前の記事でも書きましたが、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)の演奏の特徴は、当時の最先端なスタイルである「伝統的なスタイルをベースにして、そこにアヴァンギャルドな要素を付け加える」という事に尽きると思います。
ベースに「伝統的なスタイル」があり「アヴァンギャルドな要素を付け加える」例として、一番わかりやすいのが、「Outward Bound (New Jazz)」です。
ディスコグラフィーを眺めると、前年1959年頃までは、チコ・ハミルトン(Chico Hamilton)バンドの一員として公式録音を残していた模様。
さて、初リーダーアルバムとなる「Outward Bound (New Jazz)」は1960年の04月01日(April Fool)、有名なるヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)のスタジオで録音されました。
「伝統とアヴァンギャルドの融合したアルバム」とはいうものの、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)の作品の中では、比較的聴きやすい1枚です。
共演メンバーでは、フレッシュなフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)のトランペットと、ロイ・へインズ(Roy Haynes)の変幻自在なドラム・プレイが光ります。
※再発時(Prestige PRLP-7311)の別ジャケット。「discogs」からお借りしました。
伝統的なスタイルをベースにしたアヴァンギャルドな演奏という表現がぴったりなのが、1曲目の「G.W.」。
ロイ・ヘインズ(Roy Haynes)の変幻自在なドラム・ソロから始まり、エリック・ドルフィーとフレディ・ハバードの二管によるやや不協和音気味なテーマが終わった後。
エリック・ドルフィーのユニークかつ飛躍気味なソロが飛び出すあたりで、思わず「おおっ」と叫んでしまいたい衝動に駆られます(笑)。
このアルバムでお勧めなのが2曲目、バス・クラリネットで演奏される「On Green Dolphin Street」。フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)の珍しいミュート・プレイも聴けます。
そういえばこの曲は、ホラー映画の主題歌だったはず。だから、最初のバスクラリネットで不気味な音を演奏するのか・・・そうか、そういうことか。
ビバップの伝統にのっとりつつ、前衛的な色彩を帯びた「Les」、ファンキー風味をまぶしたスローな「245」、エリック・ドルフィーがフルートに持ち替えて演奏される美しいバラッド「Glad To Be Unhappy」と演奏は続きます。
軽快な「Miss Toni」は、よくあるハードバップ風味ですね(笑)。
フレディ・ハバードのの初リーダー作品「Open Sesame (Blue Note)」に収録されてても、違和感無い曲のように思えます。
CDのボーナス・トラックとして収録された「April Fool」は、ドルフィーがフルートで演奏する、ミディアムテンポの曲。
テーマの延々途切れないフレーズはビバップ時代、既存曲のコード進行を元に、テーマ部分だけ自分が考えたフレーズに置き換えた曲のようにも聴こえます。
そういう意味では、「伝統的なスタイル」をベースに「アヴァンギャルドな要素を付け加えた」演奏の典型例なのかもしれません。
Eric Dolphy - Outward Bound +3 (1960)
New Jazz NJLP-8236 / Prestige PRLP-7311 / Victor Entertainment VICJ-60429 [1999.11.20]
side 1 (A)
01. G.W. (Eric Dolphy) 8:00
02. On Green Dolphin Street(Kaper - Wahington) 5:46
03. Les (Eric Dolphy) 5:14
side 2 (B)
04. 245 (Eric Dolphy) 6:51
05. Glad To Be Unhappy (Richard Rodgers - Lorenz Hart) 5:29
06. Miss Toni (Charles Greenlee) 5:42
CD Bonus Tracks
07. G.W. (alternate take 1) (Eric Dolphy) 12:11
08. 245 (alternate take 1) (Eric Dolphy) 8:12
09. April Fool (Eric Dolphy) 04:09
Freddie Hubbard (tp) Eric Dolphy (as, b-cl, fl)
Jaki Byard (p) George Tucker (b) Roy Haynes (ds)
April 1, 1960 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
まあ、ブッカー・リトル(Booker Little)とのファイブ・スポット(Five Spot Cafe)における、果し合いの如き壮絶なライブもいいんですが・・・・。
1曲目「Fire Waltz」聴いたら、もうお腹いっぱいになりますからね(笑)。
まあ、とか書きつつ、ドルフィーとリトルのコンビネーションは好きなんですけどね(笑)。