「Lee Morgan - Lee Morgan Vol. 3 (Blue Note) 1957」「クリフォードの思い出」の決定的名演含む3枚目
「クリフォードの思い出 (I Remember Clifford)」の決定的名演を含むアルバムが、天才トランぺッター、リー・モーガン(Lee Morgan)のブルーノート(Blue Note Records)第3弾となるアルバム「Lee Morgan Vol. 3 (Blue Note BLP-1557)」。
このアルバムは1956年12月02日録音の「Lee Morgan (Vol. 2) (Blue Note BLP-1541)」のほぼ4ヶ月後、1957年03月24日に録音されております。
演奏メンバーを眺めると、まずアルト・サックスにクリフォード・ブラウンとの共演経験もあるジジ・グライス(Gigi Gryce)が参加してますね。
ヨーロッパで録音された買い取り音源含め、5000番台の10インチ盤にはクリフォード・ブラウンとジジ・グライスの演奏が何枚か残されております。
そして1作目、2作目とに作編曲担当だったテナー・サックス奏者ベニー・ゴルソン(Benny Golson)が初めて演奏に加わりますが、これはスタジオ内で編曲者としての指示を出す役割をスムーズに行うためでしょうね。
ピアノは2作目のホレス・シルヴァー(Horace Silver)に代わり、ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)が参加してますが、彼も当時のディジー・ガレスピー楽団に参加していたはず。
ベースのポール・チェンバース(Paul Chambers)、ドラムスのチャーリー・パーシップ(Charlie Persip)は2作目に引き続きの起用となりますが・・・。
あれ(笑)、チャーリー・パーシップもディジー・ガレスピー楽団のメンバーだった様です。
「Vol. 2」と「Vol. 3」の間には、西海岸のスタジオやライブスポットでの録音が残されておりますが、多分この間、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)楽団の一員としてアメリカ各地を巡業していたんだろうと推測されます。
さて前述の通り、当時のリー・モーガン(若干19歳)は、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)のビックバンドに在籍していましたが、今回のアルバムでは演奏にも参加する作曲・編曲担当のベニー・ゴルソン(Benny Golson)も同ビックバンドのメンバーでした。
本アルバムの人気曲「クリフォードの思い出(I Remember Clifford)」は、ベニー・ゴルソン(Benny Golson)がクリフォード・ブラウン(Clifford Brown)が事故で亡くなった事を知り、その悲しみの中から生まれた曲のようです。
確かベニー・ゴルソンの回想だったと思いますが、ディジー・ガレスピー楽団のメンバーが巡業中の本番前、クリフォード・ブラウンの訃報を耳にしてしまい、メンバーが演奏に支障が出る程の悲しみにうちひしがれた、という話もあったりします。
ベニー・ゴルソンがクリフォード・ブラウンの事を思いつつ浮かんだメロディを、トランペット界期待の大型新人リー・モーガンに吹いてもらうための曲としてまとめた事から、このアルバムの「クリフォードの思い出 (I Remember Clifford)」演奏が、決定的名演となった訳ですね。
「Lee Morgan Vol. 3 (Blue Note BLP-1557)」の話に戻しますが、今回はアルバム全曲がベニー・ゴルソン(Benny Golson)のペンによる作品で、「Hasaan's Dream」、「Domingo」、「I Remember Clifford」と、冒頭からの3曲が続く流れは、お見事の一言でございます。
1曲目は、タンバリンとジジ・グライス(Gigi Gryce)が吹くフルートの音色が印象的な、如何にもベニー・ゴルソン(Benny Golson)が作る曲といった風情である、アラビア調の「Hasaan's Dream」です。
ソロ1番目に登場するリー・モーガン(Lee Morgan)の徐々に熱を帯びる演奏に続き、辛口な音色のジジ・グライス(Gigi Gryce)、マイルドなベニー・ゴルソン(Benny Golson)、ファンキーなウィントン・ケリー(Wynton Kelly)、ゆったりとしたポール・チェンバース(Paul Chambers)と、素敵なソロが続きます。
時折現れるホーンセクションのバッキング・アンサンブルや、ソロ・リレー終了後に登場するセカンド・リフも魅力的です。
ビ・バップ調の2曲目「Domingo」は、急速調で演奏されるビックバンドのようなアンサンブルが施された曲。
マイルドなベニー・ゴルソン、キュートなリー・モーガン、クールなジジ・グライス、ウィントン・ケリーとソロが引き継がれます。
そして短いアンサンブルの後、チャーリー・パーシップ(Charlie Persip)のドラムソロが登場、後テーマに雪崩れ込みます。
3曲目、決定的名演として今も親しまれる「クリフォードの思い出(I Remember Clifford)」は、リー・モーガンがテーマのメロディを吹き、それを切ないホーン・アンサンブルが盛り上げます。
バラッド風の演奏ではありますが、じっくり聴いてみると、まだ10代のリー・モーガンらしく、元気いっぱいにソロを吹いている風に聴こえます(笑)。
ウィントン・ケリーの短いソロを経て、再びテーマに戻り、カデンツァとか挟まず、あっさりと演奏終了となります。
4曲目「Mesabi Chant」は、如何にもハード・バップといった風情なアップテンポの曲。
リー・モーガン、ジジ・グライス、ベニー・ゴルソン、ウィントン・ケリーと結構ハードというか辛口気味なソロが続きます。
ポール・チェンバースの弓弾きソロの後、チャーリー・パーシップもガンガン(笑)ドラム打ち鳴らしてますね。
5曲目「Tip-Toeing」は、ホレス・シルバー(Horace Silver)が書きそうなミディアム・テンポのファンキーな曲。
ポール・チェンバースのベース・ソロが登場した後、短いアンサンブルを経てベニー・ゴルソンのくねくねしたテナーサックス・ソロ、ジジ・グライスのアルト・サックス・ソロと続き、4番目に登場するリー・モーガンは、貫禄たっぷりのソロを聴かせてくれます。
ウィントン・ケリーの短いながらファンキーなソロ、チャーリー・パーシップのドラム・ソロの後、ファンキーなテーマに戻ります。
まあこの堂々とした演奏を聴かせてくれるリー・モーガンが当時、まだ若干19歳だったとは・・・・ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)のビックバンドで研鑽を積んだ成果がどんどん演奏に反映されてきておりますね。
CDによっては「Tip-Toeing (alternate take)」が収録されておりますが、この別テイクは、マイケル・カスクーナのレコード会社「Mosaic Records」から発売されたBox-Set、「#162 The Complete Blue Note Lee Morgan Fifties Sessions (4 CDs or 6 LPs)」で初めて公開された音源です。
Lee Morgan - Lee Morgan Vol. 3 (RVG)
Blue Note BLP-1557 / 東芝EMI TOCJ-9021 [1998.09.30] 24 Bit By RVG
side 1 (A)
01. Hasaan's Dream (Benny Golson) 8:43
02. Domingo (Benny Golson) 9:21
side 2 (B)
03. I Remember Clifford (Benny Golson) 7:09
04. Mesabi Chant (Benny Golson) 6:11
05. Tip-Toeing (Benny Golson) 6:39
Lee Morgan (tp) Gigi Gryce (as,fl) Benny Golson (ts) Wynton Kelly (p)
Paul Chambers (b) Charlie Persip (ds) Benny Golson (arr)
March 24, 1957 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.