1957年は丁度、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)は40歳になった年のようです。
1951年の身代わり逮捕から没収されていた「キャバレー・カード」を、パトロンであったニカ男爵夫人らの尽力により再交付。
ジャズクラブ「ファイブ・スポット(Five Spot Cafe)」に、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)を伴ったカルテットで長期出演する事となります。
「ファイブ・スポット」での演奏は公式録音されず、後にプライベート・テープが「世紀の大発掘」みたいな扱いでアルバム化されたと記憶しております。
さて、孤高の天才、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)にとって激動の年となった1957年は、麻薬癖が原因でマイルス・デイヴィス(Miles Davis)のバンドをクビになったジョン・コルトレーン(John Coltrane)を引き取り、自身のバンドで研鑽を積ませていた時期にもあたります。
そんなジャズの歴史的にも重要な時期のセロニアス・モンクとジョン・コルトレーンの邂逅を集めた公式録音が、アルバム「Thelonious Monk With John Coltrane (Jazzland JLP-46)」に収められてます。
なお「Jazzland」は、「リバーサイド(Riverside Records)」の傍系レーベルのようですね。
1曲目「Ruby, My Dear」、2曲目「Trinkle, Tinkle」、4曲目「Nutty」の3曲が、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)を含むモンク・カルテットによる演奏となります。
1曲目、バラッドの名曲としてお馴染みの「Ruby, My Dear」は、ジョン・コルトレーンが1963年に残した大名盤「Ballads (Impulse! AS-32)」に通じる演奏であり、若干の迷いは感じされるものの、モンクに鼓舞されつつ全編吹き通すジョン・コルトレーンの優しいテナーの響きに癒されます。
2曲目「Trinkle, Tinkle」は、モンクらしいトリッキーなテーマ部が印象的な1曲。
ジョン・コルトレーンは、1957年09月録音の「Blue Train (Blue Note BST-81577)」でも聴きなれた超高速フレーズを連発してモンクに挑みます。
迎え撃つモンクは、余裕しゃくしゃくといった感じですが。
4曲目「Nutty」は、セロニアス・モンクのユーモアあふれる曲に、ジョン・コルトレーンがお得意の超高速フレーズで挑むといった風情の演奏です。
コルトレーンに続いて登場するモンクの余裕たっぷりのソロを聴いていると、あの我が道を突き進むコルトレーンですら、セロニアス・モンクには忖度した演奏してたんだなあ・・・と。
3曲目「Off Minor」、5曲目「Epistrophy」の2曲は、ジョン・コルトレーンの他、トランペットのレイ・コープランド(Ray Copeland)、アルトサックスのジジ・グライス(Gigi Gryce)、テナーサックスのコールマン・ホーキンス(Coleman Hawkins)、ドラムスのアート・ブレイキー(Art Blakey)らが参加するオールスターセッションによる演奏。
3曲目「Off Minor」は、テーマ部の大編成による重厚なアンサンブルに圧倒されますね。
各人のゆる目なソロ・リレーの後、アート・ブレイキーのドラムソロでバンドの演奏が引き締められるのが、面白かったりします。
5曲目「Epistrophy」は、ゆる目の「Off Minor」とは異なり、テーマ部から緊張感溢れる演奏が続きます。
ここでも、アート・ブレイキーのドラムが一際冴えております。
6曲目「Functional」のみ、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)のソロ演奏となります。
ゆったりとしたテンポで、気兼ねなくフレーズを紡いでいくモンク。
「モンク聴くなら、まずはソロから」という常套句を最後に書き記しておきます。
Thelonious Monk - Thelonious Monk With John Coltrane
Jazzland JLP-46 (Mono)/JLP-946S / VICJ-41523 [2006.06.21]
side 1 (A)
01. Ruby, My Dear (Thelonious Monk) 6:19
02. Trinkle, Tinkle (Thelonious Monk) 6:38
03. Off Minor (Thelonious Monk) 5:12
side 2 (B)
04. Nutty (Thelonious Monk) 6:36
05. Epistrophy (Thelonious Monk) 3:07
06. Functional (Thelonious Monk) 9:42
#01,02,04(mono) July, 1957 at Reeves Sound Studios, NYC.
John Coltrane (ts) Thelonious Monk (p) Wilbur Ware (b) "Shadow" Wilson (ds)
#03,05(stereo) June 25 & 26, 1957 at Reeves Sound Studios, NYC.
Ray Copeland (tp) Gigi Gryce (as) John Coltrane (ts) Coleman Hawkins (ts)
Thelonious Monk (p) Wilbur Ware (b) Art Blakey (ds)
#06(mono) April 16, 1957 at Reeves Sound Studios, NYC.
Thelonious Monk (p)
1957年のセロニアス・モンク(Thelonious Monk)が公式録音したアルバムを、大雑把に紹介しておきます。
1957年04月には、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)との共演を含む「Solo Piano By Thelonious Monk - Thelonious Himself (Riverside RLP 12-235)」を録音。
同じく1957年04月には、「Sonny Rollins Vol. 2 (Blue Note BLP-1558)」のオールスター・セッションにゲスト参加。
1957年05月には、「Art Blakey's Jazz Messengers With Thelonious Monk ( Atlantic SD-1278)」に参加。
1957年08月には、「Mulligan Meets Monk (Riverside RLP12-247)」を録音。
1957年11月には、2005年に発掘盤として話題を呼んだ「Thelonious Monk Quartet With John Coltrane At Carnegie Hall (Blue Note 0946 3 35173 2 5)」が録音されます。
セロニアス・モンク(Thelonious Monk)と、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)。
公式発売されたアルバムを眺めてみると、二人にとって1957年は、かなり重要な年だったんだなあ・・・と。