加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)がジャズ名盤の個人的感想など綴ってます。

「Thelonious Monk and Gerry Mulligan - Mulligan Meets Monk (Riverside) 1957」モンクとマリガン、奇跡の瞬間を捉えた名盤

「Mulligan Meets Monk (Riverside RLP-1106)」はタイトル通り、孤高の天才ピアニスト、セロニアス・モンクThelonious Monk)と、ウエスト・コースト・ジャズ界隈の人気者、ジェリー・マリガンGerry Mulligan)の共演を記録した、一期一会的なアルバム。

 

「Thelonious Monk and Gerry Mulligan - Mulligan Meets Monk (Riverside) 1957」

 

極度の人見知りだったらしいセロニアス・モンクが、かなり高揚気味に演奏しているので、作編曲も出来たジェリー・マリガンを信頼に値する人物だとみなし、よって「音楽的なコミュニケーション」も十分に取る事が可能であったろうと推測されます。

 

まあ、ここまで息の合った演奏を繰り広げられたのは、ジェリー・マリガンが編曲者の視点から「このアルバムに収録されたモンクの曲を、どうすれば良い演奏になるのか」という事を事前に研究していて、その成果が演奏に反映されたのしれません。

 

まあ、モンクとマリガンのどちらも楽しそうに演奏してますし、どの曲も甲乙つけがたい熱演であると思います。

何というか、「名盤アルバム」のお手本のような作品ですね。


1曲目「'Round Midnight」は、ジョン・コルトレーンJohn Coltrane)を擁したマイルス・デイヴィスMiles Davisクインテットが残した、あの名演の雰囲気に似てますね。

 


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ジェリー・マリガンのいつもはマイルドなバリトン・サックスの音色が、何となくコルトレーンの硬質なテナーの音色に近い感じに聴こえてきますね。

 

続くセロニアス・モンクも唸り声をあげながら、かつてマイルス・デイヴィスと曲の解釈で喧嘩になったこの曲を「ラウンド・ミッドナイトは、こういう風に演奏するだ」といった風に演奏してるようにも感じされます。

 

 


かなりのアップテンポで演奏される2曲目「Rhythm-A-Ning」では、ジェリー・マリガンが一瞬、ペッパー・アダムス(Pepper Adams)がバリトン・サックス吹いているのかと聴き間違えるような、かなり豪快な演奏を聴かせてくれます。

 


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続くセロニアス・モンクも、リズミックなフレーズを織り交ぜつつ、高揚気味な演奏を繰り広げます。


3曲目「Sweet And Lovely」は、ミディアムテンポのゆったりとした演奏。

確か「Solo Monk (Columbia)」でもこの曲は演奏されていたと記憶しておりますが、「Solo Monk」での演奏をカルテット編成に拡大した感じですね。

 

 

4曲目「Decidedly (take 4)」は、ジェリー・マリガンGerry Mulligan)の自作曲。

私が聴いているCDには、別テイク(take 5)が1曲追加収録されております。

 


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今までの演奏と雰囲気が変わり、ウエスト・コースト・ジャズの雰囲気が濃厚に感じられる演奏となっております。

自作曲でないためか、モンクはバッキングには参加せず、ソロのみに登場。


5曲目「Straight, No Chaser (take 3)」は、ブルース形式の曲で、私が聴いているCDには、別テイク(take 1)が1曲追加収録されております。

 

街中を闊歩するのに丁度良いテンポにのり、余裕たっぷりのジェリー・マリガンバリトンサックス・ソロ、ウィルバー・ウェア(Wilbur Ware)のベースソロ、モンクの高音を多用したトリッキーなピアノ・ソロと続きます。


6曲目「I Mean You (take 4)」は、セロニアス・モンクの代表曲の一つですが、私が聴いているCDには、OKテイク前に録音された「take 1」と「take 2」の、2つの別テイクが収録されております。

 

最初のソロに登場するモンクは、縦横無尽にピアノを弾き倒し、ジェリー・マリガンの余裕たっぷりのバリトンサックスにソロのバトンを渡します。

3番目に登場するウィルバー・ウェア(Wilbur Ware)のベース・ソロのバックで、モンクとマリガンがさりげないソロ・バッキングで盛り上げているのも面白いですね。

 

アルバムを通してじっくり聴いてみると「Mulligan Meets Monk (Riverside RLP-1106)」は、わが道を突き進むセロニアス・モンクThelonious Monk)が、同等の才能を持ちモンクの意思を最大限尊重出来たジェリー・マリガンGerry Mulligan)と共演した事で生み出された「奇跡の瞬間を捉えた」名盤ではないかと思えるようになりました。

 

Thelonious Monk and Gerry Mulligan - Mulligan Meets Monk +4 (1957)
Riverside RLP-1106 / OJCCD-301-2 / Victor Entertainment VICJ-41724 [2006.08.23]

side 1 (A)
01. 'Round Midnight (Williams, Monk)  8:29
02. Rhythm-A-Ning (Monk)  5:19
03. Sweet And Lovely (Arnheim, Tobias, Lemare)  7:18

side 2 (B)
04. Decidedly [take 4] (Gerry Mulligan)  5:53
05. Straight, No Chaser [take 3] (Monk)  7:00
06. I Mean You [take 4] (Monk)  6:53

Bonus Tracks
07. Decidedly [take 5, mono] (Gerry Mulligan)  6:37
08. Straight, No Chaser [take 1] (Monk)  5:30
09. I Mean You [take 1] (Monk)  6:24
10. I Mean You [take 2] (Monk)  6:31


Gerry Mulligan (bs) Thelonious Monk (p) Wilbur Ware (b) Shadow Wilson (ds) 
August 12 & 13, 1957 at Reeves Sound Studios, NYC.

 

 

確か、このアルバム「Mulligan Meets Monk (Riverside RLP-1106)」の録音が実現したきっかけは、どこかのジャズ・フェスティバルでセロニアス・モンクThelonious Monk)が演奏する際、「どうせ誰も聴いてないだろ(意訳)」と愚痴ってたのを聞いたジェリー・マリガンGerry Mulligan)が、「大丈夫、俺(マリガン)がずっと聴いてるから(意訳)」という事で、ステージ脇で演奏中のモンクを励まし続けた事がきっかけだったようです。

 

Meets Monk

Meets Monk

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