マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の「Miles Davis And The Modern Jazz Giants (Prestige PRLP-7150)」は、通称「喧嘩セッション」から4曲、「マラソンセッション」から1曲を収録したアルバム。
セロニアス・モンク(Thelonious Monk)、ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)、ケニー・クラーク(Kenny Clarke)、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones)ら、モダン・ジャズの巨人達(The Modern Jazz Giants)が参加しております。
さて最初は1954年12月24日のクリスマス・イブ、ハッケンサックにあるルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)のスタジオで録音された、通称「喧嘩セッション」から。
前回も書いた通り、この時の録音は「喧嘩セッション」では無かったと、マイルスは自叙伝で切々と訴えております。
モンクの弾く和声進行のボイシングがマイルスのトランペットにマッチしない為、「自分がトランペット(ソロ)を吹いている間は休んでいて欲しい」とマイルスが先輩格のモンクにお願いし、モンクもそれ素直に従っただけというのが「喧嘩セッション」の真相です。
ここではマイルス・デイヴィス(Miles Davis)の他、モダン・ジャズの巨人であるミルト・ジャクソン(Milt Jackson)のヴィヴラフォン、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)のピアノ、パーシー・ヒース(Percy Heath)のベース、ケニー・クラーク(Kenny Clarke)のドラムという編成で録音が実施されました。
1曲目「The Man I Love [take 2]」は、最初に聴こえるミルト・ジャクソン(Milt Jackson)のクールなヴィヴラフォンの音色が印象的な曲。ここでのマイルスは、オープン・ホーンで切なくテーマを綴ります。
ソロ直前でテンポアップし、ミルト・ジャクソンの熱気溢れるソロに突入します。
ソロ2番手はセロニアス・モンク。パーシー・ヒースの躍動的なベース・ランニングをバックにソロを始めますが、アイデアが途絶えたか、ソロ途中でピアノを弾くのを止めてしまいます。マイルスにせっつかれて、ソロを再開するあたりはスリル満点ですね(笑)。
5曲目「The Man I Love [take 1]」は、ミルト・ジャクソンが弾くイントロ部分で、マイルスが演奏を中断させたりと、こちらもスリル満点。
ミルト・ジャクソンの高揚気味なソロに続き、モンクの間を生かしたクールなソロ、マイルスのリラックス気味なソロと続きます。
2曲目「Swing Spring」は、春らしく明るい雰囲気漂うマイルス・デイヴィス(Miles Davis)の自作曲。
マイルス・デイヴィス、ミルト・ジャクソンと軽快なソロが続きます。
ソロ3番手は再びマイルスが登場し、四番手のセロニアス・モンクに繋ぎます。
ここでのモンク、さりげにテクニックを駆使した軽快なソロを弾いてますね。
4曲目「Bemsha Swing」は、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)とデンジル・ベスト(Denzil Best)の共作の様です。
自作曲なのでモンクがマイルスと一緒にテーマを奏で、その代わりミルト・ジャクソンがお休みするという演出が面白いですね。
モンクのバッキングでソロをとるマイルス、慎重にフレーズを選んでいる感じがします。
2番手に登場するミルト・ジャクソンは慣れた感じでリラックスしたソロを披露、3番手のモンクは他の曲に比べ縦横無尽にソロを弾いている感じがします。
3曲目、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)の超有名曲である「'Round Midnight」だけ、1956年10月26日の録音となります。
マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の他、「50年代黄金クインテット」のメンバーが参加。つまり、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)のテナーサックス、レッド・ガーランド(Red Garland)のピアノ、ポール・チェンバース(Paul Chambers)のベース、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones)のドラムスという編成。
1956年09月10日に(内密に)移籍先のコロンビア(Columbia Records)で録音した、ギル・エヴァンス(Gil Evans)編曲バージョンで再び演奏しております。
コロンビア・バーションより、ややハードボイルドさに欠けますが、名演には違いないですね。
なお「'Round Midnight」は、有名な通称「マラソンセッション」の「Relaxin' (Prestige PRLP-7129)」、「Workin' (Prestige PRLP-7166)」、「Steamin' (Prestige PRLP-7200)」と同じ日の録音となります。
「Miles Davis And The Modern Jazz Giants (Prestige PR-7650)」のジャケットはこんな感じに変更されております。
Miles Davis And The Modern Jazz Giants (1954,56)
Prestige PRLP-7150 / OJCCD-347-2 / Victor Entertainment VICJ-60281 [1999.03.31]
side 1 (A)
01. The Man I Love [take 2] (George Gershwin, Ira Gershwin) 8:00
02. Swing Spring (Miles Davis) 10:46
side 2 (B)
03. 'Round Midnight (Bernie Hanighen, Cootie Williams, Thelonious Monk) 5:25
04. Bemsha Swing (Thelonious Monk, Denzil Best) 9:33
05. The Man I Love [take 1] (George Gershwin, Ira Gershwin) 8:30
#01,02,04,05 December 24, 1954 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Miles Davis (tp) Milt Jackson (vibs) Thelonious Monk (p) Percy Heath (b)
Kenny Clarke (ds)
#03 October 26, 1956 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Miles Davis (tp) John Coltrane (ts) Red Garland (p) Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
10インチレコードで発売された際の詳細も、記載しておきますね。
●Prestige PRLP-196 Miles Davis All Stars Vol. 1
side 1 (A)
01. Bags' Groove (Milt Jackson) 11:11
side 2 (B)
02. Swing Spring (Miles Davis) 10:46
Miles Davis (tp) Milt Jackson (vibs) Thelonious Monk (p) Percy Heath (b)
Kenny Clarke (ds)
December 24, 1954 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
●Prestige PRLP-200 Miles Davis All Stars Vol. 2
side 1 (A)
01. Bemsha Swing (Thelonious Monk, Denzil Best) 9:33
side 2 (B)
02. The Man I Love (George Gershwin, Ira Gershwin) 8:30
Miles Davis (tp) Milt Jackson (vibs) Thelonious Monk (p) Percy Heath (b)
Kenny Clarke (ds)
December 24, 1954 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.