加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Thelonious Monk - Brilliant Corners (Riverside) 1956」超個性派ピアニスト、モンクのユーモア溢れる好盤

ジャズ界の巨人というか、天才の一人、超個性派ピアニストのセロニアス・モンクThelonious Monk)。

 

「Thelonious Monk - Brilliant Corners (Riverside) 1956」セロニアス・モンクのユーモア溢れる好盤

1956年の、10月と12月の三回に渡り録音された「Brilliant Corners (Riverside RLP12-226)」は、セロニアス・モンクThelonious Monk)がリヴァーサイド(Riverside Records)に残したアルバムの中でも、モンクが持つユーモラスな部分を特に表現出来たアルバムだと思います。

 


1956年10月09日と15日に行われたセッションの参加メンバーは、奔放な演奏を得意とするテナーサックスの巨人、ソニー・ロリンズSonny Rollins)を筆頭に、アルトサックスのアーニー・ヘンリー(Ernie Henry)、ベースのオスカー・ペティフォード(Oscar Pettiford)、ドラムスのマックス・ローチMax Roach)という顔ぶれ。

1956年10月09日に「Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are」と「Pannonica」が録音され、10月15日には表題曲「Brilliant Corners」と、ソロで「I Surrender, Dear」が録音されております。

 

1956年12月07日に行われたセッションで録音された「Bemsha Swing」は、トランペットのクラーク・テリー(Clark Terry)、テナーサックスのソニー・ロリンズSonny Rollins)、ベースのポール・チェンバースPaul Chambers)、ドラムスのマックス・ローチMax Roach)という10月のセッションとは若干メンバーが入れ替わっております。

 


1曲目の「Brilliant Corners」、抽象画的な摩訶不思議なテーマを経て、各人が魅力的なソロを展開していきます。

 


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特にソニー・ロリンズのユーモア溢れるソロと、マックス・ローチの気合の入ったドラムが素敵です。

 

しかし1956年06月に、二人と競演していたクリフォード・ブラウン(Clliford Brown)が交通事故死しているんですよね。

演奏(この録音は10月)を聴く限り、二人とも死のショックから立ち直っているようです。

 

2曲目の「Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are」も、おとぼけ気味のテーマから、アーニー・ヘンリー、セロニアス・モンクソニー・ロリンズ、オスカー・ペティフォード、マックス・ローチと全員のソロを聴く事が出来ます。

中でも、セロニアス・モンクソニー・ロリンズのソロが素晴らしいと思います。

 


3曲目の「Pannonica」では、セロニアス・モンクは可愛らしい音色の親指ピアノ(多分)を弾き、テーマに続いては、ソニー・ロリンズが豪快なソロを演奏します。
いやー、あらためて聴き直すと、ソニー・ロリンズの音色にはモンクのピアノがぴったりですねー。

 


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2番手のモンク、親指ピアノ(しつこいようだが、多分)中心にソロを演奏しますので、摩訶不思議感が強くなっております。

 


4曲目の「I Surrender, Dear」は、私の大好きなコロンビア(CBS)盤「Solo Monk」でも聴けるソロでの演奏です。
この朴訥としたモンクのソロ演奏を聴いていると、何故だかほっとします。

 

 

5曲目、〆の「Bemsha Swing」は、ソニー・ロリンズマックス・ローチに加え、トランペットのクラーク・テリー(Clark Terry)が意外な程モンクにフィットした演奏を聴かせてくれます。

 


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ここでのマックス・ローチは、「鬼気迫る」と表現したい程、気合の入れてシンバルを叩きまくっております。


前述の通り1956年10月の録音と12月の録音でメンバーが異なっておりますが、共演者が替わるだけで、これほど演奏が違うと言う・・・・。

 

セロニアス・モンクの個性的な演奏を聴くには、最適な一枚だと思います。

 

Thelonious Monk - Brilliant Corners
Riverside RLP12-226 / Victor VICJ-2085 [1996.07.03]


01. Brilliant Corners (Thelonious Monk)  7:44
02. Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are (Thelonious Monk)  13:09

03. Pannonica (Thelonious Monk)  8:49
04. I Surrender, Dear (Clifford-Barris)  5:26
05. Bemsha Swing (Thelonious Monk)  7:44


#02,03  October 9, 1956 in NYC.
Ernie Henry (as) Sonny Rollins (ts) Thelonious Monk (p) Oscar Pettiford (b) Max Roach (ds) 

#01  October 15, 1956 in NYC.
Ernie Henry (as) Sonny Rollins (ts) Thelonious Monk (p) Oscar Pettiford (b) Max Roach (ds) 

#04  October 15, 1956 in NYC
Thelonious Monk (p)

#05  December 7, 1956  in NYC.
Clark Terry (tp) Sonny Rollins (ts) Thelonious Monk (p) Paul Chambers (b) Max Roach (ds) 

 

BRILLIANT CORNERS

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「Ernie Henry - Last Chorus (Riverside RLP12-266)」にも同じセッションから「Ba-lue Bolivar Ba-lues-are」が収録されております。

 

ラスト・コーラス

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「Jacky Terrasson - Lover Man (Venus) 1993」個性派ピアニストの最高傑作

フランス人ピアニスト、ジャッキー・テラソン(Jacky Terrasson)は、1993年の「セロニアス・モンクコンペティション」で優勝した程の逸材。現在はフランス在住の様です。

 

この記事を最初に書いた2007年03月時点での所属レーベルは、「(仏)ブルーノート・レコード」でしたね。

 

「Jacky Terrasson - Lover Man (Venus) 1993」個性派ピアニストの最高傑作

 

さて、このアルバム「Lover Man (Venus Records TKCV-79033」は、日本の「ヴィーナス(Venus Records)が制作したトリオ編成によるアルバムです。

 

バックを務めるのはベースのウゴナ・オケーゴ(Ugonna Okegwo)と、最小限のドラムで物凄いリズムを刻んでるレオン・パーカー(Leon Parker)。

 

まあ、このアルバムに衝撃を受け、ブルーノート(Blue Note Records)に移籍した後もジャッキー・テラソン(Jacky Terrasson)のアルバムを聴き続けた感想なんですが、今の処このアルバムが、彼の最高傑作だと思われます。

 

なお最初に発売したものと最新版では、ジャケットが異なります。

 


初っ端、リズミックにアレンジし直された1曲目「Donna Lee」の勢いは本当に凄く、特に、レオン・パーカー(Leon Parker)のドラムが最高だったりします。

 


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そんなアレンジされたリズミックな曲と、4曲目「In Your Own Sweet Way」などのバラッド演奏とが程好い感じで並んでるという・・・。本当に聴き易いアルバムです。

 


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これは、プロデューサー・原哲夫さんの才能に拠る所が大きいかもしれませんね。

 

ブルー・ノートと契約した後の初期アルバム群は、お澄まし顔で演奏しているというか、何か物足りない気がするんですよね・・・。


ちなみに、ジャッキーの才能の一つは、「過去の名曲」をリズミックにアレンジし直して、彼独特の演奏にしてしまえる事、だと思います。

 

6曲目には「Lost」という、ジャッキー・テラソン(Jacky Terrasson)の自作曲を演奏しておりますが、耽美的なバラッド風な演奏で、この辺りにはハービー・ハンコックHerbie Hancock)の影響を感じる事が出来たりしますね。

 


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「最新版ジャケット」も掲載しときます。

 

「Jacky Terrasson - Lover Man (Venus) 1993」個性派ピアニストの最高傑作

Jacky Terrasson - Lover Man 
Venus Records TKCV-79033 [1994.02.24] / TKCV-35105 [1999.10.20]


01. Donna Lee (Charlie Parker)  5:17
02. Nardis (Miles Davis)  4:35
03. First Child (Jacky Terrasson)  2:21
04. In Your Own Sweet Way (Dave Brubeck)  9:43
05. Wail (Bud Powell)  2:15
06. Lost (Jacky Terrasson)  7:10
07. Broadway (H. Woode, T. Mcrae, B. Brid)  5:51
08. Lover Man (R. Ramirez, J. Sherman)  7:44
09. Close Enough For Love (J. Mandel)  2:27
10. Love For Sale (Cole Porter)  6:25


Jacky Terrasson (p) Ugonna Okegwo (b) Leon Parker (ds) 

November 18 & 19, 1993 at the Clinton Recording Studio "A" in NYC.

Producer – Tetsuo Hara

 

 

ついでなので。

「Donna Lee」ですが、チャーリー・パーカーCharlie Parker)作曲と記載されていますが、実はこの曲、マイルス・デイビスMiles Davis)が書いた曲のようです。

 

2007年03月17日、ジャズジャーナリスト・小川隆夫さんのブログでコメントのやりとりをした中で小川隆夫さんからも「マイルス・デイビスMiles Davis)作曲で正しいとの返信いただいております。

 

また小川さんのコメントには、興味深いお話が付記されていました。

 

「Donna Lee」という曲のタイトルは、ベーシストのカーリー・ラッセル(Curly Russell)の娘に因んだ名前」だそうです。

 

A Night at Birdland, Vol.1

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Night at Birdland 2

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カーリー・ラッセル(Curly Russell)は、「バードランドの夜(A Night At Birdland with Art Blakey Quintet [Blue Note 1521/1522]に参加していたベーシストですね。

「バードランドの夜」で、久々にPee Wee の甲高い声を聴くのも一興かと。

 

ラバー・マン

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私が大好きなピアニスト、ミッシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani)亡き今、ジャッキー・テラソンにはもっと頑張ってもらいたいところです。

 

ジャッキー・テラソンとマルチ・サックス奏者、バルネ・ウィラン(Barney Wilen)が競演した録音もあったりします。

 

「Jacky Terrasson - Lover Man (Venus) 1993」個性派ピアニストの最高傑作

 

発売元が消滅してしまったので入手困難な状態が続いておりますが、1990年録音の「Barney Wilen - Paris Moods (Alfa Jazz ALCB-9515)」 というアルバムです。

 

リズミックな8曲目、「Mon Blouson (C’est Ma Maison)」で、ジャッキーが大暴れ(笑)しております。

 

あと、2002年の「Smile [Blue Note]」などは、スティービー・ワンダーの「イズント・シー・ラヴリー?」とか、個々の曲の演奏は素晴らしいのです。

 

Smile

Smile

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ただしアルバム全体を聴き通すとなると・・・やはり、このアルバムには敵いません。

 


ジャッキー・テラソンは、公式サイトも開設していますので、お時間のある方はどうぞ。

 

www.jackyterrasson.com

 

 

「Michel Petrucciani - Pianism (Blue Note)」早世したピアノの妖精

1999年に惜しくも亡くなった、フランス出身のピアニスト「ミッシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani)」。

 

先天性の骨疾患「大理石病」と闘いながら世界中を飛び回っていたパワフルな彼のことを「ピアノの化身」と称える人もいましたね。


その容貌と美しいピアノの演奏を聴いていると、何だかふと「ピアノの妖精」と言う言葉が頭に浮かんできました。

 

「Michel Petrucciani - Pianism (Blue Note)」早世したピアノの妖精

 

さて、今回紹介する1985年12月20日にニューヨークで録音された「Pianism (Blue Note BT-85124)」は、一時期の小休止を経て新規録音を再開したブルーノート(Blue Note Records)が、期待の新人としてミッシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani)を紹介した1枚目のアルバムとなります。

 


とにかく全編でペトルチアーニの弾くピアノのハーモニーの新鮮で美しいこと!

 

フランス人らしい演奏といった方がしっくりくるかな?病気と闘いながら「まだ生きて演奏出来る喜び」みたいなものが、ダイレクトに伝わってくる作品です。

 


約2分間のピアノソロから始まる1曲目「The Prayer」はまるで、晴れ渡る朝の高原を吹き抜ける風のように、爽やかなナンバーです。

 


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続く2曲目「Our Tune」は、ドラム&ベースが活躍する躍動感いっぱいのナンバー。

 

3曲目「Face's Face」は、バップ調の懐かしいテーマの曲ですね。

 


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最後のテーマに戻る直前、ドラムとの8小節にわたるソロ交換が聴けます。

 

 

LP時代はB面だった、いきなり急速調のピアノソロから始まる「Night and Day」では、海原を疾走するかの様なピアノプレイが心地よいですね。

 

5曲目の「Here's That Rainy Day」では雨の中、長靴を履いた子供達が楽しそうに歩く光景がふいに浮かんできました。

 

アルバム最後を飾る「Regina」は、ミッシェル・ペトルチアーニの演奏の本質を表現するかのような、美しい中にも力強さを感じることが出来る曲です。

 


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Michel Petrucciani - Pianism 
(Manhattan) Blue Note BT-85124

side 1 (A)
01. The Prayer (M.Petrucciani)
02. Our Tune (M.Petrucciani)
03. Face's Face (M.Petrucciani)

side 2 (B)
04. Night and Day (Cole Porter)
05. Here's That Rainy Day (J.V.Heusen-J.Burke)
06. Regina (M.Petrucciani)

 

Michel Petrucciani (p) Palle Danielsson (b) Eliot Zigmund (ds)
December 20, 1985 at RCA Studio C, NYC.

 

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ブルーノート(Blue Note Records)からはボックス・セットや、ベスト盤が発売されております。

 

 

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