マイルス・デイヴィス（Miles Davis）率いる1950年代の黄金クインテットは、プレステッジ（Prestige Records）との録音契約を履行するため、1956年の05月11日と10月26日の２回に分けたスタジオをライブ会場に見立てた長時間録音、通称「マラソン・セッション」に挑みます。
２回の録音の間、「カフェ・ボヘミア（Cafe Bohemia）」に長期出演して超満員の聴衆を沸かせ、またアルバム「'Round About Midnight (Columbia CL-949)」として発表される録音も平行して行われておりました。
つまり、この時期のマイルス・デイヴィス（Miles Davis）は、ようやく商業的な成功を収め、自身が満足する収入を得て、心身ともに充実した生活を過ごせるようになった訳ですね。
ただ1956年の06月末には、クリフォード・ブラウン（Clifford Brown）が交通事故で急逝。マックス・ローチ（Rax Roach）が失意のどん底に陥り、今までのような演奏が出来なくなってしまったという話もマイルスの自叙伝には記載されております。
さて「Steamin' (Prestige PRLP-7200)」は、世に名高い1956年の05月11日と10月26日に行われた通称「マラソン・セッション」から拾遺編纂されたアルバムで、１回目（05月11日）のセッションから５曲、２回目（10月26日）のセッションから１曲を収録。
「1950年代の黄金クインテット」は、マイルス・デイヴィス（Miles Davis）のトランペットに加え、ジョン・コルトレーン（John Coltrane）のテナーサックス、レッド・ガーランド（Red Garland）のピアノ、ポール・チェンバース（Paul Chambers）のベース、フィリー・ジョー・ジョーンズ（Philly Joe Jones）のドラムスというメンバーです。
１曲目「Surrey with the Fringe on Top」は、フィリー・ジョー・ジョーンズがザクザクと刻むミティアム・テンポのリズムに乗って登場する、自信に満ち溢れるマイルスのミュート・トランペットが良いですね。
続くジョン・コルトレーン、レッド・ガーランドとも軽妙なソロで演奏を盛り上げております。
２曲目「Salt Peanuts」はディジー・ガレスピー（Dizzy Gillespie）とケニー・クラーク（Kenny Clarke）の共作。
ビバツプ時代の代表曲の一つですが、超アップテンポにもかかわらず、マイルス、コルトレーン共に縦横無尽なソロを展開していきます。
フィリー・ジョー・ジョーンズのちょっと長めな重厚なるドラム・ソロも、流石ですね。
３曲目「Something I Dreamed Last Night」は、バラッド演奏。
レッド・ガーランドのピアノ・イントロに導かれて登場するマイルスのミュート・トランペットが絶品だなーと。続くレッド・ガーランドの幽玄なるピアノ・ソロも素敵です。コルトレーン、出番なし（笑）。
４曲目「Diane」は、ミディアム・テンポでの演奏。ここでも、マイルスのミュート・トランペットが冴えまくっております。
二番手に登場するコルトレーン、ソロの冒頭で勢い余ってリードミスしたりしてますが、かなり饒舌なソロを展開しております。
三番手に登場するレッド・ガーランドは、落ち着いた感じで玉を転がすようなフレーズを途中混ぜつつ、軽快なソロを聴かせてくれます。
５曲目「Well, You Needn't」は、セロニアス・モンク（Thelonious Monk）が作曲した内でも、良く知られ演奏される１曲ですね。
ポール・チェンバースの唸るベースとフィリー・ジョー・ジョーンズの絶妙なドラムスをバックにマイルス、コルトレーン、レッド・ガーランド、ポール・チェンバースとソロが展開され、セカンド・テーマが登場した後、後テーマが演奏されます。
６曲目「When I Fall in Love」は、絶品なるバラッド演奏です。
マイルスのミュート・トランペットにさりげなく絡む、レッド・ガーランドの間の生かしたピアノ・バッキングが流石ですね。
ソロの最初に登場するレッド・ガーランドは、アーマッド・ジャマル（Ahmad Jamal）風の優雅なソロを展開、続くマイルスはソロらしいソロは吹いておりませんが、前後のテーマ部でフレーズやや崩しつつ吹き、その圧倒的な存在感を見せつけてくれます。
Steamin' With The Miles Davis Quintet (1956)
Prestige PRLP-7200 / OJCCD-391-2 / Victor Entertainment VICJ-60268 [1999.02.03]
side 1 (A)
01. Surrey with the Fringe on Top (Richard Rodgers) 9:02
02. Salt Peanuts (Dizzy Gillespie, Kenny Clarke) 6:06
03. Something I Dreamed Last Night (Sammy Fain) 6:13
side 2 (B)
04. Diane (Lew Pollack, Erno Rapee) 7:48
05. Well, You Needn't (Thelonious Monk) 6:18
06. When I Fall in Love (Victor Young) 4:22
#01-04,06 May 11 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Miles Davis (tp #omit 3) John Coltrane (ts #omit 3,6) Red Garland (p) Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
#05 October 26 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Miles Davis (tp) John Coltrane (ts) Red Garland (p) Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
この「Steamin' (Prestige PRLP-7200)」で、波乱万丈なプレステッジ（Prestige Records）時代の主要なアルバムを、全て紹介したはず・・・確か（笑）。
ブルーノート（Blue Note Records）で録音されたアルバムは、1500番台（1501,1502）が拾遺集的な編纂なので、時代がごちゃ混ぜであり、書き出すと時間が足りなくなるので、そのうち気力がある時にでも・・・。
続きまして、コロンビア（Columbia Records）時代初期のアルバム群を紹介してみようと思ってます。
まだ資料を読み始めた段階なので、途中で気が変わるかもしれませんが、そのつもりで準備してます。
ただ、予定は未定です。気長に焦らずお待ちください。
1956年05月11日のセッションは、３枚のアルバムに分散収録されております。
「Relaxin' (Prestige PRLP-7129)」に２曲
「Workin' (Prestige PRLP-7166)」に７曲
「Steamin' (Prestige PRLP-7200)」に５曲
1956年10月26日のセッションは、４枚のアルバムに分散収録されております。
「Cookin' (Prestige PRLP-7094)」に５曲
「Relaxin' (Prestige PRLP-7129)」に４曲
「Workin' (Prestige PRLP-7166)」に１曲
「Steamin' (Prestige PRLP-7200)」に１曲
