ブルーノート（Blue Note Records）初期のモダンシリーズ、5000番台（10インチ）には、ブルーノート（Blue Note Records）が原盤の権利を持っていないため、通常ルートでは到達（入手）不能な「秘境地帯」が存在します（笑）。
例えば、ヨーロッパ現地のレコード会社が録音した音源と自身の音源を「貸し借り」する事で借りた音源を、ブルーノート（Blue Note Records）が独自のジャケットを作成し、場合によっては曲順や収録曲さえ変えて発売していた音源が幾つかありまして・・・。
まあ、相手方のどんぶり勘定（プレス枚数の過小申請など）に嫌気がさして、この交流はすぐに途絶え、おまけにブルーノート（Blue Note Records）は、自社プレス以外は認めない方針に転換。
そのあおりで、１９６０年代にブルーノートがリバティに全音源を売却するまで、日本のレコード会社がブルーノート（Blue Note Records）のレコードをプレスする事が出来ず、輸入盤でしか入手出来なかったという、由々しき事態になっていた訳で・・・。
ただ、通常ルートでは到達（入手）不能な「秘境地帯」とは言いつつも、版権を持つヨーロッパ現地のレコード会社が「オリジナル音源」を再編集し、しれっとＣＤ化していたりする事もあります。
「秘境地帯」の音源がどんなモノなのか、長年気になってはいたので、このブログを始める前の一時期、資料（ブルーノートブック）を見つつ、現在入手可能な音源を探しあて、パズルのピースを組み上げる様に、当時ブルーノート（Blue Note Records）から発売された形態（曲順）に復元して、聴いてたりしたんですよ・・・。
該当する「秘境地帯」に蠢く（笑）ミュージシャンは、ジェームス・ムーディ（James Moody）、マックス・ローチ（Max Roach）、ディジー・ガレスピー（Dizzy Gillespie）、ピアニストのウェイド・レグ（Wade Legge）、ライオネル・ハンプトン（Lionel Hampton）、クリフォード・ブラウン（Clifford Brown）、ジジ・グライス（Gigi Gryce）、ヴィヴラフォン奏者のファッツ・サディ（Fats Sadi）などがおります。
1990年代に起こった世界的なジャズ系アルバム再発ブームにのり、一部の音源は原盤を保有するレコード会社から、オリジナル形式で発売されてましたので、そんなレコードやＣＤを見つけては入手し、ブルーノート（Blue Note Records）で発売された曲順に並べ替えるという事を延々していたんですわ・・・（単なるモノ好きです）。
さて今回は、ビバップ・ジャズ創始者の一人、ディジー・ガレスピー（Dizzy Gillespie）唯一のブルーノート盤についてです。
頬を膨らませ、超絶テクニックでトランペットを操る技巧派ミュージシャンでありながら、ステージでは大道芸人顔負けのユーモラスな行動をとるおちゃらけ具合が影響してか、日本ではそれほど人気を得る事が出来なかった方であります。
ジャズ系トランペットの超絶テクニシャンニックというくくりで真っ先に思い浮かぶ、あのウイントン・マルサリス（Wynton Marsalis）でさえ、デビュー当時は「ディジー・ガレスピー（Dizzy Gillespie）の模倣は無理（超意訳）」という趣旨の発言をしていた記事を読んだ記憶があります。
さて、今回ご紹介する「Dizzy Gillespie - Horn Of Plenty (Blue Note BLP-5017)」は、フランスのレコード会社「Vogue」が録音した音源を、ブルーノート（Blue Note Records）のアルフレッド・ライオン（Alfred Lion）が独自編集してジャケットも作り直し、発売したもの。
「Discogs」からお借りしました。
主に「Dizzy Gillespie – Dizzy Gillespie Plays In Paris (Vogue LD-077)」収録の音源を使用しておりますが、1952年04月11日録音の「I Don't Know Why」と、1952年03月27日録音の「I Cover The Waterfront」の２曲が未収録。
「Discogs」からお借りしました。
代わりに「Dizzy Gillespie - Jazz Time Paris, Vol. 2 (Vogue LD-134)」から1952年04月11日録音の「Lady Bird (Dizzy Song)」、「Somebody Loves Me」の２曲を収録しております。
「Discogs」からお借りしました。
また下記の通り、ブルーノート（Blue Note Records）から８曲全ての音源がシングルとして発売された様です。
アルバム未収録となる「Say Eh!」と「CCC Blues」の２曲が存在しますが、これらの曲は、「シングル盤のみ」での発売となっております。
「Dizzy Gillespie - Lady Bird / Sweet Lorraine (Blue Note 1613)」
「Dizzy Gillespie - Hurry Home / Afro-Paris (Blue Note 1614)」
「Dizzy Gillespie - Everything Happens To Me / Say Eh (Blue Note 1615)」
「Dizzy Gillespie - Wrap Your Troubles In Dreams / She's Funny That Way (Blue Note 1616)」
「Dizzy Gillespie - CCC Blues / Somebody Loves Me (Blue Note 1617)」
この記事書いてて見つけた、未聴の「CCC Blues」は、どのＣＤに入っているんでしょうかねえ（調査しきれてません）。
さて、「Dizzy Gillespie - Horn Of Plenty (Blue Note BLP-5017)」に収録された曲は、ディジー・ガレスピー（Dizzy Gillespie）にしては比較的大人しく、似た印象のものが多いので、何曲かかいつまんでご紹介するだけに留めます。
１曲目「Sweet Lorraine」は、バラッド形式の比較的穏やかな演奏で、フロントは４管編成でバックはピアノトリオという編成で、ディジー以外のホーン隊はアンサンブルに終始。
ディジーのバラッド演奏を楽しめる１曲です。
４曲目「Afro Paris」は、ディジー・ガレスピー（Dizzy Gillespie）の自作曲。
タイトル通り、ラテン・パーションと共に陽気な雄叫びから始まる躍動感あふれる１曲で、ディジーの技巧派トランペットを堪能出来る演奏であり、ディジーに続き、ピアノのアーノルド・ロス（Arnold Ross）、テナー・サックスのドン・バイアス（Don Byas）がソロで登場します。
８曲目「Everything Happens To Me」もバラッド風味の演奏。
テーマ部では重厚な３管アンサンブルをバックに従え、ソロでは全般的にはゆったりしているものの時々、ユーモアを交えたやや饒舌なフレーズが飛び出します。
まあ、こういうおちゃらけ気味でエンターテイメント志向のソロが、日本の熱烈なジャズファンにとっては、お気に召さない処なんでしょうねえ。
いずれにせよ、この音源が「Dizzy Gillespie - Horn Of Plenty (Blue Note BLP-5017)」という形で再発される事はないでしょうから、音だけでも聴きたい人は後述する「Dizzy Gillespie – Plays In Paris (BMG France 74321409402)」を入手してみて下さいませ。
Dizzy Gillespie - Horn Of Plenty
Blue Note BLP-5017
side 1 (A)
01. Sweet Lorraine (Cliff Burwell, Mitchell Parish) 2:33
02. Lady Bird (Dizzy Song) (Tadd Dameron) 3:43
03. Hurry Home (Dizzy Gillespie) 2:56
04. Afro Paris (Dizzy Gillespie) 3:02
side 2 (B)
05. Wrap Your Troubles In Dreams (H. Barris, T. Koehler) 2:49
06. She's Funny That Way (Neil Moret, Richard Whiting) 3:39
07. Somebody Loves Me (B. MacDonald, B. G. De Sylva, G. Gershwin) 3:31
08. Everything Happens To Me (Matt Dennis, Tom Adair) 2:49
#01,02,05-08 April 11, 1952 at Schola Cantorum, Paris, France.
Dizzy Gillespie (tp, vo) Bill Tamper (tb) Hubert Fol (as) Don Byas (ts)
Raymond Fol (p) Pierre Michelot (b) Pierre Lemarchand (ds)
#03,04 March 27, 1952 at Studio Jouvenet, Paris, France.
Dizzy Gillespie (tp, vo) Don Byas (ts) Arnold Ross (p) Joe Benjamin (b) Bill Clark (ds)
なお、私が今回入手した音源は「Dizzy Gillespie – Plays In Paris」です。
Dizzy Gillespie – Plays In Paris
BMG France 74321409402 (1996)
●March 27, 1952 at Studio Jouvenet, Paris, France.
01. Afro Paris (Dizzy Gillespie) 3:02
02. Afro Paris [alternative take] (Dizzy Gillespie) 2:51
03. Hurry Home (Dizzy Gillespie) 2:56
04. Hurry Home [alternative take] (Dizzy Gillespie) 3:10
05. Say Eh! (Dizzy Gillespie) 3:17
06. Say Eh! [alternative take] (Dizzy Gillespie) 3:18
07. I Cover The Waterfront (Edward Heyman, Johnny Green) 2:40
●April 11, 1952 at Schola Cantorum, Paris, France.
08. Cipple Crapple Crunch (Dizzy Gillespie) 4:00
09. Dizzy Song (Lady Bird) (Tadd Dameron) 3:43
10. Somebody Loves Me (B. MacDonald, B. G. De Sylva, G. Gershwin) 3:31
11. He's Funny That Way (Neil Moret, Richard Whiting) 3:39
12. Wrap Your Troubles In Dreams (H. Barris, T. Koehler) 2:49
13. Wrap Your Troubles In Dreams [alternative take] (H. Barris, T. Koehler) 2:46
14. Sweet Lorraine (Cliff Burwell, Mitchell Parish) 2:33
15. Everything Happens To Me (Matt Dennis, Tom Adair) 2:49
16. I Don't Know Why (Fred E. Ahlert, Roy Turk) 2:52
●February 22, 1953 in Paris, France.
17. Always (Irving Berlin) 2:58
18. Mon Homme (Maurice Yvain) 2:41
19. Clappin' Rhythm' (Dizzy Gillespie) 2:15
20. Fais Gaffe (Watch Out) (Dizzy Gillespie) 3:58
21. Moon Nocturne (Dizzy Gillespie) 2:27
22. This Is The Way (Dizzy Gillespie) 2:35
23. 'S Wonderful (George Gershwin) 3:16
24. Oo-Bla-Dee (Mary Lou Williams) 3:03
#01-07 March 27, 1952 at Studio Jouvenet, Paris, France.
The Dizzy Gillespie Jazz Ensemble
Dizzy Gillespie (tp, vo) Don Byas (ts) Arnold Ross (p) Joe Benjamin (b) Bill Clark (ds)
#08-16 April 11, 1952 at Schola Cantorum, Paris, France.
The Dizzy Gillespie Jazz Ensemble
Dizzy Gillespie (tp, vo) Bill Tamper (tb) Hubert Fol (as) Don Byas (ts)
Raymond Fol (p) Pierre Michelot (b) Pierre Lemarchand (ds)
#17-24 February 22, 1953 in Paris, France.
Dizzy Gillespie Sextet
Dizzy Gillespie (tp, vo) Nat Peck (tb) Wade Legge (p) Lou Hackney (b) Al Jones (ds)
Joe Carroll (vo)
今回の「Dizzy Gillespie - Horn Of Plenty (Blue Note BLP-5017)」の様に、ブルーノートの5000番台（10インチ）には、フランス「Vogue」原盤のものがありまして。
前述の通り、ブルーノート（Blue Note Records）では絶対に再発しないであろう音源がどんな演奏なのか興味を持った時期があった関係で、一時期、徹底的にＣＤ化された音源を探していた事があります。
音源を見つけたら、資料調べてブルーノート（Blue Note Records）が発売した曲順に並べ替え、ジャケット探してデジタル音源でいつでも聴ける様に整理したものが、今回のブログ記事の元になっております。
