ブルーノート(Blue Note Records)の稼ぎ頭の一人、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)が、当時のレギュラー・クインテットを率いて1958年01月13日に録音したアルバムが「Further Explorations (Blue Note BLP-1589)」。日本語に訳すと「未来への探求」という感じなのかな。
リーダーであるホレス・シルヴァー(Horace Silver)の他、フロントにはトランペットのアート・ファーマー(Art Farmer)、テナー・サックスのクリフフォード(クリフ)・ジョーダン(Clifford Jordan)、ベースがテディー・コックス(Teddy Kotick)、ドラムスがルイス・ヘイズ(Louis Hayes)という編成です。
アルバムには全6曲が収録されておりますが、録音データを眺めると、
1. tk.3 The Outlaw
2. tk.9 Melancholy Mood
3. tk.10 Moonrays
4. tk.12 Ill Wind
5. tk.16 Pyramid
6. tk.21 Safari
という感じで、レギュラー・クインテットでの録音にも関わらず、録音に少し手こずっている印象を受けます。
「未来への探求 (Further Explorations)」というアルバム・タイトル通り、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)が「従来のハード・バップとは違った演奏」を模索していたのか、曲毎に色々な「仕掛け」が施してある様で、ファンキーな度合い強めとはいえ、単なるファンキージャズとは、ちょっと違うぞ、という感じが伺えます。
1曲目「The Outlaw」は、如何にもホレス・シルヴァー(Horace Silver)・クインテットという風情のイントロで始まりますが、演奏中に細かい仕掛けが施されており、軽快な演奏でありながら、リズム・パターンなどにも時々、意識が向いてしまいますね。
なおこの曲は、シングル「Horace Silver - Safari / The Outlaw (Blue Note 45-1705)」としても発売されている模様。
クリフフォード(クリフ)・ジョーダン(Clifford Jordan)のテナー・サックス・ソロ、アート・ファーマー(Art Farmer)のトランペット・ソロ、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)のピアノ・ソロと続き、セカンド・テーマというかヴァンプを挟んで後テーマに戻っていきますが、しかし、どのメンバーのソロも好調ですね。
2曲目「Melancholy Mood」は、耽美的な雰囲気でピアノ・トリオによる演奏。
クインテット編成を固定してしまった関係か、中々聴けないホレス・シルヴァー(Horace Silver)トリオによるバラッド演奏がお楽しみいただけます。
3曲目「Pyramid」はテーマ部前半のアンサンブルと、リズム隊の動きが微妙にズレた感じが摩訶不思議感を醸し出す1曲。
滋味がありつつも哀愁漂うソロを聴かせてくれるアート・ファーマー(Art Farmer)、ややソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)風味を感じさせるソロを聴かせるクリフフォード(クリフ)・ジョーダン(Clifford Jordan)、哀愁味溢れるファンキーなソロを聴かせるホレス・シルヴァー(Horace Silver)と、素晴らしいソロ・リレーが続きます。
4曲目「月光(Moon Rays)」は、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)にしては、穏やかすぎる感じがする1曲。
テーマ部で大人しすぎたためか、ホーン陣のブローを一発挟んでソロに突入していきます。
抑え気味にソロを展開するクリフフォード(クリフ)・ジョーダン(Clifford Jordan)、持ち味の温かみある音色でソロを綴るアート・ファーマー(Art Farmer)、タメを効かせたフレーズから徐々に高速フレーズを繰り出すホレス・シルヴァー(Horace Silver)と、聴き応えあるソロが続いていきます。
ホレスのソロに続いて登場するセカンド・リフは、前テーマとは異なり躍動感溢れており、こちらも如何にもホレス・シルヴァー・クインテットといった風情でございます。
5曲目「Safari」は、ドラムスに煽られつつ超アップテンポで演奏される超高速なテーマ部を聴いていると、自分では演奏したくないレベルだよなあ・・・と思ったりします(笑)。なお、前述の通り、シングル(Blue Note 45-1705)としても発売されている模様。
もろソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)風なソロを展開するクリフフォード(クリフ)・ジョーダン(Clifford Jordan)、クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)と同じビックバンドに在籍していた事を思い出させるアート・ファーマー(Art Farmer)の豪快なソロ、フロント二人に煽られたのか、こちらも豪快なソロを聴かせてくれるホレス・シルヴァー(Horace Silver)、最後にようやく登場するルイス・ヘイズ(Louis Hayes)のドラム・ソロも快調そのもの。
6曲目「Ill Wind」は、唯一のジャズ・スタンダード。
これ位の雰囲気と演奏スピードだと、アート・ファーマー(Art Farmer)が一番ぴったりハマりますね。
続く、クリフフォード(クリフ)・ジョーダン(Clifford Jordan)、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)は、安定したソロを聴かせてくれております。
ホレスのソロと途中でテンポが倍になったり、アート・ファーマー(Art Farmer)とクリフフォード(クリフ)・ジョーダン(Clifford Jordan)のちょっとしたやりとりが挟まれたりと、ホレスも色々と実験(探求)を繰り返していたんだなあ・・・という事が伺える1枚であります。
Horace Silver - Further Explorations (RVG)
Blue Note BLP-1589 / 東芝EMI TOCJ-9175 [2000.01.26] 24 Bit By RVG
side 1 (A)
01. The Outlaw (Horace Silver) 6:09
02. Melancholy Mood (Horace Silver) 6:36
03. Pyramid (Horace Silver) 6:40
side 2 (A)
04. Moon Rays (Horace Silver) 10:57
05. Safari (Horace Silver) 5:12
06. Ill Wind (Arlen, Koehler) 6:55
Art Farmer (tp #1,3-6) Clifford Jordan (ts #1,3-6)
Horace Silver (p) Teddy Kotick (b) Louis Hayes (ds)
January 13, 1958 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
ハード・バップ・ジャズからファンキー・ジャズに移行する時期に、ホレス以上にアカデミックに「実験」を繰り返していたのがトランペットのドナルド・バード(Donald Byrd)と、アルト・サックスのジジ・グライス(Gigi Gryce)による双頭コンボ、その名もずばり「Jazz Lab」だったりする訳で・・・。
実は私、数ケ月前に「Jazz Lab」のBOXセットをようやく入手してまして、アルバム紹介してみようかと聴いてはいるのですが、内容が高尚すぎる為か、何度聴いても頭に内容が入らず、文章も浮かばす・・・という感じで、四苦八苦している最中でございます(笑)。