加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Bud Powell - A Portrait Of Thelonious (Columbia) 1961」セロニアス・モンク集的なアルバム

天才ピアニスト、バド・パウエルBud Powell)が1961年12月17日、パリで録音したセロニアス・モンクThelonious Monk)作品的なアルバムが「A Portrait Of Thelonious (Columbia CL-2292)」です。

 

「Bud Powell - A Portrait Of Thelonious (Columbia) 1961」セロニアス・モンク集的なアルバム


この時期のバド・パウエルBud Powell)は、偏見と人種差別に満ちたアメリカから、芸術家として大切に扱ってくれるヨーロッパに移住し、パリを拠点に演奏活動を続けた
様です。

 

パリでバドの生演奏を聴いた大江健三郎氏が、その時の様子を「老いたセイウチ」と表現する程、全盛期の狂気に満ちた気迫溢れる演奏とは距離を置いた、滋味あふれる演奏スタイルにシフトしておりますね。

 


あと、バド・パウエルBud Powell)を自分の親族か息子の様に庇護し可愛がっていたセロニアス・モンクThelonious Monk)でありますが。

 

二人共、精神系の疾患に悩まされ、バド・パウエルBud Powell)に関しては晩年、マイルス・デイヴィスMiles Davis)の自叙伝などによると奥様の指示がなければ演奏が出来ないほどの操り人形とでも表現すべき「抜け殻」状態のままステージに立っていたらしいです。

 

「A Portrait Of Thelonious (Columbia CL-2292)」における共演メンバーはベースのピエール・ミッシェロ(Pierre Michelot)と、同じく欧州移住組の一人、ケニー・クラークKenny Clarke)です。

 

タイトルを見ると「セロニアス・モンク作品集」ではあるのですが、セロニアス・モンクの曲は1曲目「Off Minor」、3曲目「Ruby, My Dear」、5曲目「Thelonious」、6曲目「Monk's Mood」と4曲のみで、残り半分は我々には馴染が薄い、他の人が書いた曲だったりします。

 


ゆったりとしたテンポで演奏される1曲目「Off Minor」は、バド・パウエルBud Powell)自身の演奏スタイルではありつつも時々、セロニアス・モンクThelonious Monk)風のコンピングや間の取り方を混ぜているのが流石だなあ、と思ったりします。

 


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華美なイントロから始まる2曲目「There Will Never Be Another You」は、セロニアス・モンクThelonious Monk)を意識した間の取り方と、ストライド・ピアノ風の弾き方とのバランスがお見事でございます。

 


セロニアス・モンクThelonious Monk)が書いた屈指のバラッドである3曲目「Ruby, My Dear」は、耽美というか滋味あふれる演奏となっております。

 


ピエール・ミッシェロ(Pierre Michelot)のベースから始まる4曲目「No Name Blues」は、ビバップの香り高めのブルースで、バド・パウエルBud Powell)の唸り声つきで軽快な演奏をお楽しみいただけます。

 


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5曲目「Thelonious」も、セロニアス・モンクThelonious Monk)の有名な1曲ですし、ケニー・クラークKenny Clarke)の絶妙なブラシによるリズム・キープがよろしいです。

 


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バラッドで演奏される6曲目「Monk's Mood」は確か、ジョン・コルトレーンJohn Coltrane)と演奏していたバージョンもありましたね。

 

ピアノを一音一音、スイング控えめでどっしりと鳴らしつつ途中、ストライド・ピアノ風の装飾音を聴かせるという緩急織り交ぜた演奏が素敵です。

 


アップテンポで演奏される7曲目「I Ain't Foolin'」は、軽快にスイングする1曲。

 


ミディアム・テンポで演奏される8曲目「Squatty」、そして別テイクである9曲目「Squatty (alternate take)」でアルバムは幕を閉じていきます。

 

この曲だけは、バド・パウエルBud Powell)本来の演奏スタイルで、セロニアス・モンクThelonious Monk)風という部分は薄い感じがします。

 

「Bud Powell - A Portrait Of Thelonious (Columbia) 1961」セロニアス・モンク集的なアルバム

 

知人のお店に飾ってあったので存在を知ったのですが、もろ「猫ジャケ」な別ジャケットもある模様。

 

まあ、何故このアルバムを「猫ジャケ」にしたのか、よくわからないのですが(笑)。

 

Bud Powell - A Portrait Of Thelonious +1
Columbia CL-2292 / Sony Records SRCS-9352 [1997.11.21]

side 1 (A)
01. Off Minor (Thelonious Monk)  5:21
02. There Will Never Be Another You (Warren, Gordon)  4:20
03. Ruby, My Dear (Thelonious Monk)  5:49
04. No Name Blues (Bostic)  6:39

side 2 (B)
05. Thelonious (Thelonious Monk)  3:48
06. Monk's Mood (Thelonious Monk)  7:08
07. I Ain't Foolin' (Albertine)  3:21
08. Squatty (Fahey)  5:50

Bonus Track
09. Squatty (alternate take) (Fahey)  5:06


Bud Powell (p) Pierre Michelot (b) Kenny Clarke (ds) 
December 17, 1961 in Paris, France.