加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Horace Silver - Silver 'N Brass (BN-LA406-G) 1975」クインテットでの録音に、ブラス・アンサンブルをダビング

ブルーノート(Blue Note Records)の看板アーティスト、ホレス・シルバーHorace Silver)。

 

1975年、クインテット編成で録音したテープを元に編曲された、ブラスアンサンブルをオーバーダビングするという、珍しい手法で仕上げられたアルバム「Silver 'N Brass (BN-LA406-G)」を制作しました。

 

「Horace Silver - Silver 'N Brass (BN-LA406-G) 1975」

この「Silver 'N Brass (BN-LA406-G)」が売れ行き好評だったようで。

 

「Silver 'N シリーズ」として「BN-LA」シリーズでは以降、「Silver 'N Wood (BN-LA581-G)」、「Silver 'N Voices (BN-LA708-G)」、「Silver 'N Percussion (BN-LA853-H)」の3枚合わせて計4枚を発表。

 

「BN-LT」シリーズに1枚だけ紛れ込み、ホレス・シルヴァーブルーノートに最後に残した「Silver 'N Strings (LWB-1033)」を合わせると、合計5枚もの「Silver 'N シリーズ」のアルバム(1枚だけ2枚組)が発売される事となります。

ブルーノートブックを眺めていると「Silver 'N シリーズは4枚」とか、書いてる方がおられるようですが、5枚あります・・・5枚です(重要)。

 

さて「Silver 'N Brass (BN-LA406-G)」の作り方について。

 

まず、いつものホレス・シルヴァークインテット東海岸側のニューヨークで録音し、そのクインテット音源を編曲家のウェイド・マーカス(Wade Marcus)に渡します。

 

録音された音源を聴いたウェイド・マーカスがコード進行、ハーモニー等を聴き取り、ブラス・アンサンブルを書き下ろし、アンサンブルの部分を録音。

 

西海岸側のロサンゼルスにて、クインテット編成の録音テープにオーバーダビングを施した上で、アルバム「Silver 'N Brass (BN-LA406-G)」の完成となります(説明長いな)。

 

1970年代前半は「人心連合(The United States Of Mind)シリーズ」というロックやソウル寄りでヴォーカル入りの、一般のジャズファンからすると迷走気味なアルバムを発売していた訳ですが・・・。

 

United States of Mind

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ご本人も「このままではイカン!」と思ったのか、原点回帰的な「Silver 'N シリーズ」を録音してみた処、一般のジャズだけでなくミュージシャン達にも好評だったようです。

 

そんな訳でブルーノート(Blue Note Records)以外のレコード会社に移籍してからも、ラージ・アンサンブルによるアルバムを発売したりしてましたね。

 

 

さて、「Silver 'N Brass (BN-LA406-G)」には、クインテット編成の録音にブラス・アンサンブルをオーバーダビングして完成した6曲が収録されております。

 

1曲目「Kissin' Cousins」を聴いてもらえば分かる通り、いつもは2管編成でしか聴く事の出来ないアンサンブルやセカンド・リフが分厚いホーン・アンサンブルに拡張されて聴く事が出来ます。

 


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ソロ・パートはいつも通りですが、ホーン・アンサンブルが加わると演奏自体のゴージャス感が増しますね。

 

作編曲家であったタッド・ダメロンTadd Dameron)に捧げた「Dameron's Dance」は、タッド・ダメロンが書きそうなアンサンブルの前後、ソロはホレス・シルヴァーだけという構成。

 


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デューク・エリントンDuke Ellington)に捧げられたらしい「The Sophisticated Hippie」は、これぞホレス節!といった感じの曲。

 


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トム・ハレル(Tom Harrell)の流暢なトランペット・ソロも堪能出来ます。

 

「Silver 'N シリーズ」の第1弾アルバム「Silver 'N Brass (BN-LA406-G)」は、「人心連合(The United States Of Mind)シリーズ」の迷走からようやく抜け出した、爽快感溢れる1枚であると言えるかと・・・。

 

Horace Silver - Silver 'N Brass (1975)
Blue Note BN-LA406-G / EMI Music Japan TOCJ-50528 [2012.12.19]

side 1 (A)
01. Kissin' Cousins (Horace Silver / brass arr by Wade Marcus)  7:55
02. Barbara (Horace Silver / brass arr by Wade Marcus)  7:38
03. Dameron's Dance (Horace Silver / brass arr by Wade Marcus)  5:19

side 2 (B)
04. The Sophisticated Hippie (Horace Silver / brass arr by Wade Marcus)  7:05
05. Adjustment (Horace Silver / brass arr by Wade Marcus)  5:19
06. Mysticism (Horace Silver / brass arr by Wade Marcus)  8:08


#02,03,05,06 January 10, 1975 at A&R Recording Studio, NYC. 
overdubbed on Wally Heider Recording Studio III, Los Angeles, CA, 1975

Tom Harrell (tp) Bob Berg (ts) Horace Silver (p) Ron Carter (b) Al Foster (ds) 

+ overdubs: Oscar Brashear, Bobby Bryant (tp,flh) Frank Rosolino (tb) Maurice Spears (bass-tb) 
Vince DeRosa (French horn) Buddy Collette (as,fl) Jerome Richardson (as,ss,fl) 
Wade Marcus (arr) 


#01,04 January 17, 1975 at A&R Recording Studio, NYC.
overdubbed on Wally Heider Recording Studio III, Los Angeles, CA, 1975

Tom Harrell (tp) Bob Berg (ts) Horace Silver (p) Bob Cranshaw (el-b) Bernard Purdie (ds) 

+ overdubs: Oscar Brashear, Bobby Bryant (tp,flh) Frank Rosolino (tb) Maurice Spears (bass-tb) 
Vince DeRosa (French horn) Buddy Collette (as,fl) Jerome Richardson (as,ss,fl) 
Wade Marcus (arr) 

 

 

このアルバムに収録された音源は、2010年頃まで「Horace Silver - Retrospective」という4枚組コンピレーションCDにしか収録されておらず、全てを聴くにはオリジナルレコードを探し出すしかなかったのですが、2012年にようやく日本盤CDとして発売されました。

Retrospective

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私は、東京の中古レコード屋などで、カット盤と呼ばれる米国でレコードジャケットの一部を切り取りディスカウントされて売られていたものを入手。

 

ノイズの多いレコードをカセットテープにダビングし聴いておりましたが、2012年にようやく「Silver 'N シリーズ」がCDで聴ける状態になりました。

 

●第2弾は1975年末にクインテット編成の録音を行い、1976年初頭に木管楽器中心のホーンセクションをオーバーダビングした「Silver 'N Wood (BN-LA581-G)」。

 

●第3弾は1976年後半、コーラス・アンサンブルをオーバーダビングした「Silver 'N Voices (BN-LA708-G)」。

 

●第4弾は1977年後半、クインテットにパーカッション2名を加え録音し、ヴォイス(チャント)をオーバーダビングした「Silver 'N Percussion (BN-LA853-H)」。

シルヴァー・ン・パーカッション

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●第5弾は1978年から1979年にかけ、クインテット編成にヴォーカルを加えたり、ストリングスをオーバーダビングしたブルーノート最終作「Silver 'N Strings (LWB-1033)」。