こえるのが不思議(笑)。
最後にフロント2人と、御大アート・ブレイキーによるソロ交換を挟み、演奏は幕を閉じていくのでありました・・・。

