「Donald Byrd - Fuego (Blue Note) 1959」バード、ファンキー時代の決定盤
アルバム「Fuego (Blue Note)」は、ファンキー時代におけるドナルド・バード(Donald Byrd)の決定盤であり、いにしえなる日本のジャズ喫茶でも大人気だったそうです。
「フエゴ(Fuego)」とは、スペイン語で「火(炎)」の意味との事。
それまでホレス・シルヴァー(Horace Silver)やアート・ブレイキー(Art Blakey)らとの共演で、ハードバップ路線の延長線上で演奏していたドナルド・バードでしたが。
ブルーノート(Blue Note Records)のオーナー、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)から、自身のルーツでもあるゴスペル調の演奏を心掛けるよう提案され、吹き込んだのがこのアルバム「フエゴ(Fuego)」です。
そのあたりの経緯を、小川隆夫さんの著作『ブルーノートの真実(東京キララ社発行)』から引用。
★1987年、ニューヨークでのインタビューより
「わたしの持ち味を、うまい具合に引き出してくれたのがアルフレッドだ。
自分としては、作曲に力を入れて、アレンジにも凝った音楽を演奏したいと思っていたが、彼はブルージーな演奏をするように命じた。実は子供の頃に教会でゴスペルの合唱団に入っていたから、その手の演奏も得意だった。
ホレスのバンドにいたときは、ブルージーな演奏をよくやっていたしね。
そこにアルフレッドは目をつけたんだと思う。」
少し補足すると、ドナルド・バードのお父さんは、牧師さんだったらしいので、「ゴスペル音楽」はお手のものだったでしょうね。
ゴスペル風味を前面に打ち出した「フエゴ(Fuego)」は印象的なリズムパターンから始まります。
2曲目は一転してバップ調の「Bup A Loup」。
3曲目は録音当日にヘッド・アレンジで演奏された(らしい)ファンキー・ブルース「Funky Mama」。
LP時代のA面3曲はあっと言う間に聴きとおせてしまいます。
LP時代のB面に相当する3曲もゴスペル・ファンキー調の曲が続きます。
6曲目、ラストはファンキーな「Amen」。
ハッピーな雰囲気の中、リズム・セクションとフロントが「コール&レスポンス」を繰り返します。
このナンバー、なんかジャズ・メッセンジャーズの「Moanin'」と「Blues March」を足して2で割った感じもしますね。
Donald Byrd - Fuego (RVG)
Blue Note BST-84026 / 東芝EMI TOCJ-7017 [2007.07.25] Blue Note RVG
side 1 (A)
01. Fuego (Donald Byrd) 6:37
02. Bup A Loup (Donald Byrd) 4:03
03. Funky Mama (Donald Byrd) 10:55
side 2 (B)
04. Low Life (Donald Byrd) 6:00
05. Lament (Donald Byrd) 8:25
06. Amen (Donald Byrd) 4:46
Donald Byrd (pocket-tp) Jackie McLean (as) Duke Pearson (p)
Doug Watkins (b) Lex Humphries (ds)
October 4, 1959 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
ホレス・シルヴァー(Horace Silver)のライブでもお馴染みのジャズ・クラブ「ヴィレッジ・ゲイト(Village Gate)」。
メインが「アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズ」で、サブを「ドナルド・バード・クインテット」にして2週間出演させたところ、バードのクインテットの方が人気があったそうです。
それで契約を2週間延長してメインとサブを逆にしたら、もっとお客さんが入ったとか(笑)。
ついでに1959年からのブルーノート(Blue Note Records)における、ドナルド・バード(Donald Byrd)のリーダー作をざっと列記しておきます。
ファンキー時代のバードは「At The Half Note Cafe Vol. 1&2 (Blue Note BLP 4060/4061)」で人気の頂点に達します。
●1959年
Donald Byrd - Fuego (Blue Note BLP 4026)
●1960年
Donald Byrd - Byrd In Flight (Blue Note BLP 4048)
Donald Byrd - At The Half Note Cafe Vol. 1 (Blue Note BLP 4060)
Donald Byrd - At The Half Note Cafe Vol. 2 (Blue Note BLP 4061)
●1961年
Donald Byrd - The Cat Walk (Blue Note BLP 4075)
Donald Byrd - Royal Flush (Blue Note BLP 4101)
Donald Byrd - Free Form (Blue Note BLP 4118)
●1962年
※ブルーノート(Blue Note Records)での録音なし
●1963年
Donald Byrd - A New Perspective (Blue Note BLP 4124)
ドナルド・バード(Donald Byrd)はこの後、ゴスペルコーラスを配した「A New Perspective (Blue Note)」のような実験的な作品を発表したり、ジャズロックからトロピカル路線、フュージョン路線と舵を切り「Black Byrd」で大ヒットを飛ばします。